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6話『作戦会議と真実の宣告』

「うん?」


 耳を傾けていたが、思わず正気を疑って彼の顔を見る。


「いや、だから天野さんと同じ委員会に入るんだって」


 聞き間違いでは無かったようだ。


「いや。だってそれは僕にはまだ早いし……」


「……幸人、良く聞け。俺さ、昨日の話を聞いてどっか引っかかると思って、よ〜〜く考えたんだ」


「う、うん」


 突然真剣な顔つきで語りかけてきた。


……引っかかる? 何が? 何がなんだか分からない。よ〜くと結構伸ばしたのを聞くに、恐らく相当考えてくれたのだろう。


「最初に、お前さ、どうなったら格好よくなるんだ?」


「滅茶苦茶失礼に聞こえるんだけど、気のせい?」


 頬がピクピクした。だが、()()()という言葉にこれがまだまだ続くことを察してとりあえずツッコんだ。


「まぁつまり、俺の言いたい事はだな。幸人の最終目標が見えないことだ。一体何処に辿り着いたら()()()()()と言えるんだ?」



 自分の中の何かが壊れた気がした。ガラスが粉砕し、吹き飛んだようなショックを受けた。


……まさに目からウロコだった。完全に盲点。


 僕は、何になりたかったんだ? 筋トレして、勉強して、滝に打たれて。思いつくような事は大抵やった。

 だが、それでも自分の事が認められなかった。もう一度、告白しようとは思わなかったのだ。


どうして?


 彼女は歳を取る中でどんどん綺麗になっていった。釣り合わないのだ。


 確かに僕はある程度身体は引き締まった。誇れるほどではないが、成績も良くなった。


 そして、滝に打たれたことで少しは根性も付いたと思う。それでも、まだまだ足りなかった。彼女はそれくらいの存在なのだ。


……あれ? じゃあどうすれば良いんだ?


「自分の事が分かってきたみたいだな。んで、次だ。幸人は天野の好きなタイプを知っているのか?」


「……と、言うと?」


……はぁぁ。と特大のため息をついて僕に言った。


「だーかーら、天野の好きなタイプは知ってるのか?って!」


????????


 彼の発した言葉の意図がさっぱり分からなかった。

しかし、僕はさやちゃんの好きなタイプなんて知らなかった。というかここ5年くらい喋ってもいないので知る由もなかったのだ。


「し、知らないけど」


 彼はうん。と頷いて続けた。


「だろうな。例えばの話だ。もし天野さんに好きな人が出来て、その人に似合う為にめちゃくちゃ筋トレしだして、世界最強のムキムキマッチョになったとしよう」


「前提条件が酷い」


 思わずツッコんでしまった。さやちゃんがムキムキ? え? 何そのカオス。そのままでもめちゃくちゃ綺麗であるさやちゃんが努力する必要なんて無いのに。というか努力の方向が違う。


 それならお化粧の技術を磨いた方がいいに決まっている。何を馬鹿なことを言っているのだ。……うん?これ誰のこと言ってるんだ?



「幸人は、どう思った?」



「……可愛くなるための努力ならまだしも、筋トレを始めるのは間違ってると思いました。」



「まとめると?」



()()()()()()()()()と思いました」



それを聞くと、安心したように彼は頷いた。



「そう、正解だ。それ、お前」



お前。って、僕?努力の方向性が違う?僕が!?



「え?……ええ!? ほ、ホントに!?」



「その通りだ。むしろ幸人は一体何になろうとしてたんだよ。戦闘民族か?」



 彼はからかうようにニヤッと笑った。


 ま、待ってよ。この5年間の努力は一体……!? もし間違った方向に進んでいるのなら、どこからやり直し? それこそ、さやちゃんの横になんて立てない! ますますダメじゃないか!



「え、えっと、僕はどうしたらいい?」



「焦るな、大丈夫だ、良く聞け? お前は道を間違えたんじゃなくて、道から少し逸れただけなんだ。勿論、運が良かっただけだけどな」



「道が逸れた。というと?」



「お前は、間違ってはいないんだ。言ったろ? 『お前はめちゃくちゃカッコいい』って。筋トレに関してはナイスだ。これからも続けていいと思う。でも4倍とかは無しな。ゴリラみたいになったら逆効果だ。あと、これから少しずつで良いから喋ってみたら? また一からさ。」


 さっきのさやちゃんの世界最強のムキムキ姿を思い出した。あれを自分に重ねるとまさに悲惨だった。危なかったところだ。


 だが、カッコいいというのは、恐らくゆーたんが盛っているだけだと思うが、それでもやはり、素直に褒められるのは嬉しかった。


 さやちゃんと改めて喋るのはやはり緊張する。僕はまだ強くなっていない。でも、ここまで親友に言われて何もしないのもダメだよね。



「……どうしたら一緒の委員に入れるの?」



「よっしゃ! 俺に任せとけっ。もう時間も無いからとにかく俺に合わせろ。きっと上手くいく」



 なんと頼もしい。彼のこの悪い笑顔は、確かに任せっきりにして良いものだ。


 といっても僕もある程度の作戦は知っておきたい。というか、これからの学校生活に関わるのだから入る委員くらいは知っておかなければ。



「分かった。ちなみに何委員に入るの?」



「保健委員だ」



 保健委員といえば、超ブラック委員と知れている。週一で帰宅時間まで残って仕事をさせるので、部活に入ってる方は必ず避けなければならない委員である。


 しかもその内容も、ほとんど保健室の掃除と整頓。いわゆる罰ゲームである。しかも一度決まってしまうと一年中この罰ゲームは続く。軽く言う地獄。



 毎年毎年この保健委員だけは委員会決めで最後まで残ってしまうらしい。誰かに犠牲になって貰うしか無いのだ。


 え。ゆーたんってもしかして……



「……それ押し付けてるだけじゃないよね?」


「……え? 何の話だ?」


彼は目を逸らした。


何の間だ。おい。ゆーたん。おい。

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