3話『さやちゃんにとって僕とは』
今回はちょい短めです。
クラス発表の後、僕らは元のクラスにて担任の先生の最後の挨拶を聞いた。
なんだかんだあったが、僕はこのクラスのことを気に入っていたので、「終わり」と考えると少しだけ寂しく感じた。
しかし、次のクラスも相当楽しみなのですぐに気持ちを切り替えることが出来た。
なんて言ったって次の僕のクラスはさやちゃんと同じなのだ。やっぱりさやちゃんはめちゃくちゃ告白されるんだろうなぁ。
彼女はこの学校内で1、2を争う美少女だ。でも、僕はそんな子のことを好きになってしまったのだ。
僕なんかがどれだけ努力しても手の届かない高嶺の花である事は分かってる。それでも、どうしても、どうしても好きだった。
簡単に諦められる程度の「好き」なら5年前のあの日にすっかり諦められただろう。
────だから、こんなにも痛いし苦しい。
『もうとっくに沙耶ちゃんは僕のことなんて忘れてる。』
『さやちゃんには新しい別の好きな人がいる。』
『僕なんかが釣り合うわけ無いだろ。』
なんて事を考えると胸が締め付けられる。この不安を否定出来る根拠なんて、どこにも無いのだ。
『5年間』とは、それくらいの時間である。
普通なら記憶の奥底に掠れて消えかけているものだ。
普通なら新しい記憶に目を向けるものだ。
実際に誰と付き合おうがさやちゃんの勝手ではあるが、僕は一時も彼女のことを忘れずに想い続けてきた。
僕はきっと、さやちゃんに彼氏が出来たら、それは、もう。
傷つくだろう。 悔しいだろう。
悲しいだろう。 苦しいだろう。
だが、これは僕のエゴであり、わがままだ。
だから僕は彼女に素敵な彼氏が出来たならば、素直に祝福しようと決めている。
『おめでとう、幸せになってね。』と
さやちゃんにとって僕とは、きっともう、ただの他人だから。
おっと、涙が出てきた。これだから僕は弱いんだ。
もっと修行をしないと。今日は思いっきり自分に厳しくしよう。
「おーい、さっさとマッカいくぞー! ……え?なんかあったか?」
「ん? いや、何にも無いよ。ちょっと修行しようと思っただけ。ほら、行こうか」
「……ふーん。修行ってそんなキツイんだな。あ!
告白の話なんだけどさ!」
「はいはい、それはマッカで聞くから」
ゆーたんは頭でハテナを浮かべていたが、パッと切り替えて目をキラキラさせた。
僕も気持ちを切り替えよう。今から長い長い恋愛相談会が始まるのだ。
僕は先程までの感情を心の奥の奥に閉まって、
彼と笑いあうのであった。
ゆーたんはバカっぽいけど実は幸人よりずっと賢いです。
きっとマッカにて何とかしてくれるはずです。
(成績は下の上だが。)