三周目8月27日
合宿も5日目に突入した。
楽しい時間も終わりが近い。
先輩「お、梨本元気になったみたいだな!」
伊織「おはよう。もう痛みはない?」
おかげさまで。
僕は今日くらい休んでもいいと思ったんだけど・・
「1日休むことは1日無駄にするということ。その考えが成長を阻害するのよ。」
「とはいえ、休まなければならないときは休みなさい。無理すると選手生命が終わるわ。」
休む必要あるなしの境目はどうやって見分けるんですか?
「自己判断は絶対に偏った考えをしてしまうわ。専門家や医師の指示を第一とする。」
「ただ、他人は間違うのを避けるために休ませがちになるから。」
「十分準備した上で休まない選択するのもダメとは言わないわ。」
「他人の指示に従うだけで勝てる世界じゃないでしょ?」
確かに。
ただ・・僕元々陸上部じゃないんだよね。
どうなんだろう?
・・
・・・・
楽しい朝食。
このおいしい食事ともお別れが近いのか。
先生「みんなこの厳しい合宿によく耐えてきた!」
先生「そんなみんなに嬉しいご褒美がある!」
なにかな?わくわく。
先生「さらに厳しい特別訓練メニューを用意した!希望者全員特別大サービスだ!」
詐欺事件かな?どこが嬉しいんだろう。
先輩「いやったああああああああああああああああああ」
栞「楽しみ!!!」
優月「厳しくなかったら苦情入れるから。」
おや、アウェーの予感。
姫宮さんはまた僕の隣に座るようになった。
スポーツドリンクも受け取ってもらえた。
先生「だが去年は特別訓練メニューが優しすぎるという苦情が来てな・・そこで!さらに上の超特別訓練メニューも用意した!」
先生「自分の体をとことんいじめたいやつはついて来い!」
しーん。
あれ?みんなテンション下がった?
先輩「その苦情去年の先輩たちだ。あの領域にはちょっとついていけなかったな・・」
え?先輩ですら?
栞「特別訓練メニューは地獄だって聞いていたけど、その上ってどうなってるんだろう?」
優月「行くべきか・・いえでも・・」
そんなにやばいのか・・ごくり。
僕は・・天使様がどう言おうが絶対通常メニューで行く!
「ええ、特別訓練なんかしなくていいわよ。」
だから天使様がどう言おうが・・あれ?
いいんですか?
「身の程を知りなさい。あなたはまだ初心者の殻を破ろうとしているだけの雑魚よ。」
「特別訓練に挑む面々と同じ土俵に立てるレベルじゃないわ。」
あ、はい。ですよね。
天使様が意外とまともで助かった。
「自分のレベルよりちょっと上のレベルを目指すのが一番よ。」
「とはいえ通常メニューじゃ物足りないから・・私が指示してあげるわ。」
やったー(泣)
怖いぃ。
栞「超特別訓練どうしよっかなぁ。ねー梨本くんどうしたらいい?」
気になるならとりあえず参加してみて、無理そうなら普通の特別訓練に変えるとか?
栞「そうだね!一緒にがんばろう!」
いいいいや僕は通常メニューに行きますので。
栞「一緒が楽しいよ?」
それについては僕も同意見です。
優月「やめなさい。無理して怪我させたらどうするの?」
先輩「そうだな。まだ梨本に超特別は早いだろうな。」
栞「そっかぁ(´・ω・`)」
先輩「でも特別訓練なら行ってもいいんじゃないか?」
今回は通常メニューで。
優月「ちょっとがんばったと思ったら、もうバテた?」
栞「がんばろうよ。」
鮎川さんのいないところでがんばる気はさらさらないので。
ゆっくりやらせてもらうよ。
・・
・・・・
「いつものようにスポドリを保冷ボトルに入れておきなさい。」
はーい。
先生「じゃあ先生は超特別訓練の方を見るから。」
先生「特別訓練は部長よろしくな。」
伊織「はい。」
先生「通常メニューのやつらは・・好きにしてろ。」
楽そう♪
「このとき、梨本はまだ迫りくる地獄の特訓に気付かないのであった。」
不吉な予言ダメ絶対!
理世「(梨本くんと一緒だ・・)」
練習開始となり、のんびり走る。
フォームよし!体調よし!やる気よし!
走るの楽しい♪
「そろそろ超特別訓練のところへ行きなさい。」
んん?僕は通常メニューですよね?
「きつい子が超特別訓練でしょ?あっちは体を壊さないよう適宜休憩挟むから。」
「スポドリの差し入れしなさい♪」
超特別訓練って・・もっと標高上の方で走っているんですよね?
「ええそうよ。」
そこへ行くんですか?
「ええそうよ。」
走って?
「ええそうよ。」
ピシャン!
え?・・僕の背後に雷が落ちた?
「走るの遅いと雷が直撃するから。」
ちなみに直撃したらどうなります?
「死ぬ程度で済むわ(にっこり)」
わーい(号泣)
スポーツドリンク差し入れに行ってきまーす!!!!!
僕は軽く目に水をためながら山を駆け上がった。
死ぬっ死ぬっ。
雷くらわなくても足が死ぬ。
超辛いぃぃ。
ぃぃぃ・・
栞「あれ?梨本くんなんで?」
先輩「緊急事態か?」
先生「なんだなんだ?どうしたそんな汗びっしょりかいて。」
・・姫宮さんに・・スポーツドリンクを・・
そろそろ休憩かと思いまして・・
ぜーぜーはーはー。
栞「・・」
先輩「・・」
先生「・・」
優月「そのために来たの?」
はい。そのためだけに来ました。
栞「すごい!ちょうど休憩になったとこだよ!」
先輩「それもすごいが、わざわざここへ届けに来るのも驚きだ。」
先生「バカかお前は!」
優月「わざわざ来なくてもいいのに。」
僕の役目ですから。
優月「ならありがたくいただくわ。ご苦労様。」
先輩「帰るときはあまりスピード出すなよ。転げ落ちるから。」
栞「ちょっと休んでいく?」
鮎川さんと一緒に休憩だぁ♪
「すぐ下りなさい。まだ休むには早いわ。」
今時スポ根は合いませんよ!
とはいえ雷が怖いので下りることに。
「登りより下りの方が危険だから。早足程度にしなさい。」
はーい。
あ、ちょっと楽。疲れが癒えていくようだ・・
・・いや早足で疲れは癒えないよね!?
「体を酷使すると早足すらマシだと思えるのよねぇ。」
つまり僕がんばっているってことですね!
「・・」
なにか言ってください!
・・
・・・・
「もう一度スポドリを保冷ボトルへGO。」
了解です。
・・あれ、また上に登らないといけない?
「少し走ってからね。」
通常メニューってこんなにきつかったっけ?
とはいえ走る。走る。走る。
とにかく走る。
「スポドリ買って山登りの時間。」
もう買ってます。
「もう一本買いなさい。」
どういうことかわからないけど、2本のスポーツドリンクを持って山を登る。
目的地は超特別訓練地!
・・きっついです。
後ろ髪が天使様の雷でちょっと焦げながら、なんとか到達。
スポーツドリンク・・持ってきました。
「渡すのは一本ね。」
ありがたい。もう一本は僕用かな?
「NO」
NOOOOOOOOOOOOO!
優月「・・もしかしてまた登って来たの?」
YES
栞「来るだけでも大変じゃない?」
むっちゃきつい。
先輩「もしかして俺らよりがんばってんじゃないか?」
さあ。どうなんでしょう?
姫宮さんにスポーツドリンクを渡し、再び下りる。
「そこの影で休憩しなさい。」
やったー!
だらだら流れる汗をタオルで拭く。
うわぁタオルぐっしょり。
んー、疲れた体が癒されていく。
「はい、きつい子にスポドリ届けて。」
なんで?早くない?ああいちいち質問しちゃダメだったっけ。
僕は首をかしげながら山を登った。
というか全然下りていない場所で休憩してたからすぐ着いた。
先生「よーし、休憩しよっか!」
先輩「早くないですか?」
栞「まだ走れます!」
優月「・・梨本くんが来るタイミングをずらそうってことね。」
先輩「うわぁ。」
栞「大人気なーい。」
先生「しーらね。先生が休憩って言ったら休憩なんだよ。」
えっと・・休憩みたいなのでスポーツドリンクを・・
先生「ぶふぁ!?お前テレポートでもして来たのかよ!」
今回は山を下り切らないで休憩していました。
先輩「裏をかいたと思ったら裏をかかれたとはこのことか。すっげぇなぁ。」
栞「梨本くんすごーい!読み通りだね!」
優月「梨本くんってここまでできる子だっけ?」
姫宮さんが疑いの眼差しで見る。
天使様のおかげだし、疑われてもなんとも思わないや。
「終わったらとっとと下りなさい。」
はーい。
先生「ちょっと待て。」
はい?
下りようとした僕を先生が呼び止めた。
先生「足をだいぶ酷使しているな。下へ行ったら休憩しろ。」
は、はい。
先生って、時々真面目な顔になるよね。
・・
・・・・
えっと・・下へ来たけど・・
「休憩」
はい。
のんびり~、のんびり~。
休んでいる方が足痛い気がする。
理世「あの、お隣いいですか?」
どうぞ。
品川さんも休憩ですか?
理世「は、はい。」
品川さんはあまり話かけてこないから楽でいい。
今はただ・・休んでいたい。
・・練習時間もそろそろ終わりかな。
「じゃあスポドリ届けるだけの簡単なお仕事に戻って。」
はーい(泣)
明るい笑顔(仮面)でスポーツドリンク届けます!
ダッシュで山を登る。
先生「そろそろ戻るか。」
栞「あう~きつかったぁ。」
先輩「足が悲鳴あげてるな。」
優月「私・・もう動けない・・」
超特別訓練に参加した人たちはみんなぐったりしていた。
あ、姫宮さんスポーツドリンクです。
優月「・・どうも。あんた足大丈夫なの?」
はい。下で休みましたから。
栞「・・梨本くんって、ひとりで超超特別訓練やってたよね。」
先輩「なんか負けた気分だよ・・もしかして、これもジェミニさんの指示かな?」
あ・・実はそうなんです。
先生「オレの嫁!」
違います。
栞「梨本くん肩貸して~歩けない~」
喜んで!
鮎川さんの香りが疲れを癒してくれる。
優月「・・」
おや、姫宮さんの視線が僕の体を貫きそう。
・・
・・・・
昼食のお時間。
でも疲れすぎて食欲が・・なんかいつも食欲ないような。
いや旅館の食事はおいしい。おいしいんだけど食欲が出ない。
栞「梨本くんしっかり食べなきゃダメだよ。あんなに体を酷使したんだから、栄養とらなきゃ!」
伊織「梨本またなにかやったの?」
先輩「それが何度も超特別訓練のところに来て、姫宮にスポーツドリンク差し入れしてたんだ。」
伊織「・・ずっと坂を登っては下りてたの?」
先輩「そういうこと。」
伊織「キミは無茶ばかりするね。」
いえまぁ・・
伊織「・・もしかして、それもジェミニさんの考え?」
先輩「そうらしいぞ。なんというかさすがだよな。」
伊織「うん。私も後輩に指導するからわかるけど、本気にさせるってすごく難しいんだよ。」
伊織「こっちの望んだ通りに走ってくれる子ってすごく少ない。みんなどこかで手を抜くんだよね。」
先生「お、わかるぞそれ。言われた通り走ってますがなにか?みたいなやつが多いよな。」
先生「もう無理とか言いながら、まだまだ全然走れるやつとか。」
先生「それから・・」
伊織「先生愚痴はその辺で。」
先生・・色々溜まっているのかな?
伊織「梨本の足を見ればわかるけど、かなり無茶させてるね。ここまでやる気を出させるのはすごいよ。」
へー、ジェミニさんすごいのか・・
あれ?雷に打たれたくなかったら走れという脅迫だったような・・?
「ここまで褒められたら次も雷ね♪」
やめてください。
人権を尊重しろー!
「死ねば人権なんてなくなるから平気よ。」
それもそ・・いや待って!死ぬ前提はご勘弁を!
伊織「ねぇ聞きたいんだけど、姫宮のファンだと言い出したのもジェミニさんの考えなの?」
優月「・・」
え!?
それは・・言っちゃまずい気がする。
どどど、どうする・・?
先輩「違うんじゃないかな。言い出したのは旅館に来る前だっただろ?」
伊織「そういやそうだったね。私の勘違いだった、ごめんね。」
い、いえ・・
優月「私も知りたいわね。ジェミニさんとは旅館に来てすぐ指導してもらうことになったのよね?」
・・話の辻褄合わせるならそうじゃないとおかしいか。
優月「話を聞く限り気難しい人みたいだけど、どうやって仲良くなったの?」
仲良く?
「好きな子が寝取られて心くじけたところで甘い言葉にそそのかれましたって言えばいいのよ。」
それでいいんですか?
「素直に言ったらいい病院紹介してもらえるよ!やったね!」
絶対ダメだと思います。
ええと、退屈すぎるから暇つぶしに指導してくれるだけで、仲良くとかそういうんじゃないですよ。
運が良かっただけです。
優月「ねぇ、やっぱりなんとか指導してもらえない?」
え?
優月「一度でいいから私もジェミニさんに指導してもらいたいの。」
栞「あ、私も!」
いやそれは・・
先生「オレからも是非頼む!この通りだ!」
土下座とかやめてください。
先生「一日・・いや半日でいいんだ!」
というか先生が陸上部の顧問でしょ?
プライドとかないんですか?
先生「お前らを成長させるのがオレの仕事だ。他の方に指導してもらった方がいいならオレは引き下がろう。」
先生「どんな手でも使おう。そのためならクビになっても構わない!」
・・本当に時々先生らしいこと言うよなぁ。
本当に時々。
でもどんなに言われても天使様がダメって言えばダメなんだよね。
「半日なら構わないわ。」
あれ?いいんですか?
「その代わりどんな目に遭っても知らないけど。」
・・これはヤバそうな予感。
あのー、ならジェミニさんに聞いてみますけど・・
俺の様子見ればわかると思いますが、結構無茶しますよ?
優月「構わないわ。むしろ限界ギリギリまで追い込んでもらいたい。」
栞「私も私も!すっごく楽しみ!」
これから伺いに行くんですから、期待はしないでくださいよ?
・・ま、もう許可はもらったけど。
・・
・・・・
昼食後の休憩時間。
「ふふ、よく頑張っているわね。」
ジェミニさん!
あの、みんなも指導してくれるみたいでありがとうございます。
「午後の練習だけね。期待通りの結果になるとは限らないけど。」
またまたぁ、天使様ならどうとでもなるんじゃないですか?
「まぁね。全員100メートルを5秒で走れるように改造するなら簡単だけど。」
・・改造?
全員機械化かな?
もう少し常識の範囲内でお願いします。
「魔法でも使えるようにする?テレポートでフルマラソンも記録1秒!」
たぶん乗り物とかいらない世界になりそう。
乗り物系の業界とかから刺客来そうなので別の方法で。
「ならドーピング検査に引っかからない素敵薬物を投与してあげる。」
「死ぬまで効果が切れず200キロはジャンプできるわ。」
大気圏突入待ったなし!
すっごく寒くなりそう。
「200キロ辺りだと逆に気温が上がるのよね。」
「ちなみにオゾン層を超えるから紫外線に気を付けなさい。」
・・紫外線とか気にするレベル・・なのかな?
もっと気にすることがありそう。
「なおジャンプして下りたら間違いなく成仏。」
ですよねー。200キロだもん、ビルから落ちるよりやばい。
って、僕と同じ教え方でいいんじゃないですか?
「嫌」
え・・そ、そうです・・か。
「あなたは特別。他の人を同じように扱う気はないわ。」
特別?僕ってそんなすごかったんだ。
てれてれ(〃´∪`〃)ゞ
「反応が楽しいわ。つまんなくなったら捨てるけど。」
ヴぇ?
反応って・・つまり、僕がジェミニさんに慣れて反応が悪くなったら・・
い、いや一生お世話になるわけじゃないもんな。
いつか独り立ちしないといけないんだ。
・・そっか・・ずっとジェミニさんがいてくれるわけじゃないんだよな・・
・・
・・・・
お昼休みが終わりそう。
さて、そろそろ練習場へ向かうか。
向かう途中、ロリ部長がいた。
伊織「・・」
午後もがんばりましょうね!
伊織「・・」
部長?
あれ?僕嫌われた?
伊織「・・」
ロリ部長はひとりでスタスタ行ってしまった。
・・先輩と喧嘩したのかな・・いや、それで後輩を無視するような人じゃないと思ったけど・・
予想だにしない出来事に、ちょっとショックを受けた。
練習場へ行くと、もうみんな練習を始めていた。
天使様もいる!
「あなたも準備体操して走って来なさい。」
はーい。
おっと、返事は”はい”だよね。
「別に気にしないわ。あなたは別に不真面目ってわけじゃないものね。」
天使様は言葉じゃなく行いを見てくれる。
それがなんか嬉しい。
よーし、がんばって走るぞ!
準備体操をして走り出す。
あ、鮎川さん!
栞「・・」
・・鮎川さん?
栞「・・」
あれ?
よく見ると、誰も雑談をしていなかった。
それどころか、先生も走っている。
これは・・・・て、天使様!?
「体で覚えさせる。言葉はいらない。」
言葉どころか意志すらなくなってますよ!!!
「私に管理された秩序ある世界。不幸な人はいないわ。」
「悪人はいない、事故は起こらない、疑問を持たずただひたすら、ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために。」
「目的のために最大効率を実現。」
そうかもしれないけど。
でもこれは・・
先輩「・・」
先生「・・」
優月「・・」
理世「・・」
怖いよ?
「マカロニ買ってきてとメモしといたらマカロン買ってこられることのない世界。」
それはまぁ・・落書きみたいなメモはやめましょうとしか・・
伊織「・・」
あ、ロリ部長。
・・もしかして練習場来る前に無視されたのって・・
既に天使様の術中だった!?
「誰も遅刻せず出席率100%な理想の世界。」
これが理想か・・
黙々と走り続けるみんなを見ながら、僕も走ることにした。
というか僕もみんなと同じにして!
「だが断る」
断られた(´・ω・`)
・・
・・・・
練習時間が終わり、みんな整列する。
「中々楽しかったわ。じゃあね。」
僕も最後は心を殺して黙々と走った。
天使様の力がなくても無になれる!
先輩「ジェミニさんの教えすごかったな!」
栞「はい!こんなの初めてでした♪」
・・え?
優月「梨本くんが急成長するわけだわ。ハッキリ言ってずるいと思う。」
理世「ちょっと・・自信ついたかも。」
え?え?
先生「あ、あれジェミニさんは!?お礼に夜の過ごし方を教えたいのに!」
伊織「もう行きましたよ。」
みんな戻ったのはいいんだけど・・
あれは教えと言っていいのか?
というかみんなの認識どうなってるの!?
まざまざと天使様の力を思い知らされる。
僕はどうすることもできなかった。
・・
・・・・
お風呂入って夕食へ。
3年男「すごかったよなジェミニさんの指導。」
2年男「また教えてもらいたいな。」
3年女「梨本また頼んでよー。」
2年女「あんたのハーレムスキルでなんとかしなさいよ。」
そんなスキル存在しない(絶望)
僕だけが真実を知っているって孤独だ。
栞「いーなー梨本くんいーなー。ずっとあんな指導受けてたんだ。」
みんなはどんな指導だと思っているんだろう。
優月「・・世の中は不公平よ。」
姫宮さんは恵まれている方だと思うけど。
勉強も運動もできて美人でさ。
求めるものが大きすぎだよ。
ほどほどじゃダメなの?・・ダメなんだよね。どこまでも高いところを目指すんだよね。
先輩「梨本にとっては降ってわいた幸運だな。いい機会じゃないか、とことん学んで来いよ!」
はい!
伊織「あんな人もいるんだね。なんというか、正しい答えを知っている感じだった。」
正しい答え?
伊織「”どうすれば速く走れるか”の答えかな。」
伊織「みんなそれぞれ持論があるはずなんだけど、ジェミニさんはそれをとことん追求した人って感じがする。」
伊織「本とか出してないの?論文とかでもいいけど。もしあるなら読んでみたいな。」
えっと・・後で聞いてみます。
・・今聞けるけど。
「無いわ」
ですよねー。必要なさそう。
でもジェミニさんが書けばすごいものが出来上がりそう。
書いてみないんですか?
「早く走りたいなら改造してあげる。走りを追求なんて聞こえはいいけど娯楽でしょ。」
「早く走れても人々の生活は豊かにならないわ。」
「体を限界まで酷使して死の危険と隣り合わせをしてまですることなのかしら。」
えっと・・
全否定された?
「人間が走りたいなら勝手に走ればいいわ。でも私にそれを勧めないで。」
「人間が速く走るなんてまったく興味ないの。つまんないこと言うと殺すわよ。」
ご、ごめんなさい!
おおお怒らせた?
「それじゃあ代わりに楽しいことして♪」
・・例えば?
「そうねぇ・・先輩に告白とか。」
ヴぇ!?
僕どうなっちゃうの?
「早くぅ。世界を滅ぼしちゃおうかなぁ。」
僕の行動に世界がかかった?
あう・・え、えっと、先輩。
先輩「なんだ?」
好きです付き合ってください。
伊織「?」
栞「!?」
優月「!?」
理世「!?」
先輩「・・ああそういうことか。いいぞ。」
まさかのOK?
せ、先輩二股はいけません!
先生「・・あそこ何やってんだ?」
2年男「さあ。」
3年女「録音すればよかった。」
2年女「動画撮ればよかった。」
黒歴史は残さない方向でお願いします。
伊織「どういうこと?」
先輩「走るのが好きだから夜走りたいけど、外は暗いから付き合ってほしいってことだと思うぞ。」
斬新な解釈。
伊織「そうだったんだね。てっきり愛の告白だと思っちゃったよ。」
先輩「ははは、んなわけねぇって。梨本の好きな人の話をこの間したからな。俺に告白するわけねぇよ。」
・・そういえばそうだった。
天使様主催の肝試しの後で先輩とそんな話をしたっけ。
栞「え?え?聞きたい!梨本くんの好きな人って誰?誰誰誰?」
優月「あなたじゃないの?」
栞「えー違うよー。」
違わないよーしくしく。
先輩「名前までは聞かなかったからな。予想はつくが。」
先輩は僕を見てにやりと笑った。
その顔はイケメンと言っても過言じゃなかった。
先生「恋愛なら任せろ。いくらでも相談していいぞ。」
先生が僕を見てにやりと笑った。
その顔は子供を泣かせる威力があった。
というか先生の恋愛経験って・・
先生「・・お前を窓から突き落としてやる!」
僕が悪かったですごめんなさい!
先輩「夜走ることについては構いませんか?」
先生「お前がついてるなら大丈夫だろ。堅苦しいこと言うつもりはない、責任はオレがとるから明日に響かない程度に無茶してこい。」
先輩「はい!」
おや、夜走るの?
栞「な、なら私も!」
優月「なんか心配なメンバーね。仕方ないから私も行ってあげるわ。」
理世「う、うちも・・」
先生「ラブコメ禁止ー!夜走るのは不許可です!お前ら時と場所を選んで発情しろや!!!」
先生がキレた。
伊織「よしよし。先生の心が持たないので夜走るのは禁止ね。」
先輩「あら。ま、しゃあないか。ところで俺もよしよししてくれ。」
伊織「キミの心が闇に堕ちたらしてあげる。」
先輩「おいおい。」
先生「ははは、振られたな!伊藤はこれからオレがかわいがってやるからお前は自分で慰めていろ!」
ガシッ。
先輩の手が先生の顔を掴んだ。
僕知ってる。あれアイアンクロ―って言うんだよね。
先生「痛っ、痛い痛い痛い!」
先輩「マジ殺すぞ。」
あ、先輩が闇堕ちした。
伊織「よしよし。」
僕は思った。
闇堕ちした先輩はさらにカッコイイからいつもの先輩がいいです。
鮎川さんがうっとりした顔で先輩見ているし。
ちくしょう。
優月「・・あんたもよしよしされたい?」
え?
姫宮さんが魅力的なことを聞いて来た。
そ、そりゃまぁ・・されたいかな。
優月「たまには下僕にご褒美あげなきゃね。よしよし。」
ひ、姫宮さん・・?
ごくり・・僕はなぜか女の子座りで姫宮さんになでなでしてもらう。
栞「あー、優月ちゃんラブコメ禁止ぃ!」
鮎川さんが僕に体当たりしてきた。
思わず抱きしめる形になってしまう。
栞「あれ?」
や、柔らかい・・この手を放したくない!
栞「梨本くん・・恥ずかしいよ。」
先生「ラブコメ超禁止!!!」
先生が姫宮さんに体当たりしに行った。
しかし姫宮さんはさらりとかわした。
優月「女生徒に抱きついたら不祥事ですよ。」
先生「クビが怖くて教師やってられるか!」
いい方にも悪い方にも振り切っているよなぁ。
主に悪い方だけど。
・・
・・・・
夕食も終わり後は休んで眠るだけ。
さて、天使様に無理難題言われる前に寝よう。
「そんなに期待されたら応えちゃう♪」
部屋の前まで来たのに、ジェミニさんがいるぅぅぅ。
「辛いのと痛いのと危険なの、どれがいい?」
楽しいのがいいです!
もしかして外へ行って走れとか言っちゃう?
「走りたいなら止めないけど、夜の練習は調整が難しいからあまりお勧めしないわね。」
そうなの?
「夜の練習したせいで、次の日に疲れを持ち越したら生活に支障がでるでしょ?」
「その日の疲れはその日のうちに取りなさい。」
あれ?夜に走りまくった日があったような・・
「午後の練習少し短かったでしょ。その分を調整しただけ。ちゃんと次の日に疲れを持ち越さない程度にしたわ。」
そういやそうだったっけ・・
いや午後の練習短くなったのって、品川さん助けたあれじゃないですか。
ジェミニさんの差し金では?
「私は別に助けろなんて言ってなかったわ。あなたが勝手に助けたんでしょ?」
・・・・まぁ、そうですが。
いや、意義あり!ジェミニさん未来がわかるなら僕がどう行動するか分かっていたでしょう?
・・
・・・・
夕食も終わり後は休んで眠るだけ。
さて、天使様に無理難題言われる前に寝よう。
「ハロー♪」
・・もう夜ですよ?
なんかご機嫌そうですが、なにか企んでいます?
「ちょっと時間巻き戻して来ただけ♪」
え?
僕は時計を見た・・が、特に巻き戻っている様子はなかった。
「ふふ、ストレス解消したくない?」
ほほぉ、話を聞きましょう。
まさか天使様が僕のストレスを考えてくれるとは。
「はい。」
天使様が本を・・エロ本を渡してきた。
・・あの?
「トイレに籠っていいわよ」
ちょー!
本気ですか?
「冗談♪あ、その本はあげるわ。」
別にいりま・・これって・・・・
「自作♪」
鮎川さんや姫宮さんたち陸上部の女の子がエロいことされてる。
・・・・僕これから天使教に入信します。
「※信者は募集していません」
あれー。
じゃあ僕ってジェミニさんにとってなんなんですか?
「〇〇〇」
伏せられた!?
ペット?
「ふふ、ついて来なさい。」
言われるままついていく。
廊下を歩き階段を上り・・上るの?
ここ3階・・最上階だったような。
階段を上った先の扉を開けると・・・・
そこは屋上だった。
わぁ、星が綺麗だ。
「ちょっと待ってなさい。」
はーい。
天使様も粋なことをするなぁ。
栞「あれ?梨本くん?」
鮎川さん!?
え?え?なんで?
「好きな子と思い出を作れば?くすくす。」
・・ありがとうございます。
このチャンスを無駄にしてはいけない!
あ、鮎川さんも星を見に来たの?
栞「眠れなくて散歩してたら屋上への扉が開いてたの。覗いたら梨本くんがいるんだもん。」
栞「ここ勝手に入っていいの?」
・・まぁ天使様プロデュースなら大丈夫だよね?
たぶん。
栞「そっかぁ。」
鮎川さんが仰向けになった。
鮎川さん?
栞「首を上に向けると疲れるもん。星を見るなら横になるのが一番楽だよ。」
なるほど。
僕も横になった。
星がとても綺麗に見えた。
が、これでは鮎川さんが見えない!
栞「宇宙にはたくさんの星があるんだね。」
うん。
栞「私たちが大人になる頃には、宇宙へ開拓しに行ったりするのかな。」
宇宙へ開拓?
栞「うん。きっとゲームみたいな広い世界を探索するようになるんだよ。」
・・どうだろう?
月に行ってから宇宙探索って進んで無さそうだけど・・
火星に基地とか作らないのかな。
が、鮎川さんがそう言うならきっとそうなんだろう!
そうだね、じゃあゲームは売れなくなりそう。
宇宙に行けばいいんだから。
栞「そんなことないよ。きっと宇宙には今までの常識を超えることが待ってるよ。」
栞「それをゲームにすればいいんだよ。」
なるほど。
新しいジャンルができるようなものか。
狩りゲーやクラフトゲーとはまた違うものになるのかな?
確かにみんなが開拓に参加するわけじゃないだろうし、一般人はゲームで宇宙開拓を体験するのか。
・・でもまず開拓するなら火星からだよね?近いし。
火星って、-50度くらいだったような・・開拓・・出来るの?
空気も殆ど二酸化炭素だよね?昔の地球のような。
植樹して酸素を増や・・・・億年単位の時間が必要なレベルだ。
・・ま、確かに新しいジャンルにはなりそうだ。面白いかは置いといて。
なら僕が宇宙船を作って鮎川さんを宇宙に連れて行くよ。
一緒に宇宙を開拓しよう!
栞「あはは、楽しみにしてるね♪」
僕たちは、しばらく星を見続けていた。
さーて、宇宙船ってどうやって作るんだろう?
現代技術じゃ船じゃなくてロケットだよね?
・・
・・・・