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8話『私の覚悟』

読者様皆様の誤字訂正には毎度のことお世話になっております…。まだまだ拙い文章ですが、これからも応援宜しくお願い致します。(*´ω`*)

 高校生になり、ふと気づくと一年が経ってしまっていた。あまりにも早い一年だった。


 始業式という新たな生活の幕開けで、一年という時の流れを実感する。そして、また私は私を嫌うことになる。


 私は、まだあいつと話すことができていなかった。


 この高校生活が最後のチャンスだって、分かってるのに。身体が動かないのだ。緊張、不安。何より罪悪感がその身体を止める。……無理やりにでも会って謝らなければならないだろうに。


 これはケジメだ。5年前から変わらない私の気持ちに決着をつけなければならないのだ。



 5年前、素直になれなかった私はあいつに向かって酷いことを言った。


……本当に、なんであんな事言ってしまったのか。ひとりぼっちだった私の側にずっと一緒に居てくれたのに。


 あいつは幼い私にとって、ヒーローみたいな存在だった。


 私がどんなに酷い言葉を吐いても、あいつは全く傷ついた素振りを見せなかった。むしろ、ありがとうなんて感謝された。


 あいつだけは私の味方だった。私が傷ついた時、私が酷いことを言っても黙って隣で座ってくれた。優しく人懐っこい笑顔で、大丈夫だよ、大丈夫だよ。ってゆっくり背中をさすってくれた。


 私は、そんなあいつに惹かれたのだ。


 優しくて、頼もしくて。一緒にいると楽しくて、幸せで、あったかくて。人懐っこい、可愛い笑顔が好きだった。私のことを優しく撫でてくれるあいつの手が好きだった。『さやちゃん』って呼ばれるのが好きだった。あいつのおっとりとした雰囲気が好きだった。



…………大好きだった。


 あいつに好きって言われたとき、嬉しかったなぁ。

にやけが止まらなくて、お互いに真っ赤になってしまったことを覚えている。あぁ、戻りたいなぁ。幸せな時間を振り返り、気持ちを確かめた。そして、あの日のことを思い出す。




 あの日、私があいつを傷つけたとき。あいつは、笑った。泣きそうになりながら、それを必死に胸の奥に隠して、笑ったのだ。


……私を、傷つけないために。今でも、あの時のあいつの無理に作った笑顔は忘れない。



「……そっか、分かった。……ごめんね?」



 そう私に言った後、あいつは初めて私の前から姿を消した。ずっとずっと一緒に居たあいつは、突然私の側から消えてしまった。……なんで謝ったんだろう。謝らないといけないのは私の方なのに。


 私があいつと会わなくなってから、私は胸が抉られているような痛みに襲われた。好きという気持ちが居場所を無くして心の中で暴走していた。


 次に私に襲いかかったのは、今までよりずっと酷い孤独感。ひとりぼっちに戻って、何回も、何回も泣いた。背中をさすって慰めてくれるヒーローは、もう居なかった。


 大切なものは、失ってからその大きさに気づくもので。あいつという存在に、どれだけ自分が助けられていたのかを、どれだけ私が救われたのかを知った。


 私は、結局一度もあいつに、 幸人に。「好き」と言えなかった。何度、何度と後悔したことか。言おうとすると、どこか気恥ずかしくて、言えなかった。素直になれずに嫌なことばっかり言っていた。



 素直に謝れなかった私が嫌いで。『幸人』という名前の胸にぽっかりと空いた大きな穴を、別の何かで埋めようとした私が大嫌いだった。



 私は、友達を作った。



 自分を偽ることで、友達なんて簡単に作れる事を知った。


 何でそんな事したのか? 理由も簡単だった。空いた穴を塞ぐため。


 私は友達と過ごす事で幸人という存在を忘れようとしたのだった。



 信じられない。本当に、……気持ち悪い。



 でも、そうでもしないと『避けられている』という事実に耐えられそうにも無かった。



……それでも私は、今でも幸人のことが大好きだった。忘れられる訳がなかった。そのくらい大好きだった。


 その分胸に空いた穴は、どれだけ経っても無くなることは無かった。今でも私の胸を、首をきゅううと締め付ける。涙が出てくる。


 幸人に謝って、ずっと、ずっと大好きだったって言うんだ。この気持ちに決着をつける。


 


────そうして私は二年生になった。




 新クラス発表の表が張り出され、前の方は人で埋まっていたので私は後ろの方から自分の名前を探していた。


 一組、二組、と自分の名前を探す。


【姉崎 寧々】【天野 沙耶】【……


私の名前を見つけた。私はクラスのメンバーを確認する。あ、寧々も一緒だ。他には……?


……】【小鳥遊 幸人】【……


 あ、小鳥遊、幸人。幸人だ……!!


 私は目をこすって、もう一度彼の名前を確認した。


 やった…! 同じクラスだ!これで、また話せるかも知れない! なんて妄想を膨らませているせいで、隣に居る彼に気づかなかった。



 視線を感じてふと気づくと。ずっと、ずっと想っている人がこちらを向いていた。



「……え?」 「……あ。」



 少し目が合ったが、そのまますぐに彼は友達の所に行ってしまった。


 近くで見るなんて、もう5年ぶりになる。ずっと、ずっと会いたかったのだ。とても嬉しかった。ドクドクと楽しげな心音のリズムが身体に響く。


 な、なんで、あいつあんなに顔赤かったんだろ……

っていうか幸人カッコよくなりすぎでしょ…! 背も伸びちゃって、ガタイもがっしりしてたし!



……はぁ。好きだなぁ。話したいなぁ。



って、私、変な顔してなかったかな!? バッと頬に手を当てる。かなり、熱い。赤くなってるのは私もだなぁ。



 よし! 絶対に、今年に謝るんだ。覚悟を決めろ! 頑張れ、私!




────好きって、言うんだ!




さやちゃんのターンです。

幸人くん大好きっ子だけど素直になれない彼女をどうか応援してやって下さい。

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