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第21話 魔物の肉

初めて等身大になったリナと協力して魔物を倒すことができた。

 俺とリナが、逃げ出そうとする魔猪を倒してようやく一息ついた頃には、群れの残りもなんとか片付いていた。


 リーダーのでかい雄も木こりたちに囲まれながら戦い続けていたが、ようやくベスの魔法が直撃して、火だるまになって倒れた。


突然現れた“謎の女戦士”はいつの間にか姿を消しており、結局うやむやになった。


 疑いの目を向けてきたムハレムとベスには、一種の魔法のようなものだが、あるじのセシリーに口外を禁じられている、と責任転嫁してごまかした。


 粘土を出す妙なスキルのこともあるし、俺がセシリーの奴隷らしい、というのは昨日参戦した領兵たちには広まっていたので、

「こいつは特殊な魔法を使う戦闘奴隷なんだな」

という解釈に落ち着いたようだ。


「召喚魔法まで使えるなんて・・・」

 とか、ベスが眉間にしわを寄せてぶつぶつ言っていたが、聞こえないふりだ。


 狩人たちは、少し距離が離れていたこともあり事情がわからないようだったし、俺がやったこととは思わないだろう。


 ところで、こちらの班には“浄化”の呪文が使える僧侶がいないが、魔石なんかはどうするんだろう?と思っていると、狩人たちが懐からナイフを取り出して、魔猪の解体を始めた。手際がいい。


「魔猪の肉は、そううまくはないが食えるし、皮も牙も使えるんだ。だからざっと解体して担いで帰る。あのデカいのは重すぎて運べないから、肉のいい部分と牙だけばらして持ってくことになるかな」


デンという若い狩人が、詳しく教えてくれた。浄化して小さな魔石を得るより、解体して持って帰った方が価値が高いんだと。

 デンはちょうど俺と同じぐらいの背格好で、年は少し上というところかな。だが、弓の腕は狩人たちの中でも際立っていて、2,3頭は仕留めたはずだ。 


 木こりたちが地面を掘って、持って行けない部分は埋めることになり、ベスが新たに覚えた地の魔法を使ったり、俺も粘土を出して埋めるのを手伝った。


 それから狩人と木こりたちは、持ってきた布袋に猪の肉や牙を詰め、麓の小径まで運び降ろした。かなりの重量があると思うんだが、肉は食料に、牙は加工して現金収入になる、ということで、彼らは戦果に上機嫌だった。


 その後、もう一カ所、同じように巣を見つけて退治した。

 こっちの群れは、リーダーの雄だけが魔猪で、雌は普通の猪だった。


 そういうこともあるらしい。魔力の濃い土地では、虫や小動物に魔力が少しずつ溜まり、それを食べる生き物には濃縮されていく。食物連鎖の上位の動物ほど魔力が溜まることになる。

 野生の猪が魔力の濃いエサを食べ続けると、魔猪になってしまうらしい。


 魔猪のつがいからは魔猪の幼体が生まれるが、一方が普通の猪の場合はわからない、普通の猪になることも魔猪が生まれることも、どっちもあるというか、狩人たちも詳しくは知らないようだ。


あれ?


 そうすると、魔猪の肉とか食べてて大丈夫なのか?人間が魔物になっちゃったりとかしないんだろうか?

 デンに聞くと、

「ちゃんと焼いたり煮たりすれば大丈夫だ」

 とあっけらかんと答えた。


 なんだか、バイ菌とかウイルスみたいな扱いだ。それでいいのか?


 ベスに聞くと、やはり魔物の肉ばかり食べるのは避けるべきとされているそうだ。昔、魔王が現れた時代に、魔王に従った邪教の者たちが、信者に魔物の肉ばかりを食わせて人を魔人に変えた、なんて伝説があるという。


 ただ、貧しい村人などはそもそも魔猪の肉だってそうそう食べられないし、人間は雑食だから、野菜などと組み合わせて食べている分には問題にならないらしい。実際には魔物の肉ばかり食べていると体が耐えられずに死んでしまうこともあって、魔人なんて眉唾だそうだ。

 一方で裕福な層は臭みの強い魔物の肉はまず食べないから、やはり大丈夫だと。

 こっちの理屈の方が、まだ安心できる。


 さらに、僧侶による浄化をあえて弱めにかけることで、肉体を消滅させずに魔力を散らすことも出来るらしく、神殿でそうして「清めた」肉も、少し高めの食材として出回っているらしい。


「でも、魔物の肉は少量なら滋養強壮にいい、って言うから。年配の男の人には特に人気だとか・・・」

 言いかけて、ベスはハッと気づいたように言葉を切った。うん、あれだよね?精力剤、夜の元気。


俺が、(どういうことかな、ぼくわかんない)的な顔をしたら、真っ赤になって行ってしまった。

残念。

 

 それにしても疲れた。ただ山道を上り下りするだけでなく、魔猪の肉などを担いで運ぶ狩人や木こりたちの体力は、本当に大したもんだ。


 太陽が西に傾き始めた頃、ようやく泉の所まで戻って、水を飲むだけでなく頭からかぶったりして汗を流した。

 湧き水はめちゃくちゃ冷たい、だが、気持ちいい。昨日手桶についていたボロ布を懐にしのばせていたので、それでゴシゴシ頭を拭いた。


 こっちに来てから、風呂に一度も入ってないのがつらい。

温泉って、こっちの世界には無いんだろうか?火山があれば温泉もあるはずだ。


 リナも白兵戦を経験してかなり汚れてしまったが、みんなの前で、人形を洗うアブない奴になるのは避けたい。独房に帰ってからでもきれいにしてやろう。


 ザグー騎士長率いる主力の兵たちも戻ってきて、ムハレムと情報交換している。どうやらあちらもコボルドの討伐を終えられたようだ。

 しかし、想定以上に手こずり、また何人か負傷者が出たそうだ。レベル3の僧侶が、ずいぶん消耗した顔をして戻ってきた。



 ともあれ、ようやくカレーナたちが当面の目標に掲げていた、領内の迷宮の外に出てきた魔物の掃討は完了したことになる。


 しかし、これで肝心の迷宮の討伐は可能なんだろうか?


 RPGだと、普通のフィールドに出るモンスターより、迷宮内の方がずっと強力で難易度が高いものだよな?


 奴隷契約に縛られている俺は、逃げることができない。

 前途にあらためて、大きな不安を感じた。

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