第四十九話「収束点へ」
連続更新始まります。
Side JOKER影浦
(かなり派手にやったみたいだな・・・・・・)
凜や春龍を乗せた蒼翼よりも一足早く、魔改造された零戦戦闘機はブレンの本拠地である巨大円盤へと辿り着いた。
元の景色は知らないが、周辺はクレーターだらけでまるで空間諸共くり抜かれたかのような山まである。
マスタージャスティスとブレンの背後にいる何物かは相当な激戦が繰り広げたのだろう。
巨大円盤の周囲には母艦級、戦闘機級の円盤が多数並んでおり、そして巨大円盤は幾つもの巨大なアンカーを地面に差し込んで空中に浮いている。
巨大円盤の真下には整備ドッグらしき施設。
周辺にはSF物に出て来そうな都市が出来上がり、銀色の兵士や戦車、巨大ロボットなどがそこかしこを練り歩いていた。
まだ一週間も経ってないのにも関わらずこれである。
恐らく捕らえられた人々は皆あの都市の何処かで何かしらの強制労働に従事しているのであろう事は容易に想像出来た。
観察を一旦止めて意識を戦闘に集中し直す。
敵はビーム機銃やバリアの体当たりなどで次々と倒しているが際限なく湧いてくる。
そもそも相手は一日も経たずに地球の兵器を複製して投入してくる超過学力を持つ相手だ。
戦力など幾らでも補充が効くのだろう。
それに今は航空力学を無視した変態的な機動でどうにか避け続けているが敵の反撃の砲火は激しい。
地上の対空砲や空中の円盤の砲撃、そして巨大円盤からの弾幕など――正直この零戦で単独で戦い続けられたのは奇跡に等しい。
このままではやがて撃ち落とされるだろう。
だがここに来る彼達――天照学園の教え子達のためにも少しでも削って置きたいと言う気持ちもあった。
「神風特攻しに行った連中の気持ち・・・・・・今なら少しだけ分かるな・・・・・・」
それだけではない。
時代の流れに逆らって消えていった多くの人間の姿をJOKERはこの目に焼き付けて来た。
そして彼は、第二次世界大戦の時――多くの日本人を見殺しにした過去を持つ。
助けようとした時は既に二つの原爆が落とされた後だった。
そこからだ。
中国の九龍。
アメリカの科学都市。
イギリスのソーディアン。
ロシアの軍事都市。
これ達の創設の手伝い。
銀河連邦や世界管理局もそうだ。
月の独立戦争にも関わっている。
そして日本での天照学園の設立。
様々な事に手を回して来た。
そして今――宇宙人の襲来、神の意志による侵略と言うこの日を迎えた。
何度も地球人類を見限ろうとしたが「それでも」と自分に言い聞かせてここまで来た。何だかんだで自分は甘い男なのだろうとJOKERは思った。
人と言う生命が『神』と言う絶対的な存在を打ち破れるかどうか――この一戦はそれを見定めるための重要な一戦でもある。
「ちっ――もうこの機体はダメか」
機体が火を噴き始めた。
大分敵は落とした。
この隙に彼達が突入してくれることを祈るばかりだ。
猛スピードで零戦を敵の本拠地である直径三千メートル級巨大円盤に突っ込ませる。
☆
「早速、お出迎えか――」
スクラップになり、煙をあげる零戦を背後に、JOKER影浦は日本刀片手に銀色の広場に出る。
まるで闘技場のようだなと思った。
そこには見渡す限りの銀色の戦闘員。
そして怪人がいた。
ブレンの配下に混じって見覚えのあるデザイアメダルの怪人も混じっており、既に複製されたのだろうと思った。
『よもや単独で突入してくるとは――』
『地球人の言葉で言う「飛んで火に入る夏の虫」とは正にこの事だ!!』
『我達に死んで詫びるがいい!!』
ブレンの配下怪人の言葉にJOKER影浦は臆する事は無かった。
それよりも日本の諺を既に学習していて勉強熱心な事だなとか思ってしまった。
「始めるか」
JOKERは飛び込む。
銀色の戦闘員達を日本刀で次々と両断していく。
早過ぎてモーションが見えない。
相手を斬ったと言う結果を置き去りにするかのように速度が増していく。
一回振る事に数十体が纏めて切り裂かれ、あるいは剣を振った衝撃波で吹き飛ぶ。
そこに怪人も戦闘員も関係ない。
次々と。
次々と切り裂かれていく。
『何なんだコイツは!?』
『地球にこんな戦士が!?』
「地球を舐めるなよ!!」
攻撃の手は一切緩めない。
閃光が目映くたびに次々と切り裂かれる。
そして追加の敵が補充されてくる。
戦車やアサルトライドまでも投入してくる。
本気で殺すつもりだ。
だがそれでいい。
「殺せるもんなら殺してみろ!! テメェら全員地獄に送ってやらぁ!!」
仮面の学園長。
JOKER影浦は修羅となって相手に斬りかかる。
戦闘員怪人は斬り捨て、戦車を両断し、アサルトライドを斬り飛ばす。
勝ち負けなど関係ない。
ただただ戦い抜くのみ。
未来のために。
☆
Side 天野 猛。
今激戦が繰り広げられている航空自衛隊の基地。
そこで戦っているのは合流ポイントだった。
敵が大挙として押し寄せ、皆頑張って戦っている。
どうにか数の波に押し込まれていないのは此方の戦力が優れているからだろう。
(このままだと押し切られる!!)
そんな時に新たな反応が現れた。
「ブラックセイバー!? 黒崎さん!?」
『久し振りだな』
敵の円盤を撃墜し、手短な戦闘員達を倒してそう挨拶した。
『色々と悩んでいたが・・・・・・まあ、お前にカシを作るのも悪くないと思ってな』
「どんな理由でもいい! 来てくれてありがとう!」
『ふん・・・・・・』
小声で『調子狂う奴だ』と皮肉気に返して戦いに参加した。
地上スレスレを飛び回り、敵を薙ぎ倒していく。
『素直じゃないね。あの子も・・・・・・』
「あ・・・・・・来てくれたんだ・・・・・・」
どこからともなくマスクコマンダーが猛の傍に降り立った。
先程の猛とカイトのやり取りを聞いていたのか呆れている様子だった。
「ともかくもう少し持ち堪えるんだ」
「持ち堪える?」
すると遠くから何か巨大な飛行物体が迫って来るではないか。
どんどん目に見えてシルエットが大きくなる。
全高25m、全幅50m、全長40m。
蒼い翼の飛行マシンがやって来る。
内蔵火器を乱射し、次々と敵を粉砕して航空自衛隊基地の広い滑走路を独占するように着陸する。
『どうにか合流できたわね!! さっさとこいつ達片付けて乗り込んで!!』
「姫路部長!?」
思わず猛は凜に呼び掛ける。
僅かの期間しか会ってないのに何だか随分久し振りに声を聞いた気がした。
『ほら、新入部員! アンタもさっさと働きなさい!』
『暴力的な女だね! 君は!?』
新入部員らしい男が愚痴っていた。
だが一々猛達も構ってもいられず、残敵を掃討していく。
これが最終決戦へと続く戦いの狼煙となった。




