第五十三話「VSブレンジャー」
Side of ホーク・ウィンド VS ブレンイエロー
五対五の戦いは都市部へと移る。
未来的、高層建築物群を足場にして十の影が激突する。
最初は5、5のチーム戦になるかと思われたが天村 志郎が突然光線技ぶっぱなしたせいで散り散りになった。
一緒に行動しているのは倉崎 稜と宮園 恵理のペアぐらいでここだけ二対二になっている。
『おおおおおおおおおおお!』
『舐めるなよ小僧!!』
空中でホークとブレンジャーのイエローの大槌型ハンマーと激突する。
激突する度に振動音が響き渡り、弾かれ、近くの建造物の壁に吹き飛ばされるが再び体制を立て直し、足場にした建造物の壁を踏み砕いて激突し合う。
『俺のパワーはブレンジャーの中で随一!! 勝てると思ってるのか!?』
『悪いな! お前よりパワーが上の奴を知ってるから全然恐くないな!!』
そう言って何度も大槌にハードブレイカーの拳を叩き付ける。
肩のプロテクターを装着してボクシンググローブの様にしていた。
昔ガンダ●ファンの間で賛否両論となった作品のマシンの機構である。
最近だととあるライダーもやっていた機構だ。
『舐めた口もそこまでだ!! 貴様の拳は砕かれつつあるのが分からないのか!?』
ブレンジャーのイエローが言う通り、プロテクターを身に纏った拳は激突するに連れてどんどんと破損していく。
このままでは遠からず破壊されるだろう。
『だからどうした』
しかしホークは構わず拳を敵のハンマーに叩き付け続ける。
『俺は自分が鍛え上げた拳を信じる。ただそれだけだ』
『戯れ言を!!』
そして再び空中で激突。
両者共に衝撃で吹き飛ぶが右腕のプロテクターが砕け散り、アスファルトかどうかは分からないが車輌通るであろう灰色の道路に着地する。
『貴様の拳は砕けた。終わりだな』
『お前馬鹿じゃねえのか? 自分の大槌を見て見ろよ?』
『なに?』
そう言われて見てみる。
すると――そこには傷が付き、凹んでデコボコになっている大槌の表面があった。
だがそれだけだ。
『ふん、確かに驚愕に値するだけだがそれだけだ。お前は次の一撃で粉砕される』
『確かめて見るか?』
そう言ってホークはプロテクターが粉砕された右の拳を構える。
血迷ったか? とイエローは思ったが構わず禍々しい紫色の光が槌に宿る。
そしてホークは自ら飛び込んで来た。右腕を振り下ろす。
『馬鹿め!! 死にに来たか!?』
今のホークの動きは特に素早いわけでもない。空中を滑空しながら飛び込んで来ている。プロ野球選手がキャッチボール感覚で放り投げられた平投手の球を捉えるぐらいに狙いを合わせるのは簡単だ。
『馬鹿はお前だ』
拳とハンマーが激突する瞬間。
ハンマーが砕け散った。
同時に目映い閃光がイエローを吹き飛ばした。
建造物の壁を突き破り、内部の壁を壊し、そして再び外へと飛び出して転がり込んだ。
(な、何が起きた・・・・・・)
分からなかった。
粉砕されるのは相手の筈だった。
何故自分の武器が粉砕された?
何故こんな不様を晒している?
理解不可能だった。
『ギガスマッシャー・・・・・・ハヤテに頼み込んで正解だったぜ・・・・・・』
『な、何故・・・・・・』
ブレンイエローはどうにか立ち上がるが戦意は折れていた。
そしてホークはヤレヤレと言った口調で歩み寄ってくる。
『一見まだ使えそうに見えるが、衝撃ってのは例えダイヤモンドの様に堅い物質であっても内部を通るように出来てるんだ。中身は想像以上にボロボロだったんだろうさ。そこに必殺技のためのエネルギーを注入すればああなるのは当然ってわけだ』
『なんだと・・・・・・』
『俺はボクサーだ・・・・・・頭悪くてもその手の知識は素人よりかはある。お前もプロを語るんなら自分の武器のコンディションぐらいは把握しとけよな』
『ま、待て――』
『ガトリングブロー!!』
左腕の、まだプロテクターがついた拳のラッシュが全身を襲う。
しかもただデタラメに殴っているわけではない。考えられる限りの人体の急所を適確に射貫くように殴っており、ついでに不可思議な未知のエネルギーが拳に纏っていた。
『ジェットアッパー!!』
ホークは勢いよく、傍目から見れば瞬間移動したように右腕の拳を突き上げるように飛び上がる。
同時にブレンイエローは人体をバラバラになりながらクルクルと回転して爆発する。同時に何か小型の、機械のチップが排出して何処かへ飛んで行った。
それを見届けるとホークはふぅと尻餅付いた。
『さてと・・・・・・他の連中はどうしてるかね・・・・・・』
と呟いた。
この未来都市の各地で激戦が繰り広げられているだろう。
どうしたもんかとホークは悩んだ。
☆
Side of ハヤテ VS ブレンブルー
『チィ!? ちょこまかと!?』
弓から発射されるエネルギーの矢をマシンガンの様に放つが中々捉えられなかった。気が付けば奇襲を仕掛けてくる。
相手の太刀を弓で防いで場所を変えた。
するとその場所を狙い澄ましたかのように雨の様に小さなエネルギー弾の雨『マキビシ』が飛んで来る。
回避する間もなくそれを全身で浴びた。
『クソ!? 何なんだ!? アイツは!?』
どうにか敵の攻撃を凌いで悪態を付くブレンブルー。
戦いの主導権は完全に彼方に握られている。
これを奪い返さない限りやがてジリ貧になってしまう。
そうこうしているウチに今度は爆弾が四方を囲むように落ちてくる。
舌打ちしながらブレンブルーは後方へと跳躍する。
が、そこにまたしてもハヤテが急襲を仕掛けて来た。
両手には光り輝く小太刀型のブレードを手に持っている。
胸部に飛び移り、二閃、三閃――僅かな時間の間に次々と斬撃を繰り返していく。
ズタズタに引き裂いて、建物の屋上から落下していく段階になってようやくハヤテは離れた。
『あ、あいつ傷口に爆弾を――!? チクショォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
断末魔を挙げてブレンブルーは爆発の中に消えた。
チップが排出されたが気にもとめずに素早くハヤテは行動に移す。
☆
Side of 倉崎 稜&宮園 恵理 VS ブレングリーン&ブレンピンク
黒の堕天使、クリムゾンフェザーこと倉崎 稜。
白き戦乙女、アウティエルこと宮園 恵理。
二人のコンビネーションは息が合った物だった。
ブレングリーンとブレンピンクを着実に追い詰めて言っている。
『ちょこまかと飛んで!』
ブレンピンクの武器は携帯式の小型バズーカの様な外観だ。
威力高いのか、集団戦だった前回の戦いでは味方を巻き添えにしてしまう恐れがあったのか使わなかったようだが今回はバンバン使ってくる。
しかし二人には全く当たらない。
「思ったけど稜、どうして私の動き分かるの?」
『感覚的な感じです。恵理さんとは何度も稽古に付き合った事もあったしそれも影響しているのかもしれません』
「そ、そう?」
などと世間話すらする余裕まであった。
とても屈辱的だ。
仕返しとして倉崎 稜の翼から赤い光弾の雨が降り注ぐ。
『煙幕のつもり!? だけどこっちは丸見えなのよね!』
視界が塞がる中、敵の位置を捉えて発射する。
その閃光は恵理を捉えた。
咄嗟に左腕のシールドで防いだようだ。
『恵理さん!?』
「私は大丈夫だから行きなさい!!」
『でも』
「でもじゃない! 私がいないと何も出来ないの!?」
と、恵理は叱り飛ばしていた。
その隙にグリーンは二つのブーメランを飛ばした。
目標は棒立ちしている倉崎 稜だ。
しかし赤い光の剣を形成するとそれを容易く弾き――
「気持ちは嬉しいけど、私は大丈夫だから心配しないでやる事やる! 男でしょ!」
『は、はい』
そう言って倉崎 稜はグリーンの元に飛び込んだ。
恵理もその後に続く。
『早い!!』
『ええい!? どうなってるの!?』
二つの閃光の矢――航空物理学を無視した変則的な動きで両者に飛び込み。
グリーンとピンクを両断。
爆発して二つのチップが排出された。
「やれば出来るじゃない」
と、恵理は照れくさそうに褒める。
『ごめんなさい。やっぱり恵理さんが傷つくところを見るとどうしても・・・・・・』
「あんまりそんなだとコンビ解消するわよ?」
『それはイヤです』
「戦いなんだからそこは堪えなさい・・・・・・まあ気持ちは嬉しいんだけどね」
視線を逸らしてそう言うが稜は首を捻った。
『何か言いましたか?』
「うん? なんでもない」
などと甘い雰囲気を出しながら二人はどうするべきか考えた。
☆
Side of 天村 志郎 VS ブレンレッド
『お宅のメンバー達は全員やられたようですよ』
『クソ――こんな筈では!?』
天村 志郎が身に纏うベルゼルオスの戦闘力は圧倒的だった。
ブレンレッドは文字通り歯が立たず、防戦を強いられている。
ベルゼルオスのスペックもそうだが装着者も化け物である。
油断すれば即座にやられる。
そんな戦いを強いられていたが――
『ならば奥の手だ――』
『奥の手?』
すると何処からともなく四つのチップがブレンレッドに飛来して吸収される。
そしてブレンレッドはエネルギーが急上昇。
胴体にイエローの面。
右肩にブルーの面。
左肩にグリーンの面。
背中にピンクの面が浮かび上がる。
『合体と言うワケですか・・・・・・』
『ここからが本当の戦いだ――』
両者は高層建築物に囲まれた道路で睨み合う。
そして――
『うおおおおおおおおおおおおおおお!!』
合体したブレンレッドが飛び込んでいく。
ベルゼルオスを吹き飛ばし、すかさず追い打ちをかけて地面に叩き付けてクレーターを作る。
続けて空中に飛び上がり、ピンクの小型バズーカで追い打ち。煙で視界が塞がろうととにかく撃ちまくる。
『はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・呆気ない物だな・・・・・・他の連中もスグに――!?』
煙の中から何かが飛んできた。
ベルゼルオスのガントレットだ。
慌てて回避する。
更に額からレーザーを発射。
その高出力の光線は建造物を焼き切る。
『クソ!? まだ立ち上がるのか!?』
『すいません、まだベルゼルオスは本調子ではなくて・・・・・・制御するのに手一杯なんですよ・・・・・・』
と言いながら何処から取り出したのか大きなビームの鎌、ビームサイズを片手にブレンレッドがいる空中へ突撃仕掛けてくる。
それをブレンレッドはブレンブルーの弓で迎撃するが相手のバリアに阻まれ、怯みもしない。
これでは視界が悪くなり、かえって危険が増すので剣で迎撃して切り払う。
『どうやらパワーでは此方が上のようだな!!』
『みたいですね――』
そして胸部の水晶がはめ込まれた、悪魔の羽を模した様な赤い飾り付けされた部位から光線が放たれた。
慌てて回避する。
当たり所が悪かったのか、遠くに浮かんでいたブレンの複製戦艦が轟沈した。
『なんてデタラメな・・・・・・』
『やはりフルパワーで暴れ回るのはやめといた方がいいみたいですね。失敗失敗』
『そんな余裕かませなくさせてやる!!』
そして両者は空中で激しく激突する。
弾かれ、吹き飛ばされ、建造物の地面に激突し、地面にクレーターを作るめぐるましく立ち位置を変える激しい攻防戦。
だが段々と合体したブレンレッドが押されていく。
『気付いたようですね?』
『なにがだ!?』
『貴方は確かに急激にパワーアップしました。しかし、事前に私との戦いで消耗した体でそこまでのパワーアップをしてしまったせいでそのパワーに耐えきれず、貴方の体は崩壊していってるのですよ。もうそろそろ限界ですね』
『なんだと!?』
『そしてそれを見逃す程私はお人好しではありません』
背後から衝撃。
何かに挟まれて壁に叩き付けられる。
『これは――』
『先程飛ばしたガントレットですよ』
天村 志郎のベルゼルオスが持つガントレット。
ブースターとハサミの様な近接格闘用シザー、近距離~中距離用のビーム砲とを兼任する武器だ。
一度飛ばした後、シザー展開状態で空中に待機させ、そしてタイミングを見計らって再度突撃させ、シザーを展開してブレンレッドを拘束して壁に叩き付けて貼り付けにしたのだ。
『これで終わりです!!』
ベルゼルオスのエネルギーを右腕に集中。
禍々しい赤色のオ―ラが漂う。
そしてベルゼルオスの最強武装の一つデッドエンドを放つ。
ブレンレッドの上半身が建造物もろとも吹き飛んだ。
『ふぅ~これで一段落ですが・・・・・・何処にいるのですかね』
飛ばしたガントレットを戻し、周囲を見渡す。
自分達の目的はただ敵を倒す事ではない。
近くに日本全国各地、下手をすると世界中から捕らわれた人間がいる。
生体センサーで既にキャッチしており、そこに向かって救出する必要がある。
不思議と敵の勢いが弱まって来ているので今がチャンスだろうが危険である事は変わりないので掃除が必要かもしれないと思った。




