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第143話 けもみみギャル

パルテポリスの冒険者ギルドに、倒したアースドラゴンの鱗などを買い取ってもらおうと持ち込んだところ、大騒ぎになった。

「ド、ドラゴンですかっ!?」

 きょうの窓口担当は、まだ若い女性だったためか、あわててベテランの職員を呼びに走った。


 そして、まわりにいた冒険者たちの間にもざわめきが広がった。

「おい、ドラゴン退治したって言ったか」

「マジかよ、新たなドラゴンスレイヤー誕生かっ」

 大半は俺たちにはわからないセムハ語でのやりとりだが、中にはレムリア語を使ってる者もいて、興奮が伝わってきた。


 初老の男と、中年の女、ギルドの幹部らしい二人が出てきて、虫眼鏡とかも使いながら詳しく鑑定を始めた。


「ううむ、間違いなく地系統のドラゴンの鱗だな」

「魔石はレベル30前後ですね、これも・・・アースドラゴンで間違いありません」

 互いに確認し合っている。


「まだ若いが、紛れもなくアースドラゴンだな・・・お前たち、ドラゴンを倒したのは初めてか?」

「うん、正直、勝てるとは思わなかったけどなんとか・・・」

「あたりまえだ!無茶しやがって。まあ、無事でよかったな」

見るからに若い俺たちパーティーが、背伸びしたように思われるのはしかたがない。


「討伐したメンバー全員、ギルドカードをお出しなさい」

 どうやら、ドラゴンを退治した冒険者は、ドラゴンスレイヤーの称号を与えられるそうで、ギルドカードにその旨と日付、認定したギルドの印章が刻まれるらしい。


 ノルテ、カーミラ、ルシエンと俺の四人のカードに、それぞれ鉄筆みたいなもので読めない東方の文字が刻まれていく。一応「この部分がドラゴンって意味だ」ってことを教えてくれた。


 まわりの冒険者たちが、約半分は羨ましそうな、半分は素直に感心しているようなまなざしを注いでくる。

「あんたら、どこから来たんだ?エルザーク王国?」

「やったのはどこで?あー、ヘラート迷宮か。十七階層?やっぱりそれぐらい深く入らないとダメか・・・」


 何人か、レムリア語の出来る冒険者に詳しいいきさつとかを聞かれた。冒険者同士、やっぱり強い魔物との戦いとかは気になるよな。 

 俺たちがセムハ語を使っていたら、もっと大勢に話しかけられてただろうと思う。


 ドラゴンの鱗2枚と爪、「竜の血液成分」の粉末を作った量の半分ほど、そして大小の魔石を合わせて、買い取り価格は小金貨で300枚分にもなった。

 ただ、即金でもらうには高額すぎるので、「ギルド口座」って所に入金されて、各国の冒険者ギルドで手続きをすれば引き出せるって形になった。


 それでも、正しい解体の手順がわかっていたり、迷宮からドラゴンの遺体を運び出す手段があったら、もっと桁違いに稼げたらしい。

 まあ、欲張るとろくなことにならないと思うし、いずれノルテたちを解放するときにでも持たせてやるお金が増えたってことで、これはこれでいいかな。


 鱗のうち1枚は、いずれ盾とか防具の素材に使えるかもしれないし、記念の意味もあって手元に残すことにした。


 そして、「万能治療薬?」も見てもらっただけだった。

「部位欠損やどんな病気でも治せる薬なんて、かなり特殊な魔法薬の店でないと扱わないし、品質的にも、薬専門の人間が判断しないと値をつけるのは難しいな・・・」

 効果が確実なら、小金貨300枚とか500枚とかで取引されるらしいけど。


 どっちにしても、懐が一気にあたたかくなったね。



 まだギルド内のざわめきがおさまらない中で、入口から二人の女の子が中を覗いているのにカーミラが気づいて、俺をつんつんして注意をひいた。

「あっ」

 一人はマグダレアだ。そろそろ待ち合わせ時間だった・・・


「あの子たちですね」

「一緒にいるのが同行する友人、かしらねぇ・・・」

 ルシエンの言いたいことはわかるよ。


 まだ早めの時間なのですいている、ギルド二階の酒場みたいな所に2人を連れていき、互いのメンバーを紹介しあった。


もちろん、うちのみんなの視線が集中してるのは、マグダレアが連れてきたもう一人の女の子だった。


(どこから突っ込んだらいいのかな)

 リナ、わざわざ念話で言わなくていいよ、わかってるから。


 ケモミミだ。


<ブッチーニ 猫人 女 19歳 LV10

  スキル 地獄耳     暗視

      忍び足     察知

      木登り     魔法抵抗(小)

      速さ増加(中) 言語知識(LV3)

      騎乗(LV1) 格闘(LV2)

      剣技(LV2) 槍技(LV1)

      弓技(LV2)       >


 マグダレアから紹介された「帝国大学校の歴史同好会の友人」は、頭の上に三角の耳を乗せた猫人族の女の子、東風丸で乗り合わせたミッケたちと同じ種族だ。

 

 でも、それだけなら驚かないよ?初めてじゃないしさ。


 判別スキルで見たステータスも、おかしくはない。

 俺と同じ19歳でLV10ってのは、冒険者でもないのに立派なものだし、マグダレアと同じく言語知識のスキルを持ってるのは、学生として勉強してるんだろう。


 そして、戦闘系スキルもそこそこ持ってる。

 大学での専攻が戦史と用兵学で、卒業後は帝国軍の士官になるつもりだそうで、実戦経験も結構あるそうだ。だからレベルも高いんだろう。


 ただね・・・

「やっほー、ブッチって呼んでね、よろー」


 第一声からこれだし。

 胸開きの広い服から、褐色の大きな二つの丘と谷間がはっきり見えるってか明らかに見せつけてるし、太ももまで見えてる短いスカートとか盛りまくったマツゲとか・・・


 どこのギャルだよっ、としか言いようが無い。


 まあ、マグダレアも最初会った時に、ちょっとギャルっぽいなと思ったけど、類友ってか、さらにパワーアップって言うか・・・


 転生者でもないのに、なぜ、こっちの世界にギャルがいるのかと。

 そしてギャルが軍の士官志望とかって、もう意味不明だ。兵士たちに意見を聞いてみたい、ぜひ。


 そして、予想はしてたけど、うちの女子たちは基本マジメ系なので、あまりいい雰囲気ではないのだった。

「「・・・」」

天然のカーミラを除き、ルシエンとノルテは、なにか言いたそうだ。


 だがしかし、それより先に大事な話だ。


「あのさ、どうやらあの遺跡、すごく危険らしいんだ」

 俺はハトーリが調べてくれたことを話した。


 ハトーリの名は、マグダレアはもちろんブッチも知っていたようで、ちょっとあらたまった様子で聞き始め、魔族ってあたりになると軽い雰囲気は影を潜め、真剣に質問とかを挟みながら聞き入っていた。


「それって、うちらだけで乗り込むのはヤバイね、トラブった場合を考えて十分連絡体制とか整えとかないと。マーちん、ベハナーム研だよね?」

「うん、デロス先生の講義も受けてたけど、ベハナーム先生なら家も知ってるし、この後すぐ相談に行けると思う」


「おーけ、じゃあ、この打ち合わせが済んだら、その足でベハせんのとこに寄って、そっから軍に調査依頼を出してもらおうよ」

「え、うん、わかった」


 俺はちょっとだけ感心した。なるほど、一応は軍志望だけはあるってことか。危機管理意識とか行動力はあるんだな。

「シロッチも付き合ってくれるかな」

 ただし、言語感覚はずっと謎ギャルのままなのな。シロッチはないだろ。


「お・ね・が・いっ」

 うわ、巨乳を挟んで寄せ上げ、おねだりポーズだよ、ここドコ?


「オホンっ」

 ルシエン姐さんの機嫌はさらに降下中だ。

「私たちはプロの冒険者なのよ。今回は、あなた方を現地まで運ぶだけでもボランティアなのだから・・・」


「あ、そっかー、シロッチったら。もー、しかたがないなぁ、じゃあ、報酬は、あ・た・し?」

「「まにあってるからっ!」」

 ルシエンとノルテが左右から、俺の視界をふさぐように立ちはだかった。


「ま、まあ、学者さんのところに説明するなら、ハトーリから直接話を聞いた俺も同行した方が早いんじゃないかな・・・それに明日俺たちだけで出発するのがどうなのか、ってのも相談して見た方がよさそうだし・・・」


 険悪な雰囲気になってきた女子たちをなだめようと思って、そう言ったんだけど・・・ギクシャクしたままだった。


 結局、マグダレアの師匠にあたる学者の所には、俺とカーミラが同行することになり、ルシエンとノルテは宿で荷造りをすることになった。


 明日の朝、予定通り出発するかどうかも、この国の学者や軍がハトーリの調査結果をどれぐらい信用するか、にもよるけど、一応、出発できるように準備しておく、ってことだ。


「いい、カーミラ、シローが誘惑に負けないようしっかり目を光らせてるのよ」

「カーミラちゃん、頼みますよっ」

 俺、どんだけ信用ないの?



 高名な学者だというベハナームの屋敷は、大学からほど近い高級住宅地にあった。


 ベハナームは、白髪混じりの50歳の魔導師だった。

 大学では魔法と薬の歴史を教えているとのことだったが、レベルは30もあり、かなりの実戦経験もしている雰囲気だった。


 俺がハトーリから聞いた話をつぶさに伝えると、まったく疑いもせずに、少し待っていて欲しい、と使用人にお茶を持ってこさせ、別室でどこかと盛んに遠話のやりとりをしている様子だった。


 そして、俺の感覚ではわずか10分ほどで戻ってきて、明朝同行したい、と言い出した。


「え、と、でもうちのパーティーの人数的には連れて行けるのはあと2人だけ、ですけど?」

「君たちは最初に約束していたこの2人を連れて行ってくれればいい。そちらの魔法使いに座標を共有してもらって、他のメンバーは私が転移で連れて行くからね」

 そうか、魔導師LV30だもんな、リナ以上の転移魔法が使えて当然だった。


「ハトーリとは旧知の仲でね、彼がそう言うなら、おそらく事は一刻を争うだろう。私は帝室の顧問魔導師も務めているので、まず状況把握だけでも急ぎたい」


 結局、元々の予定通り、明日の夜明けに街門の内側で集合し、直ちに街を出て現場に向かう、ということになった。

 ベハナームは明言はしなかったものの、軍に声をかけたようだった。


「ブッチーニ君だったかね?私の授業も取っていたと思うが、軍学専攻かな」

「うん、戦史と用兵学ですよー」


「なら明日はできる限りの武装を持って来なさい。あくまで万一の際にマグダレア君と自分の身を守るためだ。単位は保証してあげるから、決して無茶な振る舞いをせず、現場ではシローさんの指示に従いなさい」

「えっ、単位くれるのっ、はいはい、従います、ありがとー先生っ!」


けもみみギャルは、ベハナームに抱きついて巨乳を押しつけた。

せんせー、嬉しそうです、ちょっとマグダレアさんがムッとしてますよ。


 そして、事態は動き始めたんだ。

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