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第288話 魔道具生成のブレークスルー

プラト公国方面から戦乱に伴って流れてきた難民たちを受け入れた。

 館に戻って夕食を済ませ、夜寝る前に、もう一つ試行錯誤した。


 村への侵入防止の魔道具開発だ。


 今回は難民の群れに盗賊が紛れ込んでいるのに気付いて排除できたけれど、いつもそれが可能とは限らない。盗賊が商人や冒険者のジョブを持っているケースだってあるようだし。

 そして今後もしばらくは難民が各地に押し寄せてくるだろうけれど、村の生産力の余裕とか住民との関係とかを考えると無制限に受け入れることはできない。


 だとすると、一種の入国管理が出来る仕組みは必要だろう。


 デーバで魔道具生成について教えてくれたユーニスによると、その術者自身が使える魔法やスキルしか、道具化することは出来ないらしかった。


 つまり、結界魔法が使えない俺には結界を張る魔道具は作れないってことになる。

 ユーニス自身は錬金術師LV25で“魔道具生成”スキルを得た後、魔導師にジョブチェンジして、様々な便利魔道具を作れるようになったという。


 俺もそろそろジョブチェンジすべきかもしれないが、道具を作るためにジョブを決めるってのも、本当にそれでいいのか疑問がある。ジョブチェンジはそう何度も出来ないらしいし。


 まず、今持っている能力を組み合わせて何かできないだろうか?


 俺のスキルや魔法は、冒険者ジョブと錬金術師ジョブで習得したもの、そしてボーナススキルである<お人形遊び>と<粘土遊び>だ。


 結界魔法は使えないけど、錬金術の中には“物質変化”とか“力場”っていうスキルもある。

 例えば、この“力場”を込めた魔道具を作れば、侵入を妨げるような力を働かせることは出来そうだ。でも、それじゃあ、俺たちも侵入を妨げられることになって不自由極まりない。


「シロー、今度はなにを試してるの?」

 ルシエンに声をかけられ、気付くと夜更けになってて、みんなの視線が集まってた。

 そろそろ寝ようとしている寝室の隅で、ごそごそ粘土をこねたり、そこに念を込めたりしてるからな、ヘンなやつなのは間違いない。


 やってることを説明すると、みんな興味津々で一緒に考えてくれた。

「なんとか都合良く害敵だけ判別する方法があればいいんですよね?」

「そうなんだよなぁ・・・」

「あれはダメなんですか?シローさんがよく使ってる“地図”スキルとか?」

「あっ!!」


 そうだよ!なんで気付かなかったんだろう。冒険者として頻繁に使ってる、“地図”と“察知”スキルだ。

 俺が認知した敵対的な存在は、地図スキルに赤い光点が映る。それをうまく使えないだろうか。


 ちょっと工程は面倒だったけど、粘土細工で母体となる道具の形を適当に作り、そこに錬金術の“魔道具生成”を使って冒険者スキルの“地図”、“察知”、そして“力場”を込める。

 順番とか察知スキルの使い方とかを色々試行錯誤した結果、なんとか出来たようだ。


 実際は、ここには俺が“敵”と意識する存在がいないから、出来たものは、「察知した生物は、侵入しようとしても急坂を登るように妨げる力が働く装置」だ。

 選択的に赤い光点と認識される生き物=害敵の侵入を阻害する装置、が出来たのかどうかは、実際に魔物とかがいるところで試すしか無いだろう。


 ただ、カーミラに全力で隠身をかけてもらって試すと、スルーされちゃったから、基本的に俺の察知能力に依存する装置、にはなっているらしい。

 いや、それ以下だ。この魔道具の察知能力は俺自身の察知能力よりも低い。


 そう言えば、ユーニスも話していたけど、魔道具生成に込められる能力は基本的に製作者の能力を超えるレベルにはならない、とのことだった。


 製作者以上の能力を発揮できるなら、一度作ったら本人抜きでも使い続けられる魔道具は最強すぎるし、本人の下位互換みたいなものなんだろう。


 ただし、魔道具は魔石のようなエネルギー源を定期的に補充してやれば、作った人がいなくても、そして魔法やスキルを持たない人でも効果を利用することができる。

 それに、大きな魔石や沢山の道具を配置すれば、「規模的には」作った人の魔法を越えることも可能だ。


 具体的に言うと、都市全体を覆う結界をずっと維持するようなことは、高位の魔導師にも難しいけど、魔道具の結界装置なら、子機を多数設置し、魔石を十分補充してやれば実現可能になる。実際よく使われている。

 ただし、その結界の強度自体は、高位の魔導師が短時間小規模になら張れる結界よりは劣る、というわけだ。


 こうして試行錯誤を繰り返していると、カーミラがなにか言いたそうだった。


 普段、アイデアを練るような時にはあまり口を開かないんだけど、なんだろう?


「・・・シローが察知できなくても、リナのスカウトには出来るかも?リナとシローは一体、二人でひとり。違うか?」


 ・・・それは確かに、リナをスカウトモードにすれば俺より察知能力は高いだろうけど俺のスキルじゃないし・・・待て、本当にそうか?

 <お人形遊び>は俺のスキルだよな?


 !!


 もしかして・・・カーミラは、最初に奴隷として買った時、本能的になのかどういう能力でなのかわからないけど、俺とリナがつながっているらしいってことを見抜いていた。

 パーティー編成する時も、リナは一人分にカウントされない。俺の一部ってことになってるらしい。

 だとしたら・・・


 大当たりだった。


 ためしてみたら、リナと手をつないだり体が接触している状態でなら、リナのスキルや魔法も、“魔道具生成”に使うことが出来たんだ。


 その結果、スカウトモードのリナの“索敵”スキルを使うことで、敵味方を正確に判別して侵入を妨害することも出来るらしかった。

 これは魔物を対象に試さないと確かなことは言えないけど。


 それだけじゃない。

 僧侶モードにしたリナの“静謐”を込めることで魔法を妨害する魔道具を作ったり、魔法戦士モードのリナの“結界”とかも魔道具化できるらしかった。


 結界装置、俺にも作れるじゃん!


「カーミラ、えらいぞ!ナイスアイデアだ」


 魔道具生成はMP消費が大きいから、思いついたこと全てはとても試せないうちにフラフラになった。

 もうすっかり夜中になっちゃってたけど、これは大発見だ。すごいブレークスルーだ。

 みんなも寝不足になりながら、色々アイデアを出してくれた。

 

 ずっと自分のスキルしか使えないと思い込んで、1人でちまちまやってたことが一体何だったんだろう?ってぐらい、一気に出来ることが広がった。

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