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第1話 転生―そして何時もの朝

 「―――これで最後だ、英知の魔王グラモス!」

 「勇者よ・・・我を倒して何を望むのだ?」

 「俺は・・・失った最愛の人と仲間の為に平和を取り戻したいんだ!!」

 「我を倒しても失った者は返ってこぬ。」

 「五月蠅い、黙れ!お前達さえいなければ失わずに済んだのだ!!」

 勇者はそう言い放つと「悪いのは俺じゃない、魔王達だ・・・」とうわ言のように繰り返し呟きながら、グラモスの心臓を聖剣で一突きにした。

聖剣は心臓を貫き、剣からは大量の血がしたたり落ちる。

 「・・・これで気が済んだか、勇者よ。」

 グラモスがそう話しかけても勇者はうわ言を言い続けていた。

 「我を倒しても、この世界は平和にならぬ・・・この世界をこのようにしたのはお前をここまで導いた者達であろう・・・。」

 頭の中を走馬灯のように今までの記憶が走り廻る。

 『我もこれで最後か・・・。こうなるのであれば、仲間達と会いたかった。』

 風、地、火、水、時空、そして、創世の魔王達との思い出が駆け巡る。

 「・・・もう終わりなのか・・・。」

 勇者に聞こえないほどの小声でそう呟くと、最後の力を振り絞って魔王は勇者に問いかけた。

 「・・・勇者よ、自分の目で見、自分の耳で聞き、自分の感覚でこれから起きる事を身をもって経験し考えるがいい・・・。」

 そう最後の言葉を投げかけ、魔王は残った最後の力を振り絞り、自らの残った魔力と周囲にある魔素を集めて魔力を集め巨大魔法の発動を可能とするリングを2本作り、左の腕に気がつかれないように装着した。

装着した腕輪が光り輝き、グラモスの身体を光の中へ消しさった。


 最後の魔王であった英知の魔王グラモスを倒した勇者は呆然と立ちすくんでいた。

魔王が残した最後の言葉の意味を考えながら―――。


   ◇◆◇◆◇◆


 栃木県宇都宮市のある住宅街―――

 12歳になる一人の少年が、目を覚ました。

 『この世界に転生して12年か。月日の流れは速いものだのう。』

 ぼんやりとした頭を覚ますかのように日課になった魔力の確認を行う。

 『ファイヤ』

 そう念じると指の先に小さな炎が灯る。

 『うむ、この世界には魔力の元となる魔素はないのだが問題なく使えるようだな。』

 この世界での彼の名前は『三咲恵一』―――彼の正体は最後の力を振り絞り、魔力の媒介となるリングを作り出し、生き残りの道を選んで転生をした『英知の魔王』であった。

 左の腕をみると転生前に作った腕輪がついている。その腕輪は、その役目を終えているようで光を失い、ただの白い腕輪となっていた。

 『いかんいかん、朝は忙しいのじゃった。着替えてリビングへ行かぬと。』

 着替えを済ませ、顔を洗い、リビングへ向かった。そこにはこの世界での彼の家族と言われる人達が待っていた。

 「「おはよう、恵一」」

 「おはようございます、お父さん、お母さん」

 この世界でいう彼の両親が声をかけてきた。父親と言われる存在の人はテーブルに腰をかけ新聞を読んでいて、母親と言われる存在の人はキッチンで朝ご飯の準備をしていた。

 「恵一は何時も決まった時間に起きてくるわね。それに比べて穂乃果は・・・」

 穂乃果・・・9歳になる少女。のんびり屋でお菓子が大好きな甘えん坊。英知の魔王として君臨していた頃、妹分のように接していた魔王の一人を思い出すような言動が多く、彼にとっては可愛い存在の妹である。


 ドタドタドタ・・・

 階段を駆け下りてくる音が聞こえる。

 

 「おはよー。お兄ちゃん」

 元気よく穂乃果が部屋に飛び込んできた。

 「あ、お母さん、お父さん、おはよー!」

 

 何時もと変わらぬ朝、何時もと変わらぬ一日の始まり―――。

お読みいただきありがとうございます。

次話の投稿は7/22 23時頃を予定しております。

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