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転生スキルは「お人形遊び」と「粘土遊び」なんですが、これでどうしろと?  作者: 柴野ましろ
第一部 迷宮奴隷篇

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第10話 新しいスキル

レベルアップで覚えた新しいスキル、さっそく試してみることにした。

 いまさら熟睡もできず、結局俺は、宿の朝食が用意される前に、新しいスキルで何が出来るのか?調べてみることにした。


 左手にステータスを浮かべて、何が増えているか再確認する。


 まずは冒険者のレベルアップで得たと見られる『HP増加(小)』だが、これは文字通りHPが少し増えているに違いない。


 もっとも、HPの具体的な値自体が今のところ見られないし、HPの定義もゲームによって少し違う。スタミナみたいな意味の場合もあれば、攻撃を受けてダメージを受けたときだけ下がる生命力の残り、みたいな場合とかだ。

 これはまあ、今あまり試しようもないし、後回しでいいだろう。

 起き抜けに限界まで腕立て伏せとか、やってみる気にはなれない。


 次に『察知』だ。どう試すのかわからないが、とりあえず、「察知」と唱えてみた。


 ・・・何も起きない。


 よかった、一人の時で。人に見られてたらかなり恥ずかしい図だ。


 そりゃあ魔法の呪文じゃないんだし。ただ、察知のスキルを意識すると、なんだか感覚が鋭敏になった気がする。

 よく効く薬だと言われると効いた気になる、プラセボ効果ってやつかもしれないが。


 だが、意識を集中すると、この2階に並んでいる他の客室の中の人の気配が感じられた。

 部屋の数が全部でいくつあるのか、ちゃんと見ていなかったが、いま2階で動いているのは、一人だけだな。寝ている人もいるかもしれないが、それはわからなかった。


 そして、階下では・・・2人か。メタボおやじとおばちゃんの二人は、既に起きているようで、なにか仕込みを始めているような気がする。


 自然にわかりすぎて驚いた。

 勘の鋭い人なら、物音や振動とかで、これぐらいわかるのかもしれない。でも、多分、いや絶対に俺はこんなことは出来なかったと思う。不思議パワーだ。


 これは魔物や敵が近づいているときに気づけるとしたら、相当役立つスキルかもしれない。問題は、意識を集中していないと効果の無い、いわゆるアクティブスキルだとすると、いつも気を張っていないといけないってことだ。探知系はパッシブスキルの方が、役に立つことが多いと思う。


 あとは、いま寝ている人がおそらく察知できていないことから、気配をひそめたりしている相手はわからないんじゃないか。

 過信しないことだな。


 2階のさっき人の気配を感じ取ったのとは別の客室で、誰かが寝返りを打ってるようだ。まだ起きてはいないな。

 そして、階下でもう一人気配を感じる。あの娘が起きたようだ。

 おばちゃんは気配が遠ざかった。裏口から外に出て、なんだろう。水くみとか、薪を取りに行ったとか、そんなところか。


 面白くて色んな気配を探ってみた。

 集中すると『察知』できる範囲や得られる情報は増える。表通りを歩いている人も人数ぐらいは頑張ればわかる。

 だが、同じぐらいの距離でも両隣の建物の中の人は、無人じゃなさそうだってぐらいしか感じ取れない。壁があって音が伝わりにくいとか、そういうことも影響するんだろう。


 冒険者スキルで残っているのは『パーティー編成』だ。

「パーティー編成」

 口に出すと、脳裏になにか入力を求められるようなイメージがわいたが、何も起きなかった。

 

 これはRPGの常識から言うと、複数プレイヤーがパーティーを組めるってことじゃないかと思う。ただ、それがなぜスキルになっているのかわからない。

 ひょっとすると、冒険者ジョブがおらず、戦士や魔法使いとかだけだと、複数人いてもパーティーが組めず、それぞれがソロプレイしている扱いになるのかな?


 各人がソロ扱いになると何が違うのかも想像するほかないが、経験値が各人ごとに得られるか、パーティー内で均等割に分配されるか、の違いかもしれない。


 僧侶とかスカウトとかは、直接敵を倒すことは少ないだろうから、ソロプレイだとなかなかレベルが上がらないからな。パーティー編成できればそうしたジョブの仲間も成長させられる。

 いずれにしても、俺一人しかいない今は確かめようがないな。


次は『お人形遊び(LV3)』だ。 

『着せ替えできる』『動ける』って、なんだよ。


「リナ、起きてるか?」

 呼びかけてみる。


 リュックの中からガサゴソ気配がした。

 びびった。 一瞬、Gかと思った。


 リュックからリナが顔を出して、さらにびっくりした。そういうことか、『動ける』って文字通りの意味なんだ。


<起きてるかって、リナは人形なんだから眠らないよ>

 低血圧なのか、いや、無愛想なのは寝起きに限らずいつもだった。


「着せ替えできる、っていうけど、別に寝るときは寝間着ってわけじゃないのな」

<シローが着せ替えしたいと思えば変わるよ>

 突然、ドレスが消えて、一瞬まっぱだかになって、すぐにクマさん柄のパジャマ姿に変わった。


 一瞬だったからよくわからなかった。

「いや、シャネルの5番、じゃないけど、そこはネグリジェだろう?」

 ・・・つとめて平静に言ってみた。

 パジャマが消えて、それからピンクのネグリジェになった。


 おー、ネグリジェは着てるがシースルーだ。

 人形だから、凹凸はあっても肝心なものはないんだ。マネキンみたいなものだな。


<変態がいますよ。JCの、しかも人形に嗜好をあらわにする重度の変態がいます>


 なぜか棒読みだ。

 うるさいよ、どこでそんな表現を覚えた。


「別にネグリジェって言っても色々あるだろ。俺がそんなスケスケにしろって言ったわけじゃないし・・・」

<言い訳してるよ~、クズだね、男らしくないね、ざんねんだね~>


 言いたい放題だ。

 体が動くようになっただけでなく、口調のバリエーションも増えた気がするぞ。ディスり方がレベルアップしてる。


「し、失礼な。誤解だ誤解! 一体なにを根拠にしてるのかな・・・」

<リナが着替えられるのはね、あんたが具体的にイメージを持ってる服だけなんだよ>

 表情も変えられるようになったのをいいことに、小悪魔的な笑顔を浮かべてから、一転、軽蔑した目を向ける。


<だから、リナが着替えた服装は、あんたが望んだ姿なの>

 グーの音も出ない。


 開き直ることにした。

「スキルでどれだけのことができるか、限界を探っておかなきゃ、いざって時に困るだろ。他にどんな服装に変われるんだ?」

<言ったでしょ、シローが具体的にイメージを描ける服なら可能だよ>


 それから、俺が女子の服装でイメージできる限りのことを試した。

 セーラー服からブルマー&体操着、コギャルファッション、スポーツのユニフォーム各種、もちろん水着も忘れちゃいない、ビキニはまだまだ体型的にイケてないが、認めるのはしゃくだが足が長くてスタイルいいな、こいつ。


 十二単とかは俺が詳しく知らないせいか、なんちゃって和服になってしまった。弓道着とか巫女さん姿はわりとそれらしくなった。

 チアリーダーとかテニス選手の格好の時以外は、なぜか下は白ぱんつのままだった。これはデフォなんだろうか?俺のせいでは決してないはずだ・・・


 髪型とか髪の色まで、なんとなく服装に応じて変わる。巫女さん姿の時は、欧米風の顔立ちは変わらないのに黒髪になった。


昨日のセシリーやカレーナの武装姿も再現できた。


 おまけに、セシリーが来ていた鎖帷子だけでなく、持っていた槍とかも一緒に出現した。

 装備も含めて服装だということかもしれないが、触ってみたら、武器・防具もリナ本体と同じソフビ製で、見かけ倒しだった。 ・・・ごっこ遊びだからね。


 リナの体もソフビで中空らしくプニュプニュしてやわらかいが、その割にサイズなりの力はちゃんとあるようで、普通に歩いたりジャンプしたり、身体能力は割と高そうだ。

 さわりまくったのは、筋肉とか身体的なスペックを把握したかったからで、決して変態だからではない、うん。

 

堪能した、もとい、十分スキルを確認したあとは、『粘土遊び(LV4)』を調べてみる。こっちはレベル4なんだよな。

 昨日は、頭痛がするぐらい、たぶんMPが足りなくなるほどめいっぱい粘土を作ったりしたから、スキルの経験値がお人形遊びよりも多くたまった、っていうのが現在のシロー仮説だ。


 だとしたら、今たっぷりリナと遊んでやったから、今夜にはお人形遊びのレベルがぐっと上がるかもしれない。


 新たに得た粘土遊びでの能力は、『お片付け』『どこでも粘土』『形が自在に』だ。


 『お片付け』は、念じるだけで、それまでに作った粘土が一瞬で消えた。

 うん、これはママがほしい便利スキルNo.1かもな。散らかしっぱなしのおもちゃを一瞬で片付けるとか、粘土以外にもほしいところだね。


 『どこでも粘土』は、これまでせいぜい自分から2,3メートルの範囲にしか生み出せなかった粘土が、部屋の隅とか天井とか、かなり離れた場所にでも自在に出せるようになった。

 天井に貼り付けて出す、なんてオモシロ技もできた。

 すぐに落ちるけどね。


 色々ためすと、より遠くに出す方が同じ量でもMP消費が多そうだ。

 そして、お片付けをすると、作ったときの消費MPの多分一部だが、戻ってくるような気がする。


 これは感覚的なものでしかないが、MP不足で頭痛がしていたのが少し楽になって気分も上向いたので、なんとなく粘土に込められたMPを一定の割合で再吸収しているんじゃないか、と思う。


 『形が自在に』は、出現させる粘土を、これまでは単なる塊でしか出せなかったのを、最初からサイコロ型とかハニワ型とか、イメージできる形で出せるようになった。


 ついでに一旦生み出した粘土を、手で触らなくても変形させられることもわかった。

 ただし、かなりMPを消費する感じだし、細かい造形をするのは大変だ。練習次第かもしれないが、疲れた。


 粘土スキルを試していると、遊んでたわけじゃないよ、階下の人の気配が増えてきた。

 他の宿泊者が朝食に降り始めたんだな。


 いや、そんなスキルとかに頼らなくても、いい匂いがしてきたからわかるって。

 朝から働いた分、燃料補給だよな。


 朝食は、フランスパンみたいにかたくて、ちょっとしょっぱいパンと、なにかの根菜と豆のスープだった。スープの味はまあ、悪くない、というところだが、肉っけがないのはちょっと寂しい。

 もっとも、朝食は宿代に込みだから贅沢は言えないか。それに、昨日の臭みのある肉はイマイチだったし、魔物の肉だったとしたら、食べ続けて大丈夫かわかるまでは、ちょっと避けたい。


 そういえば、昨日の晩も今朝も、海産物っぽいものは見かけないから、ここは海から離れているのかもしれないな。

 そう思って、お皿を下げに来た看板娘に聞いたら、やはりここはかなり内陸部で、海というのは聞いたことはあるけどまだ見たことがない、という返事だった。


 近代になるまで、生まれた地域からほとんど出たことがない、という人が結構多かったらしいから、そう珍しい話じゃないだろう。


 完食。

 パンはおかわりした。空腹は最高のスパイス、と偉い人が言ってたね。

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