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colors  作者: 病院が来いの人
10/11

第10話 楽器はどれが良いだろう

お久しぶりです。

ただのオ〇ニー小説なので気軽にどうぞ。

 今日からはオケ部に正式に新入部員が入る日だ。

 事前に入部届を顧問まで提出してある1年生総勢20人と、あの演奏会の日司会をしていた、部長の野田百合子先輩が集まっていた。


「皆さん、ようこそ響蘭高校管弦楽団へ! 部長の野田です。今年も例にもれず初心者から経験者まで沢山の1年生が入ってくれて本当に嬉しいです! みんなで最高の音楽を作り上げていきましょう!」


 部長のあいさつの後簡単な部活に対する説明が入る。

 細かいことは追々ということらしいが、基本的に合奏が週1回水曜日にあるだけで、その他は個人練習やパート練習を各々で組むようだ。

 合奏練習には外部から指揮者を呼ぶらしく、週一が限界らしい。

 それ以外では定期的に『トレーナー』と呼ばれる指揮者補佐のような人達が前で支持を出しながら合奏練習を自分たちだけですることもあるようだ。

 そんな説明が終わると、遂に1年生の楽器を決めることになる。


「うちでは、基本的にやりたい楽器をやってもらう形を取っています。基本的には経験者はそのまま、初心者は楽器体験をしながら自分に合った楽器を探してください。もちろん人数が足りないパートが出ることがあるので、そのパートをお勧めはしますが、強制でやらせることはありませんので、参考として聞いてもらえばと思います。また、人数が多すぎるパートはオーディションを行うこともあるので気を付けてください。やりたい楽器が決まったらこの紙に書いて私まで提出してください。」


 部長の説明と共に紙が配られ、1年生はこれで解散となった。

 数人そのまま帰宅する1年生も見られたが、ほとんどはそのまま練習に参加するか楽器体験に向かった。

 俺は近くに座っていた空に話しかける。


「お前どうすんの? やっぱりバイオリン?」


「それ以外何があるというのかしら付き人さん? 日比野音羽は今日既に私のリハビリレッスンを受けることになっているんですのよ。あなたはさっさとどっかに行きなさい。」


 突如出てきたユーリアが、ちょっとまってと抵抗する空の右腕を掴んで音楽室を出て行った。

 おそらくバイオリンが練習している部屋へ向かったのだろう。

 一人残された俺はおとなしく楽器を見て回ることにした。

 その時、後ろから肩をポンと叩かれた。


「なあ、お前今から楽器体験行くのか?」


 振り向くと、そこには頭が茶色を通り過ぎて最早赤に近い色をした、細身の男がさわやかな笑顔で立っていた。


「俺は神田(かんだ) 悠介(ゆうすけ)。同じ新入部員だよ。よろしくな! お前今から楽器体験行くんだろ? 俺も付いて行って良いか?」


 そう言うと神田は右手を差し出してきた。

 今日日初対面で握手を求める人間が存在したことに驚きつつも、一人で回ることにならなさそうで安心した。


「こっちこそ願ったり叶ったりだ。俺は北原拓人。拓人と呼んでくれ。よろしく。」


「じゃあ俺も悠介で。よろしくー!」


 握手をして早速楽器体験に出かける。


「なあなあ、拓人はなんでこのオケ入ったんだ?」


 人懐っこい笑みで話しかけてくる悠介。

 人見知りしない性格なのだろう。

 明るく気さくな感じでとても話しやすい。


「俺はなんだ、友達の付き添い?で無理やりって感じだよ。まあ、もともとピアノやってたし、なんか楽器やってみたいなって思ってたから丁度良かったってのもあるけどな。そういう悠介はどうなんだ?」


「拓人お前ピアノ弾けるのか! 今度聞かせてくれよ!」


「分かったから、お前はどうなの。」


「んー、俺もまあ楽器やってたしその流れでかなー。」


「そうなのか。何やってたんだ?」


「内緒!」


 そんな内緒にする意味もないだろうに、ニシシと笑って見せる悠介。

 そうしていると最初に着いたところはバイオリンの練習部屋だった。


「拓人はバイオリンしたいのか?」


「まあ、今一番興味はあるかな?」


「ふーん、あ、日比野さんじゃん! バイオリン超上手なんだろ? めちゃくちゃ可愛いし、これだけでもバイオリンパートに入りたくなるよなー! どうせお前も日比野さん目当てだろ? 今年の新入部員の男子ほとんど日比野さん狙いだから倍率たっけえぞー!」


「お前な・・・。」


 目をハートにしながらそんなことを宣う悠介。

 その視線の先にはユーリアの指導を受けながら四苦八苦する空がいた。

 他の男子部員もチラチラと空の方を覗き見しており、イラッとしながら教室に入り、声を出して人を呼ぶ。


「すみませーん、1年生ですが、楽器体験させてくださーい!」


「あ、はいはーい、ちょっと待ってねー!」


 近くで一年生用にだろうか、いくつか楽器を準備していた先輩が対応してくれた。

 先輩に教えてもらいながら楽器を構える。


「そうそう、左手の手首は返さないようにして、右手はこんな感じで・・・」


「拓人、俺、肩が攣りそう・・・・!」


 悠介は体がおかしな方向に捻じれており、まともに構えられていない。

 俺もなかなか構えるだけで難しく、苦労したが、なんとか形にはなった。


「そうそう! それで弓を弦に当てて右腕を引くと・・・」


「おー音が鳴った!」


 悠介がぱちぱちと称賛の拍手を送る。

 彼はすでに諦めて楽器を置いていた。

 俺はというと、初めて出したバイオリンの音に興奮しながらもどこか違和感を覚えた。


(なんか・・・・なんだろこのコレジャナイ感・・・)


「バイオリンは他のパートに比べて沢山人数が必要だから、是非入ってほしいな!」


 先輩が屈託のない笑顔で俺たちに勧めてくる。

 それに悠介が首をかしげながら訪ねる。


「バイオリンって人数が必要なんスか?」


「そっか、知らない子もいるよね。オーケストラでは弦楽器はパートが上からバイオリン1st、バイオリン2nd、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、の5パートに分かれてて、それぞれに曲によって人数は変わるけど、だいたいバイオリン1st2nd合わせたら20人くらい必要かな?」


「げ! そんなに必要なんですか!」


「そうそう。ウチも足りない時は学外から応援呼んだりするくらいには困っててねー・・・。」


 そうなのか。

 よくプロオケは入るのに厳しいテストがある、と聞くけどアマチュアだとそんな事情もあるのか・・・。


「だから、入ってくれると嬉しいな!」


「・・・考えときます。」


「あれ、拓人やんねえの?」


「もう少し見てからにするよ。」


「そっか・・・・。またいつでも遊びに来てね!」


 しょんぼりしながらも先輩は快く俺たちを送り出してくれた。

 その後、弦楽器はコントラバス、チェロと回り、管楽器ゾーンに来た。

 しかし、


「フルートはオーディションあるってさ。」


 そう、悠介が見つけたのはフルートパートの練習場に貼ってあった張り紙であった。

 フルートと言えば女子ならだれもが憧れる楽器。

 その人口はピアノに次いで多いとか。


「まあそうだろうな。というか管楽器は結構足りてるみたいだな。」


 そう、大体吹奏楽の方が主流であることや、オケでは管楽器は然程人数が必要でないことが合わさり、人数が一杯であることが多いようだ。


「・・・・だよな。」


「?」


 さっきまでとは打って変わって、沈んだような表情を見せる悠介。

 フルートがしたかったんだろうか?

 しかし、初心者でオーディションはなかなか難しいんじゃないだろうか・・・。


「悠介、お前・・・・


「よし、弦楽器の方戻ろうぜ! もう一回試してみよう!」


 空元気を見せる悠介。

 振り返り、来た道を戻ろうとしたその時、


「おーい! 君たち!」


 遠くの教室から誰かが俺たちを呼んでいた。

 藁をもすがる思いでそこへ向かう。


「行くぞ、悠介!」


「うわ! 待てって!」


 悠介の手を引いて呼ばれた教室へ入ると、そこは金色と銀色の世界だった。


「これは・・・。」


「ようこそ! トランペットパートへ!・・・・と言っても今は一人しかいないんだけどね。」


 そう言ってポリポリと頬を掻く先輩。


「は? 1人って・・・・どういうことですか!? 演奏会であんなに人がたくさんいたじゃないッスか!」


 と、そこへ噛みつかんばかりの勢いで飛びつく悠介。

 おそらく1週間前に見たあの演奏のことを言っているのだろう。

 そういえばトランペットは3人くらいいたような気が。

 先輩もびっくりしながら半身を逸らして答える。


「演奏会・・・? ああ、もしかして新入生歓迎演奏のことかな? 実はあれはOBの方をエキストラとして呼んでたんだよ。トランペットパートは僕一人でしかも僕も初心者から始めたから流石に一人じゃできなくってね・・・。」


 あはは、と言いながらまた頬をポリポリと掻く先輩。

 癖なんだろうか。

 しかし、急にどうしたんだろうと思って隣の悠介を見てみると、俯きながら何かを考えていた。

 そして、スッと顔を上げると、俺たちに向かって言った。


「俺、トランペットパート入ります。」


「え?」


「え!?」

2019/07/31 表現を修正。設定を修正。

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