閑話:ないものねだり
目を覚ましたくない。
起きたくない。
眠たくはない。
動きたくない。
お腹もすいてない。
学校に行きたくない。
行かなくてもいいわけがない。
行かなくちゃいけない。
将来の夢なんてない。
欲しいものもない。
一番欲しいものはもう手に入らない。
それをなくした俺に生きる意味は、ない。
日々の中の些細な幸せも、ない。
死にたくは、ない。
でも生きたくも、ない。
あなたはここにはもう居ない。
この世にも、居ない。
あなたの笑顔はもう見れない。
あなたの作る食事は、もう食べれない。
あなたの話はもう聞けない。
あなたの温もりはもう感じれない。
あなたの声すら、もう聞けない。
あなたと一緒に過ごす日々以上に欲しいものなんてない。
あなたの言ってた『他の可愛い子』なんて居ない。
そもそもあなた以外欲しくなんてない。
あなたにはもう、会えない。
これからずっと、会えない。
時計の針は止まらない。
朝が来ない夜なんてない。
それでもやっぱりあなたは居ない。
からっぽの日々の中に立ち止まる。
親友は未来を描き、俺は過去を願った。
嘘の仮面を身に付けて、数多くの嘘を吐いた。
逆方向のその願う先を、同じ方向に歩いた。
本当の自分なんてもう、どこにもない。
ないないないない、ないないないない。
亡くなったあなたへの気持ちだけが、ここにある。
『逆方向だよ』