第40話 ジョブとスキルと転職と
アンデッドの大群との激戦の翌朝、パーティーは皆レベルアップしたが・・・
久しぶりに、奴隷房の番兵に槍の柄で突かれるまで、全く目が覚めなかった。
それだけ疲労が蓄積していたんだろう。
昨日は本当にたいへんな消耗戦だった。
何匹ゾンビを斬ったかわからないほどだし、撤収のため迷宮を封印し終えた時には、MP枯渇で意識が飛びかけた。帰りのトリウマは本当に、勝手に俺を運んでくれた。
俺だけでなく、帰途はみな疲れ切って無口だった。
“癒やし”はHPを回復させてはくれても、本当に体の中から元通りにしているわけではなく、呪文の効果はかりそめのものに過ぎない・・・カレーナが前から言っていたことの意味がようやくわかったような気がする。
一夜明けてステータスを見てみると、冒険者ジョブはLV11に上昇。お人形遊びと粘土遊びのスキルもそれぞれLV8に上がっていた。
さらに、他のスキルも<剣技>がLV2に上昇、新たに<弓技(LV1)>も獲得していた。
ただ、あれだけの魔物を倒した割には、上昇したのは1レベルだけなんだな、とむしろ意外だった。
集合してパーティー編成した時にメンバーのレベルを見ると、ベスだけは2レベルアップしてLV8になっていたが、他は皆、俺と同じく1レベルだけの上昇だった。
<グレオン 戦士 LV10>
<セシリー 戦士 LV 9>
<カレーナ 僧侶 LV 9>
<ラルーク スカウトLV 8>
<ベス 魔法使いLV 8>
それでも、迷宮に初めて入ったほんの数日前に比べても、パーティーのレベルは大幅に上がっているが。
グレオンに疑問を伝えると、なるほど、という顔をした。
「アンデッドと戦うことなんてそうそうないし、知らない方が普通だからな。アンデッドは、倒しても滅多にレベルが上がらない、割に合わないって、昔から言われてるんだ。なんでも、レベルアップのために得られる経験値とやらが極端に少ない、って話だったな」
そもそも経験値ってのも、転生者でゲームオタクの俺なんかと違い、こっちの人たちには、あまり実感がないようだな。
ラルークとセシリーもこの話は知らなかったようだが、ベスとカレーナには知識があるみたいだ。
「アンデッドは既に死者だから、倒したことで得られる経験値はなくて、魔物の遺骸を浄化したときに得られる分の経験値だけだから少ないんだ、って仮説があるそうですよ。本で読んだんですけど」
「そうね、浄化することで、魔物を倒す時の1割ぐらいの経験値が入るみたいだから、普通の魔物の十分の一ってことね。その割にむしろ、みんなよくレベルが上がった方じゃないかしら。ベスは一気に2レベルアップだし、私もやっと“静謐”が使えるようになったし」
「きっとシローさんが持ってるっていう、“パーティー経験値増加”の効果もあるんじゃないでしょうか」
そうだといいな。
「それにしてもシローのレベルアップは並外れて早いよな?パーティーで経験値が均等割されてるはずだが、いつの間にか抜かれちまった」
グレオンの疑問はもっともだ。
たぶん、あの女神が最後に言い残した、「成長ボーナスをつけとく」うんぬんが、一応なにか役立ってるんだろう。
ベスは、けさはせっかくの銀レオタードの上に、フード付マントをかぶってトリウマに乗っている。
昨日、館から出るときに、屋敷のメイドや朝晩の兵たちが目を丸くして、「誰なのあれ!?」とかヒソヒソ噂してたから、よっぽど恥ずかしかったんだろうな。
フード付マントってのがいかにも魔法使いらしいから、おかしくはないんだけど、もったいない。
俺の冒険者ジョブはレベル11になったものの、そのことで特にスキルとかは増えてなかった。
代わりに<スキルポイント 残り1>という表示が新たに加わっていた。
夢であのレベルアップ空間に行った時に、スキルポイントが生じるのも見たんだが、夢の中でさえ昨夜は疲れていて、そのまま傍観するだけで終わった。
ただ、このあたりは、ゲンさんに少し聞いていた。
魔法使いや僧侶などの「魔法系ジョブ」(※ゲンツ分類、だそうだ)は10レベルを超えてもレベルアップごとに呪文を覚えるが、それ以外のジョブでは、10を超えるとだいたい5レベルごとにしか新たなスキルとかは得られないらしい。
代わりに、スキルポイントというのを得て、習得できるスキルがあると割り振ることが出来るんだと。ただ、自分の意思でポイントを割り振れるのは転生者だけで、この世界の住人は意識しないまま自動的に割り振られるんじゃないか?このへんは俺の仮説だが、とも。
(だからね、10レベルを超えるとジョブチェンジを考える人が多いんだよ)
お、リナの念話だ。そういえば、<お人形遊び>のレベルが8に上がったんだよな?
(うん、“もっと賢く”なったからね。頼りにしてね)
リナ先生、“もっと”賢くってどんだけなんだ?曖昧なスキルアップだな。じゃあ、ジョブチェンジの方法とか教えてくれよ。どうせ迷宮まで時間がかかるんだし。
(いいよ。それと、ついでに言っとくけど、多分、移動時間のことは今日の帰りからは、あんまり気にしなくていいよ。ベスちゃんが便利呪文を覚えたからね)
え、まじか?
パーティー編成したベスの後ろ姿を見ると、現在のステータスが見えた。
<ベス 人間 女 17歳 魔法使い(LV8)
スキル 魔法知識(LV2)
薬生成(LV1)
騎乗(LV1)
杖術(LV1)
呪文 「火」「水」「地」「風」
「魔法の盾」「遠話」
「麻痺」「帰還」 >
どうやらこの、「帰還」って呪文か。
(距離の制限とか、結界の影響とか条件はあるけど、あらかじめ登録しておいた場所にパーティーごとワープして帰れるはずだよ)
へぇー、これはまた魔法らしい魔法だな、楽しみだ。
それからリナ先生に、また念話でジョブチェンジのことを聞いた。
非魔法系のジョブでは、LV10以上になるとジョブチェンジする者が多い、ということだが、何にでもなれるわけではないと言う。
戦士からだと「剣匠」や「騎士」、魔法使いからは「魔導師」や「賢者」などがメジャーだが、それぞれチェンジできる条件があるし、チェンジすると、レベルが半減する場合やレベル1から再スタートになってしまう場合もあるらしい。
例えば、戦士LV10からチェンジすると、騎士LV5になるそうだ。
ジョブチェンジするには、基本的に神殿で祈るそうだが、俺たち転生者はそれ以外の方法もあるという。
じゃあ、俺は何か別のジョブにチェンジできるのか?ってかした方がいいんだろうか?
それと、古典的な名作RPGとかだと、職業を変えると、強さとか速さとかのいわゆる特性数値がガタ落ちしちゃったりするデメリットもあるんだけど、そういうのはどうなのかな?
(あー、そのへんはおいおいね。
とりあえず、シローはこの迷宮討伐が終わるまで
ジョブチェンジは考えなくていいと思う。だって、
まだ自分が何をしたいか迷ってるんでしょ? )
なんか人生相談みたいな回答だな。JCのくせに。
それじゃあ、スキルの方はどうなんだ?神様にもらった2つのスキルってのは、ずっと変わらないのか?
(うん、ボーナススキルっていうか最初に授かった
スキルは絶対だから。
残りスキルポイントの使い道も、まだ考えなくて
良いと思うよ。
スキルレベルはそもそも上限が10だからね?)
え、突然、思わぬことを言われたぞ。スキルレベルの上限は10までなんだって?
いま、粘土遊びも人形遊びもLV8なんだが。
(そうそう、だからね、あと2レベルで上限。
ボーナススキルだけじゃなく、他のスキルも
レベルがあるものは10までなの。
だから、ジョブレベルよりも段々上がりにくく
なるんだけどね・・・ただし)
そこでリナの念話の口調が変わった。
(見えるレベルは10まででも、経験や使い方は
蓄積されていくよ。それで、同じレベルでも
実際に出来ることは大きく差がついていく。
そのことを忘れないで)
どういうことだ?
(リナの成長は、あんたの成長だってこと)
それだけ俺の頭の中に伝えると、リナは沈黙してしまった。




