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2話『クラス発表』

 凍える冬を越し、仄かに暖かくなった季節。風は爽やかに頬を撫で、小鳥のさえずりが楽しげに響く。高校生活は一年を終え、僕は二年生という立場となった。


 すっかり高校生活にも慣れ、自分の生活リズムも整ったものだ。新しいクラスも穏やかに過ごせるといいなぁ。と切に考えていると、激しい足音と共に見慣れた顔が寄ってきた。



「おーい幸人っ! おはようさんっ!」



「はい、おはようさん。いつも通り朝から元気だねー。ゆーたんとクラス離れるの、寂しいなぁ」



「そんなこと言うなって……! 俺こそ寂しくなってきたじゃんかよ……!」



 朝から表情の変化が激しいこの子はゆーたんこと片桐(かたぎり)裕太(ゆうた)だ。


 彼はその持ち前の明るさで、初対面の誰とでも話せるしすぐに仲良くなれる。

 が、何故か僕とはより仲良くしてくれている。何やら「波長が合う」とか言ってたけど、僕も一緒にいて落ち着くので気が合うのかな? と思っている。



「ゆーたんは明るいから新しいクラスでもすぐに友達できるよ」



「幸人こそ持ち前のゆるさですぐに打ち解けそうだけどな」



 なんてお互いに気持ち悪く照れていると、パッと気づいたようにゆーたんがニヤニヤしだした。



「今年こそは天野さんと同じクラスになったらいいな、ユ、キ、ト、君?」



「……む、そっちこそ佐倉さんと同じクラスになったらいいね、ゆ、う、た、君?」



 彼は僕がさやちゃんのことが好きであることを知っている。し、僕も彼が佐倉さんのことが好きであることを知っている。少しドキッとしたが、こちらもおどけて言い返してやった。


 さやちゃんと同じクラスか……想像するだけでも恐ろしい。話しかけようものなら四方八方から男子の殺意の篭った視線を浴びせられる事だろう。


 って、こんな事気にする時点で僕はまだまだ努力が足りないな。修行だ、修行。



「俺さ、真面目に実咲と同じクラスになったら告白するわ」



「……マジですか?」



 先程までのニヤニヤ顔が突如キリッとした顔に切り替わってこんなことを言い出した。


 ゆーたんは確かに佐倉さんの事が好きだ。ずっとアプローチをかけているし、その分仲も良さげだ。SNSでもよく話していると聞く。流石だ。


 僕は、もし、さやちゃんと同じクラスになったらどうするだろう。告白するのかな。


 ……いや、しないだろうな。まだまだ足りない。僕が告白するのは、もっと強くなってからだ。



「応援してるよ、ゆーたんなら絶対成功するよ!」



「お前……ほんといい奴だよな。よし! 今日はマッカで恋愛相談会だ! 俺の奢りだから付き合え!」



「……まだクラス発表されてないよ?」



 僕は苦笑いをして見せたが、彼は相当やる気であった。僕は帰宅部なので放課後の時間は有り余っているが、筋トレや勉強の時間は確保したいものである。


 マッカは中高生に大人気のファストフード店で、よく僕もゆーたんと利用する。しかし帰宅後の罪悪感が凄く、筋トレメニューは倍にすると決めている。



「っと、そろそろ体育館いくか。ほら、急ぐぞ」



「はーい、クラス替え、楽しみだね!」



 と、ゆーたんと話していると結構よろしい時間になっていたので、体育館の全体集会へと急いだ。


 体育館ではざわざわ……と生徒たちの新クラスへの期待や不安、また始まってしまう学校生活への愚痴などが飛び交っていた。みんな新しい生活への期待や興奮を抑えられていないようだ。


 かくいう僕も正直ドキドキしているし、新クラスへの不安を隠しきれない。ゆーたんは大丈夫と言ってくれたが、やはり緊張するものだ。


 ……精神面は修行が足りないな。もっと努力しないと。


 『静かにしなさい!』と、教頭先生の声が響く。生徒はまだ少しざわざわしながらも教頭先生の話に耳を傾けた。


 それから校長先生の長い話も終え、ついに新クラス発表の時間がやってきた。二年生の新クラスの表が体育館の側面に張り出された。生徒たちは次々に立ち上がり、壁へと歩き出した。


 皆押し合って自分の名前を探す。興奮はMAXだった。僕は押し合うとかは苦手だったので後ろの方から辛うじて自分の名前をゆっくりと探していた。



「おーいっ! 幸人ー! 今年も同じクラスだったぞー!」



「ほんとに!? やった! 今年も宜しくね!」



 最前線で揉み合っていたゆーたんの声と僕の声が響いた。新しい僕のクラスは二組のようだった。他に友達は居ないかな、と二組のメンバーを見ようとすると……。



 すぐ隣にずっと追いかけていた、横に並ぼうと夢見ていた人が居た。あまりに美しい横顔に見惚れてしまう。視線に気づいたのか、彼女も振り向き、目が合う。



「……え?」 「……あ」



 2人の声が重なる。あぁ、もう。何故か僕は心で悪態をついた。きょとんとして目をまん丸にした彼女はやはり残酷なまでに綺麗だったからだ。久しぶりにこんなに近くで見たかも知れない。彼女はかなり驚いていたが、少し嬉しそうで頬を赤らめていた。



 ……きっと嬉しそうに見えたのは僕の希望的観測だろうけど、やっぱり……可愛い。


 あぁ、やっぱり努力が足りないな。と思った。今日はこのことを思い出して筋トレ倍にしよう。今ならなんだってできる気がする。



「うおおおお幸人! やばい、キタ! キター!」



 と、騒がしい友人の声が聞こえたので彼女から顔を離し、彼の方に向かう。きっと佐倉さんも同じクラスなのだろう。


 彼はとても嬉しそうな様子だった。って、そうなるとゆーたん告白するのかな。あれ冗談じゃなくなっちゃったぞ。え。振られたらなんて慰めよう……?


って、失礼極まりないな。なんて想像はさておき、僕も報告しないと。



「なんか言いづらいんだけど、僕もキちゃったみたい」


それを聞くと、彼は更にうおおお!と燃え上がった。


「よしっ! 今日はマッカに集合で確定だな。異論は無いな?」


「へいへい、仰せのままに。今日はまた一段と長くなりそうだなぁ」



 やれやれとを肩を上げてみせた。もちろん、燃え上がってるのはゆーたんだけじゃ無い。僕もだ。



 これから始まる新しい生活に胸の高鳴りを抑えられなかった。




さやちゃんのターンも書こうと思ってます。

マッカは正式名称はマクカナルカです。

マクカ派の僕は言いにくくなりました。はい。

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