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第174話 結界の守人

海に落ちた俺たちはセラミック船を創り出してなんとか難を逃れたが、漁師たちとははぐれ、漂流しているうちに、怪しい歌声が聞こえてきた。

 霧の向こうから、美しい歌声が聞こえる。

 なんて歌ってるのかわからないけど、心の隙間にしみこんでくるような甘美で魅惑的な声だった。


「聞いちゃだめっ、これは、セイレーンの魔性の声よっ」

 ルシエンの叫び声に、我に返ってみんな耳を塞ぐ。でも、かすかに聞こえてくる・・・


(これは精神に働きかける魔法の声だから、耳を塞いだだけじゃ完全にはシャットアウトできないみたい)


 リナの念話を通じて、なんとかパーティー間で意思疎通できるのが救いだ。


(みんな心を強く持って。まずいときには、自分の名前を唱えて、それから何か自分にとって大切なものをイメージしなさいっ)


 ルシエンの念が中継されて流れ込んでくる。


 やがて、霧の向こうに人影?あり得ないはずだが、水面上に美しい女の姿が見える、気がする。


<セイレーン LV40

  呪文  「水」「風」「遠話」「麻痺」

      「結界」「魔力強化」「催眠」

  スキル 魔性の歌声    精霊の耳

      魅了(LV7)  魔物使役

      水同化      察知

      判別(中級)   鑑定(中級)

      アイテムボックス 格闘(LV3)

      ・・・・          >


 なんかヤバそうな奴だ。

 LV40って、魔王の眷属とかドラゴンとかそういうレベルだろ?


 しかも、なんだ、このスキル。ルシエンが言ってたのはこの「魔性の歌声」か。他にも「魔物使役」とか、「魅了(LV7)」とか、呪文で「催眠」とかって危険すぎる!


 だが・・・見た目は美人だ、すごい美女って言っていい。

 霧の中でも輝く銀色の長い髪。ぱっちりした碧い海のような色の瞳。

 裸の上半身は扇情的なラインを描き、そして腰から下は・・・海面付近でキラキラ光る銀色の、ウロコ!?


 うわ、これは人魚か?それとも・・・けど、とにかく目を引かれ心をひかれる・・・まずい、これが「魅了」の効果なのか!?

 俺は心配そうに俺の服を握ってるノルテの手を握って、気持ちを切り替えようとする。


《この禁断の海域に進入したのはあなたたち?》


 念が飛んできた。そうだ、「遠話」の魔法も持ってるんだ。


「リナ、中継してくれ、話してみるから」

 そうリナに伝えたけど、セイレーンは俺ではなく・・・見てるのはルシエンか。


《そう、エルフの波動を感じたの。だから殺さずに様子を見てた・・・あなたは?》


 ルシエンは、なにかそうなるとわかってたかのように、落ち着いた物腰で答えた。


「私はウェリノールの森に住まう一族に連なるルシエン。海の姉妹よ、あなたはもしや、聖なる地の守り手なのかしら?」


《ウェリノールのルシエン、森の姉妹か・・・さよう、知識ある者には答えが与えられん。あなたの言うとおり、あたしは聖なる島のエルフたちより、資格なき者が聖地を騒がすことなきよう任じられた、結界を守る者・・・由緒正しきエルフとその同行者であれば、いにしえよりの試しを受ける資格ありと言えるでしょう》


 エルフの聖地だって!?

 以前、ルシエンがいつか訪ねたいって言ってたアレか。そこに入るための結界なのか、でも「試し」とかって言ったぞ・・・


「海の姉妹よ、私はいつか同胞たちの聖地を訪ねたいと願ってきた。でも、今回訪れたのは全くの偶然で、まだ試しを受ける準備はできていないわ。あらためて出直したいと思うのだけど・・・」

 ルシエンは思い描いていた聖地に行けるかも、っていうのにちょっと消極的だな。でも、きょうはみんな消耗しきってるし、たしかにあらためて訪問したいって気もする。


 でも、その途端にセイレーンが怒りだした?なんか雰囲気が変わったぞ。


《なにを言うの!ここまで来ておいて、出直すなんて許さない。そもそも、この結界のことを知った者を、そのまま返せるわけないでしょう》


 いや、あんたがペラペラ説明しなきゃよかったんじゃないのか?


《ここに至った者は、試しを成し遂げて聖地へと赴くか、あるいはそれに値せぬと判断されて海の魔物のエサになるか、二つに一つよっ!》


 マジか、問答無用なの?エルフの聖地の管理人みたいなもんなんだろうに、エルフってそんな分からず屋なの?

 ルシエンも勝手が違うようで戸惑ってる。


「それはちょっと無理強いが過ぎるんじゃないのかしら?」


《無理でもなんでも、そういうことになってるのよ。あたしがルールを決めたんじゃ無いんだから。文句は、生きて通過したらエルフの長老たちにでも言ってよね?》


 キレイなお姉さん、だんだんキャラがブレてきてるぞ・・・


《まあ、この五十年ぐらい合格者が出てないからね、特別にグループで誰か一人だけでも試しに合格したら、全員通してあげるわよ?》


 なに、その無理ゲー・・・気になって会話に割って入り、聞いてみた。

「で、その試しって、なんなの?」


 セイレーンは、なんだか虫けらを見るような冷たい目で俺を見据えた。

 あ、これダメなタイプだわ。


《人間風情が口を出すとは・・・セイレーンの試しと言えば決まっておろうっ! 『のど自慢』じゃっ!!》

本日は2回更新します。

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