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第四部 眠りの日

「…以下43名の有罪を宣告する。」

結局、その街の公職者を始めとした魔女狩りに関わった人物は、火炎放射器や可燃油、文章などの証拠が挙がり、裁きにかけられた。私も裁判所に呼ばれ、初めは殺人罪に問われるのかと思いきや、隠蔽のための妨害工作の証人として呼ばれただけであった。

「………」

しかしながら、今日の仕事を全てキャンセルする羽目になったため、いい結果とは言えなかった。クタクタになり、家へと帰った。

『ガチャッ』

少魔女の棺を開け放ち、月明かりに当ててやる。

「ううん…は!」

「………おはよ……」

「どれだけ眠っていました?私…」

「………一週間………と数日…」

少魔女に事態の始終を伝える。どうやらこの子は、在政権を握る家系の一人娘らしく、街令で魔女にされた後、何かしらの濡れ衣で処刑されると言う算段だったらしい。

「………」

10年前では考えもされなかった“魔女狩り”。ガウンの私利的利用…

「あの、ありがとうございます。また此処に来て見ますね。」

「……気をつけて……。」

少魔女を見送る。…かなり疲れた…しばらく休暇を貰おうか…。私は自分に素直に、ベッドルームに向かう。カーテンを開けて部屋を月明かりで満たし、目は閉じる。

『ガサガサ…ガチャンッ!』

不穏な物音で目を覚ます。私は一人暮らしだし、こんな夜中に尋ねてくるような友達を持った覚えは無いし、伴侶と出会った覚えもない。泥棒かな…?

「…………」

居間の方から、何かを物色する音が聞こえてくる。盗られて困るような物は、せいぜい小切手くらいだが、一応確認しに行く。物音からして複数人か。食べ物目当てなら見逃してや……

「……?」

そこにいたのは泥棒では無く、ガウンの捜査員であった。

「これは………?」

「ドムキス=ナルイア、君に魔女の臓器の密売の疑いがかけられている。私はその捜査を、令状に基づき捜査している。」

「……」

なんだ、そういう事か。」

「君の身体の秘密も、既に上層では認識済みだ。」

「………えっち………」

「違う!君の身体のい大部分が、にっこりさんによるオーバーテクノロジーの産物である事は分かっている。それが延命の為にせよ、相当な費用が必要な筈だ。まさかこの国ににっこりさんが住んでいる訳でも無いだろうし…」

痛く無い腹を探られる…。言葉としては間違っているが、こういう事を言うのだろうか?

「………(くかあ)……」

思わずあくびが出てしまう…。こんな夜中だし…。

「明日でも………」

「構わないが、もし疑わしき物が一つでもあれば。」

最後まで聞く前に、私は再び床に着く。

「………」

再び目を覚ましたのは翌朝だった。

「………」

この人達、まだいたんだ。

「そっちを探せ!床下は見たか!」

「………」

せっかくの家が荒らされ放題だ。仕方ない。

「………付いて来て下さい……」

私は、キッチンの方に刑事と思しき人物を連れてくる。食器棚をずらし、後ろの扉を表す。

『ピ…ピー。認証確認。ロックを解除します。』

ドアが開き、地下へと続く古びた階段が現れる。鉄製の手すりは錆つき、壁も著しく劣化しているが、刑事は物珍しそうにしている。天井にいくつか吊るされた豆電球をつけると、ゆっくりと階段を降りて行った。

「これは!」

「静かに……。」

天井から吊るされた鉄製の十字架に、今まで捕まえ魔女の殆どが金具で貼り付けられていた。

「死んでいるのか?」

「いいえ……生きてる……眠っているだけ……」

時々、あちらこちらの魔女達の手足がピクリと動くが、目醒める傾向は見られない。

「斬撃の魔女、愚弄の魔女、獣王の魔女…一体何人が此処に…」

「35人………昔はもっと……」

眠れる魔女の回廊を歩きながら、久し振りに見て回る。

「いくらでも……調べてどうぞ……」

刑事は歩き回り、数々の魔女の記録をとる。

「…君が担当した魔女の数と合わないが。」

「……それは……」

『ガシャン!』

と、第二通路から金具の外れる音が聞こえる。

「……!」

急ぎ足でそちらに行ってみる。劣化か、はたまた…

「うう…」

地面に、かつて捕まえた魔女の一人が倒れ込んでいた。

「貴様は、魔鉄の魔女!」

「(スッ)」

私は刑事を制止させると、魔女の方に歩み寄る。

「お帰り……」

「あ…貴方は…!」

「早く……通路はあっち……あとは……」

「はい!」

魔女は急いで駆けていく。私はそれを見送る。

「良いのか!?逃げてしまうぞ!」

「……うん……」

私は、魔女を解き放った後の十字架を片付ける。

「これはどう言う事だ?」

「彼女達は…夢を見る…欲望を…満たす夢…もし…悟れたなら……目醒める……でないなら……生き絶える…それだけ……」

私は、にっこりさんから渡されたこの部屋の説明書を刑事に見せる。

“十字架の拘束は、身じろぎ一つでもすれば簡単に外れる仕組みだ。彼女達は、夢の中で道を告げられる。ここから繋がる隠し通路には、軽い空間技術が使われており、そこから2度目のチャンスを掴む場所に行ける。人里離れた場所か、はたまた自身の事を知らない遠い遠い国か、それは僕にも分からないし、知ろうとも思わない。”

「貴方は……あの子達を……追わないで……お願い……」

「……」

刑事は黙って地下室を出ると、他の捜査員達に告げる。

「疑いは晴れた。本部に、不正は無しと報告しろ!」

「ですが…」

「分かったか!」

「はい!」

捜査員達は撤収する。刑事は最後に、軽く会釈をした。

「………」

さてと、片付けを始めなければ…




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