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転生スキルは「お人形遊び」と「粘土遊び」なんですが、これでどうしろと?  作者: 柴野ましろ
第三部 亜人戦争篇

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第248話 アンデッドと少年少女兵

十一の月・上弦の八日。俺たちは訓練兵を連れて、パスク村の東にある迷宮に入っていた。地下一階層から二階層への接続部分で、アンデッド系の魔物の気配を察知した。

「また敵の気配ですっ!・・・でも、さっきとは違う種類のような」

 LV2スカウトのヤクピが声をあげた。この少年、割と使えそうだ。


「いいぞ、その調子な。・・・みんな、今度のヤツは恐らくアンデッド、村の人たちを困らせてるヤツだ。気をつけろ」

「シロー、聖なる武器なんてないぞ。浄化呪文が使えるのはおれとリナ、あとはミレラだけだが・・・」

 ヴァロンが撤退した方がいいんじゃないか、と切り出した。


「いや、大丈夫だと思う。俺の錬金術で武器に効果を付けられるから」

 前にヴァロンたちと戦った時は、まだ俺は冒険者だったからな。当時より出来ることがかなり増えてる。


「みんな、武器をこっち向きに差し出してくれ」

 少年たちに呼びかけると、俺は錬金術師LV20で取得したスキル“効果付与”で、聖属性の効果を槍先や鏃などにかけていく。


 こうしたことにもMPが少しずつ消費されるらしく、20人分をかけ終わると、かなり精神的にへばっていた。

「リナ、あとは頼む。数が多そうだし、火魔法の方がいいかもな」


 アンデッドの群れが姿を見せ、もう索敵を続ける優先度が下がったので、革袋の中でリナを魔法戦士に変えてから、等身大で出す。


 二階層の洞窟から、ウジャウジャ腐敗した魔物が湧き出してきた。

「わーっ、た、大群だっ」

「おちついてよっ、坂を上がってこれないでしょ」


 初めて見る魔物の大群。それも、腐って崩れかけたゾンビの群れだから、悲鳴も上げたくなるよな。でも、こういうときって、意外に女子の方が平気なのかな。

なさけない声を上げたのは、男子ばっかだった。


 俺たちは一階層の縁に立っていて、陥没して二階層につながった場所に、奥から3,40匹のゾンビが出てきたのを見下ろす位置関係だ。高低差がざっと10メートル近くあるから、簡単には登ってこれなそうに見える。

 でも、アンデッドってこういうところがタチが悪いというか、はっきり言ってキショいのだ。


「わ、乗り越えてるぞっ」

 崩れた砂の斜面に迷いもなく突っ込んで、立ち往生している他のゾンビの体をよじ登ってさらに上に・・・そうして段々上の方に上がってくる。

「うそっ」

「弓を持ってるもの、打ち落とすんだ。構えっ」


 ようやく、ヴァロンの指示で弓持ちの4人が並び、他の者たちは槍が届く距離まで来たら突き刺そうと構える。

 俺はその時、察知スキルで新手が出てくるのに気づいた。


「気をつけろ、あっちも弓持ちが来るぞっ」

 奥の穴から、ゾンビに続いて、数匹だが骨で作った弓を持つスケルトンが出てきた。


 あいつらはこっちが弓で射ても、あたる部分が少ないし、聖属性の矢じゃないと効果も無い。それでいて、向こうの矢はこっちにダメージが来るから面倒なんだ。


「リナ、スケルトンを頼む」

「おーけー」

 リナが火の魔法を練る詠唱を始めた。

 スケルトンが矢を射るが、さすがに下から上を狙うにはまだ遠すぎて届かない。


「ヴァロン、訓練兵はゾンビに集中させろっ」

「わ、わかった。構え・・・放てっ」

 ゾンビの先頭が、あと、5メートルぐらいの所まで来たところで、四つの弓が鳴り、さすがにこの距離なので命中する。


 だが、仲間がいくらやられても、まったくひるまないのもアンデッドの特徴だ。

 次々登ってくる奴らを、少年少女が聖属性を付与した槍で突きまくる。


 その時、リナの長い詠唱が完了した。

「・・・火風よ巻き込めっ!」

 練り上げられた炎の渦が、二射目を構えていたスケルトンたちをまとめて包み込んだ。


 地図スキルで見える赤い点がまとめて5,6個消えた。

「すごいっ」

 後ろで少年たちの声があがった。特に魔法資質がありそうだという4班の視線は真剣そのものだ。


「自分でも、体の中で魔力を練り上げてから外に放つイメージをしてみな」

 役に立つかどうかわからないアドバイスをしておく。


 そうしている間にも、足下に群がるゾンビを1班の少年たちが中心になって槍で突き落とし、それでも上がってくる者は、ヴァロンとミレラが“浄化”呪文で消していく。


 スケルトンはリナだけで始末できそうだったので、俺も数が多いゾンビ退治に参加する。僧侶の浄化ほどではないけどアンデッドに効果がある、“聖素”を練って、近づいて来るやつにぶつける。


 10分ほどの戦いで、とりあえず当面の敵はいなくなった。


「そろそろ戻る時間だな・・・」

 しんがりについていたベテラン戦士のバイラミに声をかけられ、もう半刻近く経過していることに気づいた。

 心配させるとまずいよな。



 その後は、交替した2班と3班の少年たちを連れて、再び迷宮に入った。

 引き上げる時には、一階層の一番奥、ワームの抜け殻の部分に粘土スキルで壁を作り、さらに洞窟入口まで戻ってリナの地魔法で塞いだ上に結界も張った。


 迷宮を後にする時には、俺もリナもかなりMP枯渇に近かった。騎乗で俺は錬金術師の“思索”スキル、リナは僧侶の“瞑想”を使い、少しでも回復をはかる。


「これでゾンビが村を襲うことはなくなるかな」

「どうだろう?既に外に出て、どこかに潜んでるヤツもいるだろうし、スクタリの迷宮でも横穴みたいなのでオークが外に出てたろ?」

「そういや、そうだったな・・・」


 ヴァロンと、「これでゼロにはならないだろうけど、ゾンビの被害が減ってくれればいいが・・・」と話しながら、さらに東へと向かった。


 本来の任務である、国境外の警戒のためだ。



 日没前、まさに人里離れたという感じの森の外れで、きれいな水が調達できそうな小川が近くにある場所を見つけ、訓練兵の白鷹隊は野営することになった。


 基礎訓練で行っていたためか、テントの設営とかは思ったより手慣れている。食事も携行食しかないから、手間取りようもない。

 普通の鳥や獣がいたら食材調達して調理するって訓練もしたことがあるそうだけど、今回は警備行動メインなので、そういうことは必要に迫られなければしないそうだ。


「では、4班交替で不寝番を行う。まず1班からだ」

 引率するベテラン・スカウトのフレチャイの指示で、警戒の順番が決められた。


 俺たちは参加しなくていいんだけど、粘土犬のワンとキャンを出して、リナと共に不寝番を任せ、なにかあればすぐ起こしてくれと伝えておく。

 立木につないだ馬にアイテムボックスから出した飼葉をやってから、一人用テントに入る。


 迷宮戦もしたしMPもかなり使って疲れたな・・・そのせいですぐに眠りに落ちた。


***********************


 不穏な気配に目覚めたのは、夜更け過ぎだった。


 ワンがウーウー声をあげて、俺を起こそうとしてくれていた。


 リナはスカウトモードでテントの外に出て、敵らしい気配を詳しく探っているようだ。


 俺の察知スキルでは、味方はまだ不寝番の連中以外ほとんど起きていないように感じる・・・この気配は、不寝番は4班かな。だとしたら、今夜は半刻ごとに2巡交替のはずだったけど、まだ1巡目の夜中だろうか。


(シロー、おかしい、魔物だけでなく何か戦ってる気配だよ・・・魔物はアンデッドで間違いないと思うけど)


 リナの念話に俺は、はたと考えた。

 どういうことだ?魔物と人間がこんな時間に戦闘?


 旅人が野営なんて、こんな戦時下に考えにくい・・・ということは軍隊か。でも、じゃあどこの?


 スクタリじゃない。次に近いのは、たしかまだどっち側に属すかはっきりしてないトパロール子爵の領地だったはずだ。


 俺は迷いながら、となりのテントにいるヴァロンとベテラン兵たちをおこしに行った。


「シローか、なにかあったようだな」

 さすがに、スカウトのフレチャイはすぐ目が覚めていたようだ。続いて起きたヴァロンたちにも、リナから得た情報を手短に伝える。


「アンデッドが野営していた軍を襲った、ということかな」

「だが、トパロール子爵の軍が、前線と反対のこっちの辺境でわざわざ野営するとも思えん・・・」

 ベテランたちにも見当がつかないらしい。


「ともかく、スクタリの友軍はこっちには来てないはずだ。だとしたら最悪、どっちも敵だってケースを想定して動くべきじゃないのか?」

 ヴァロンがそう結論づけた。だよな。

 だとしたら、やるべきことは・・・俺は思いついたことを4人に説明した。


「よし。バイラミさん、ガランさんは、みんなを起こして極力静かに、気配を悟られないように戦闘が起きてる方向に展開させてくれ」

「「わかった」」


 普段はちょっと年齢を感じさせる二人が、さすがに素早くテントを出て行った。

「シロー、リナの転移で反対側に飛べるものなのか?行ったことが無い場所だろう?」

「視野を確保した後ならいけるから、ちょっとだけ時間をもらうよ」

「?」

 俺は説明を後回しにして、飛行ホムンクルスのコモリンを夜空に放った。


 仮に「敵」に察知スキル持ちがいても、コモリンは攻撃意図は持っていないし、ただのコウモリか何かだと思われるだろう。


 まもなく、コモリンの視野に映ったものが俺とリナのスキル地図に反映される。

 ヴァロンとフレチャイもパーティー編成に入れて、情報を共有した。


「これは、数人のグループがアンデッドに囲まれている、ってことか?」

 魔物は数十体はいるようだが、それと戦っているのはわずか数人らしい。だが、やられている様子はなく、膠着状態?高レベルの連中なのかもしれないが、それも妙と言えば妙だな。


「これは、ヤバいケースを考えるべきだよな」

「フレチャイさん、敵の位置をつかんでみんなを誘導してやってくれ」

「承知した」


 俺はリナとヴァロンと共にテントを出て、コモリンの位置をさぐる。あっちの空だな。


 その頃には、訓練生たちもあらかた起きて、槍を持って集まってきた。

 フレチャイが行動を説明する。


「副隊長・・・」

 3人の少年、いや、1人は少女か、がヴァロンの所に足音を忍ばせて走ってきた。


「ベシニク、ヤクピ、それにエリザか?どうしたこんな時に」

「自分たちも連れて行って下さい」

「なに?」


 ベシニクと呼ばれた一番体格のいい少年が切り出した。迷宮で最前列にいた、LV2の戦士だ。ヤクピはスカウトLV2、エリザという少女は冒険者LV1か。


「ヤバいやつらの背後に、魔法で転移して奇襲するって聞きました。でも、2人、いや、3人だけじゃ手が足りないでしょ?自分ら、白鷹隊の中じゃ戦える方ですから」

「奇襲するかどうかは、相手と状況次第だぞ。それに、危険だ」

「志願したときから危険は覚悟してます」

 反論したのはエリザという少女だった。

「副隊長もツヅキ卿もそのコも後衛型ですよね。わたしたち、前衛で壁役できますから」


 なるほど、ただの無謀な勇気じゃなく、自分たちなりに考えたってことか。

「いいよ、時間もないし、連れて行こう」

 俺は段取りを伝えると、パーティー編成を変えた。


「わかった・・・フレチャイさん、バイラミさん、3人連れていく。あとは打ち合わせ通りだ」

「なに?・・・わかった。ご武運を、副隊長」



 そして、俺とリナ、ヴァロン、そして訓練兵3人は、リナの有視界転移で、「コモリンがいるであろう方角の見えている夜空」へ飛んだ。


 間髪おかず、落下する前に月明かりに照らされた地上を確認し、再び有視界の転移。

 森影に降り立った、いや、こけた。イテテっ。

 落下しかけた時の運動エネルギーは、転移しても消えないってことかな。


 すぐにリナが、魔法結界を張る。

見られたか?察知されたか?可能性はある。だとしても、誰かがいた、ぐらいで詳細まではつかまれていないはず。

 相変わらずアンデッドと戦闘中だったから、他に注意を割く余裕はなかっただろう。


 空中で一瞬だけ視野に入ったのは、4人だったか。

 魔法使いLV15と、スカウトもいた。あと2人はステータスを見るヒマがなかった。


「・・・冒険者LV13ってのがいたと思います」

「あ、わたし、騎士LV16を見ました」

「ヤクピ、エリザ、でかした」

 スカウトと冒険者の判別スキルだな。目が多いのは助かる。


 転移が出来るLV15の魔法使いがいて、パーティー編成できる冒険者と、索敵出来るスカウトもいる・・・これがどこかの冒険者パーティーである可能性はゼロではないが、十中八九、偵察部隊だろう。


 でも、どこの勢力の偵察部隊なんだ?

 わからない。確かめるしかないな。


「よし、じゃあ、次だな。ヴァロン、リナ、頼むぞ」

 ヴァロンは頷くと詠唱を始めた。


「いくよ」

 リナは、俺たちの気配を封じていた結界を解くと同時に、訓練兵部隊を動かしているフレチャイに遠話で合図を送り、再び転移した。


 4人組の背後へ。


「「「「!」」」」

「“静謐”っ!」


 すぐに乱入者の気配に気づいたのは4人ともさすがだったけど、先手を取ったヴァロンが静謐を唱え、呪文を封じた。


 訓練兵3人が正面に距離を詰め、リナが左側に走ると同時に、右側には粘土ゴーレムのタロを出現させた。


 俺は、自分たちに近づいて来るゾンビだけを、静謐の影響を受けない錬金術の“聖素”で食い止める。


 そしてヴァロンが口を開いた。

「我らはオルバニア子爵様の配下だ。当家の領地近くでなにをしていたのか?所属と名を名乗られよ」


 4人組が、LV16の騎士の顔を見る。こいつがリーダーらしい。

 だんまりか。


「マクシム・ツヴェチャ卿、お答えになれぬのか?」

 名前はステータスで見えてるから、俺は、ドスのきいた声を出してハッタリをかました。


 マクシムという騎士が、言い逃れできぬと思ったか、魔法使いに目で合図した。そして、魔法使いは小声で転移魔法を唱えた。


 でも、もちろん効果は無い。

「くっ!」

 静謐がかかったのは聞こえてなかったのか、それともかすかな望みにかけたのか。


 いずれにしても、連中はきびすを返して逃げ出した。三方を囲ってるから、空いてる方に・・・だが。


「ダメだ、隊長、もう囲まれてる。30人以上だっ!」

 スカウトLV11が、訓練兵たちが近づいてるのに気づいて叫んだ。


 うん、年端もいかない少年少女だなんてことまではわからないからね。

 察知スキルのおかげで大勢いることはわかるから、そっちは突破できない、って思うだろう。


 そして、反転してこっちに向かって来る。


 繰り返すけど、錬金術は「呪文じゃない」から、静謐がかかっていても使える。


 最初に狙うのは隠身を使えるスカウトだ。逃げられるとまずいから、俺はコイツに“雷素”を叩き込んで確実に仕留める。


 魔法使いは見たところ一番華奢で弱そうな、リナの所を突破しようとした。

 悪手だよ。

 魔法戦士LV20は魔法が使えなくても強いから。セラミック剣が一閃し、ローブ姿の中年の魔法使いは倒れ伏した。


 そして、リーダー格の騎士はタロの大剣を受け止めきれず吹っ飛ばされ、冒険者の男は訓練兵3人組とヴァロンに囲まれ、手傷を負って取り押さえられた。

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