第3話 逢瀬
今回は話の都合上、めちゃくちゃ短いです。
もっとうまく書けるようになりたい・・・。
空港を出るとすぐにタクシーを拾い、父さんのいる病院へと向かう。
一生に一度は行ってみたいと思っていたドイツの街並みも、今の俺の前では過ぎ去っていくただの風景でしかない。
音羽は、空は、皆は無事なのか。それだけが頭の中でぐるぐると駆け回る。
心配をしていてもしょうがないことは百も承知だが、考えないようにすればするほど不安になっていく。
30分ほどタクシーで移動をすると、父さんのいる病院が見えてきた。
病院の玄関口で下ろしてもらい、受付で面会の予約をした。
『北原です。C病棟の311号室の日比野さんと面会がしたいのですが・・・。』
『北原様ですね。少々お待ちください。』
母ちゃんが受付の人と何やらドイツ語でしゃべっている。
受付の人が扉の向こう側へ下がっていたのに合わせて母ちゃんも俺の隣まで下がってくる。
「母ちゃんドイツ語話せるのか。すげえな。」
「ばかね。確かにお父さんの影響でちょっとだけ話せるけど99%ゴーグル翻訳よ。最近は便利なのね。まるでほんやくこ〇にゃくじゃない。」
そんなことを言っていると向こうから受付の人と一緒にちょっと偉そうな感じのおじさんが出てきた。
『北原様ですね。お話は伺っております。こちらです。』
偉そうな感じの人はカウンターから出てくると俺たちを率いて歩いていく。
「なあ母ちゃんこの人なんて言ってんの?」
「知るわけないじゃない。多分ついてこいとかその辺でしょ。」
母ちゃんはすたすたとおじさんの後をついていく。俺もそれに習って後をついていく。しかし、こんな事故ってすぐなのに面会なんてできるのか。
っていうか普通面会って病院の人が先導してくれるものか?
おじさんは先導しつつどこかへ電話をかけているようだ。
いや、あれはPHSとかいうやつか?
だとしたら病院の関係者に電話をかけているのか?
考え事をしながらしばらく歩いていると、目的の病室へと到着した。
いつの間にか電話を終えていたおじさんが扉を数度ノックする。
『北原先生の奥さんと息子さんがいらっしゃいました。』
『入れ。』
おじさんの言葉の後に扉の向こうから男性の声がした。
それは聞き覚えのある声だった。
おじさんが俺たちに入るように手で促す。
それに従って俺たちは扉を開けて病室に入った。
「早かったな。睦美、拓人。」
そこにいたのは、俺の父親にして、天才脳外科医として世界に名をとどろかせる名医。
北原 拓司である。
俺と同じ黒髪と、やや外国人寄りの彫の深い顔。
俺よりも高い身長から、日本人に見られないことともよくあるらしい。
「早かったじゃねえよ! 急にドイツまで呼び出してなんなんだよ! 音羽達を手術したって本当か!? 音羽たちは無事なのか!?」
「睦美はまだ説明をしていないのか。まあ説明するよりも見た方が速いだろう。来い、丁度目を覚ましたところだ。」
そういって父ちゃんはカーテンを開く。
その向こうにはベッドの中で眠そうにしながらも目をうっすらと開けている音羽の姿があった。
「音羽・・・・!」
俺は興奮のあまり父ちゃんを押しのけて音羽のもとまで駆け寄る。
手には点滴のコードが取り付けられており、頭にはネットの帽子をかぶっている。
色々なところにガーゼがしてあり、痛々しいが、あまり大きな傷はないようだ。
「音羽! 心配したぞ! お前が飛行機事故にあったって聞いてびっくりして・・・! 無事みたいだな。 空やお前のお母さんとお父さんはどこだ?」
音羽の姿を見て安心しきった俺は矢継ぎ早に言葉を重ねる。
音羽は未だぼんやりとした目を俺の方へ向けて、ゆっくりと口を動かした。
「・・・たくと・・・?」
「音・・・。」
いや、違う。
ここにいるのは音羽じゃない。
「・・・・・空?」