1話『2人のすれ違い』
初作品です。
ご意見等お願い致します…!
僕は弱い。弱いというのは腕っぷしや身体能力のことはもちろんのこと、学力面でもそうだ。成績は中の下だし、精神面でも、度胸はないしいつもオドオドとしている。情けない。
こんなだから僕は……
……彼女に悪く言われてしまうのだ
……彼女を怒らせてしまうのだ
……彼女に呆れられてしまうのだ
だから、僕は変わる。努力して、努力して、努力して、彼女に相応しい、悪く言われないような人になるのだ。
努力は人には見せないものだ。人に見せびらかす努力など自己満足に過ぎないし、何より自分の為にならない。
そして驕らないことが大切だ。自分を未熟者として認め、自分に不足しているものをひたすら磨く。
だから自分で自分を認めるまで彼女とは距離を置く。途中で諦めてしまうのは一番最悪だから。
ひたすら自分を磨く。彼女に悪く言われないために。彼女に相応しい自分になるために……!
────そう決心して、5年が経った。
今は高校2年生。僕は……変わらなかった。
肉体的には筋肉はほどほどについてきたし、身長もあの頃に比べると随分と伸びただろう。
また、学力面ではなんとか彼女と同じ高校に滑り込み、その中でも上位20位の中には必ず名を残している。まぁ、彼女はいつもトップ3には入っているが。
僕は、それでも弱かった。彼女の横に立つには、まだまだ足りない。……全然足りなかった。
彼女は高校生になると、その美貌は輝きを増していた。スタイルは抜群で、顔は小さく、反比例して目がくりくりと大きくて、肌は透き通るような白さであった。笑顔が太陽のように輝いており、思わず見とれてしまう。
そんな彼女の笑顔に当てられた男は、もれなく死ぬ。彼女はなんとも思ってないみたいだが、あれは凶器……いや、恐らく核兵器に等しい威力を持っているのだ。
彼女と同じクラスの男子はいつもそわそわしているし、高校一年目にして、既に20回以上告白されてると聞く。
何故かまだ誰とも付き合って居ないが、告白者の中にはイケメンで運動神経バツグンの明るい先輩や、成績優秀の清純系イケメン委員長もいて、全滅だと言う。
……こんな僕なんかでは歯が立たない。告白でもしようものなら恐らく、申し訳無さそうな顔で
「どちら様ですか? とりあえず整形して顔全部入れ替えて宝くじで七億円くらい当ててから出直して下さい」と、言われる事だろう。うん。
まだまだ、努力が足りない。だから、まだまだ彼女とは話せない。もっと努力して、強くなって、胸を張って彼女の側に立てるまでは。
高校生として彼女と一緒に過ごせるのも、あと2年しかないのだ。急がなければ。
★
────あいつは変わってしまった。いや、私が変えてしまった。小学五年生? だったかな。今となっては懐かしい話だけど、ずっとこんなことを引きずっている私も私だ。
私は言ってしまえばなんでも出来る子だった。
初めてやる事でも、少し努力さえすればすぐに完璧にこなす事ができた。容姿も周りより優れていたらしく、大人達や友達にチヤホヤされてるのは子供ながらに嬉しかった。
しかし、それは私に謎のプライドを与えてしまうだけだった。『私は周りより優れている』という自意識は、無意識に周りを傷つけた。
だんだんと口調は悪くなり、私は正しいことを言っている。と相手の心のことを何も考えていない言葉をどんどん吐いた。気づくと相手は泣いていた。
……そんな私はどんどん嫌われていった。
私はついに1人になった。ひとりぼっちというものは子どもには恐ろしいもので。そうして私はさみしくって公園で泣きじゃくっていた。
そんな時だった。あいつが私の前に現れたのは。
幼馴染みのあいつは私の口調には何も触れなかった。私は何度も酷いことを言っただろう。何度も傷つけただろう。でもあいつは絶対に私の側から離れなかった。
私は、あいつだけが心の支えになっていた。
しかし、私の馬鹿な言葉をきっかけにあいつは突然私から離れていった。全部私のせい。私が悪い。自分勝手に、言いたい事もなにも言えなかった癖に、自分を取り繕って素直になれなかった。
そうして、最後の味方まで失った私はとうとうひとりになった。
それから私は、あいつという大きな穴を埋めるために相手を傷つけない言葉遣いを学んだ。すると、友達はあっという間に出来ていった。こんな簡単なこともできなかったのか。と、私は私を恥じた。
その後は友達もどんどん増え、友達と楽しい学校生活を送った。
しかし、あいつとは話すことは出来なかった。素直に謝れない自分が恨めしかった。そのまま一度も話せないまま、小学校も、中学校も卒業した。
……私は、あいつに避けられていた。
仕方ないだろう。あんな酷い事を言ったのだ。私なら学校を辞めているかも知れない。思い出すだけで死にたくなる。一度で良いから会って謝りたかった。
だから、あいつと高校が同じと聞いたときはかなり驚いた。というか、『何で?』と疑問に思った。何故ならあいつは私の事を嫌っている。ずっと避けていたのだ。
でも、これはチャンスだと思った。また、あいつと話せるかも知れない。また、あいつと一緒に過ごせるかも知れない。
……また、あいつと付き合えるかも知れない。なんて。
素直になれ、私。これは最後のチャンスだ。ここで話せなかったら、二度と喋れないかも知れない。二度と謝れないかも知れない。なんて考えていると、胸がきゅううと締め付けられて、涙が出てきた。
素直になる事ができない自分が嫌いだった。何でもできる癖に、こんな簡単なことが出来ない自分が嫌だった。
高校生になったあいつは、一丁前にかっこよくなっていた。身体は引き締まっていて、頭も昔馬鹿にしていたようなレベルからは大きく成長していた。
同級生の友達からも好感度は高く、少しだけモテていた。……少しだけ嫌な気持ちになったのは秘密だ。
私は避けられているせいであまり知らないが、あいつは性格も温厚で優しく、例えるなら、超・人畜無害なカピバラのようらしい。変わってないなぁ全く。
それでも意外と頼りになるらしく、『情けない』なんて罵っていた過去から見違えるものだ。本当に、なんであんな事を言ったのだろう。昔も一人ぼっちの私の側にいてくれて、優しく支えてくれたくせに。
同級生の女の子と落ち着いて笑っているあいつを見ると、また胸がきゅううと締め付けられた。私も、ああして話したかった。笑い合いたかった。
あいつのかわいいコロコロとした笑顔を近くで見たかった。でも、私は動けなかった。
そうして、チャンスだなんて考えていた私の高校生活は、一年を終えた。
勇気を出せ、私。このままじゃあ、絶対に後悔する。
彼に、もう一度話しかけるんだ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。読みづらいと思った方、誤字、訂正等、報告お願い致します。
まだまだ拙い文ですが、全力で頑張って参ります!どうか、応援宜しくお願いします!