第二十五話「闇乃 影司と烈火の退魔師」
自分にとってはとても懐かしキャラが登場します。
闇乃 影司。
白肌。
白髪。
紅の瞳。
モデル顔負けの華奢な抜群のプロポーション。
しかし変身姿は完全に怪人のソレの少年は自分の姿を変え、間接的にだが大切な人の命を奪った相手の手掛かりを求めて黒いセイントフェアリーを追っていた。
だが時間が経過した今になって冷静に考えてみれば――分かり安過ぎる。
逆に罠では無いかと思ってしまう。
「確かにそうですね」
「でしょ?」
と、居候させて貰っている同居人の倉崎 稜に相談してみる。
現在夕食であり、影司が作った夕食を顔を合わせて食べていた。
料理は最初手間取ったが、料理雑誌とか色々と見ていくウチに勝手に覚えた。
短期間のウチで一人暮らしで自炊するには十分な程に腕は上がったと自負している。
その他の家事も同様で稜が留守の間は家事を完璧にこなしている。
元使用人の立場だったらしい稜からすれば落ち着かないらしいがこれも居候の宿命として我慢して欲しいと影司は思っている。
「もしかして潰し合わせるのが目的とか?」
「確かにそう考えれば辻褄が合うけど――」
潰し合い。
そう考えるのが自然だ。
あるいは接触すると何か不都合が生じるとも考えられる。
「まあ、それはそうとして――」
「どうかしたんですか?」
「いや、ちょっと最近色々あってな」
「色々ですか?」
「うん――」
闇乃 影司は所謂、退魔師の跡取り息子である。
その関係のせいかこの学園に来てからどうも退魔師関係の人間が接触して来るのだ。
例えばこんな事もあった。
先日、夕飯の買い物の帰りの事。
公園を通り抜けようとした時にある大人びた少女と出会った。
「私は村雲 炎華。中等部で風紀委員をしているが今はそんな事はどうでもいい」
紅蓮の様に燃え盛る様な長い赤い髪の毛。
烈火の刀剣の様な鋭い瞳。
凛々しく整った顔立ち。
長身でアスリート系の理想的な体付き。
制服姿で日本刀を二刀携え、そのウチの一刀を抜刀している。
赤い刀身から火の粉が舞い散っている。
何かもうフレイム●イズと名乗っても通用しそうな感じの美少女だ。
「お前はこの学園で何をしている?」
「何をしていると言われても――そっちこそ何なんだよ?」
「人相は大分変わっているが、先日は派手に暴れたようだな」
恐らくソレはブラックスカルの一件の事を言っているのだろう。
「てか人の往来で堂々と刀を抜刀するってどうよ」
「案ずるな。人払いの結界は張ってある」
「は、はあ・・・・・・ともかく刀を降ろしてくれません? 恐くて話も出来ないんだけど・・・・・・」(人払いの結界?)
そう言うと村雲 炎華は微笑を浮かべた。
「あんな姿をしておいて刀を向けられただけで恐いとはな――」
「で、用件はなんでしょうか?」
少女の口振りから察すると、影司の怪人みたいな姿も見られているようだ。
「この学園に入ってからそれからの経緯をずっと観察していた。だがこれと言って何の動きも見せないこうして私が動いたのだ」
「な、成る程――信じて貰えるかどうか分からないけどあらいざらい吐くよ。その代わり自分の事とか退魔師の事とかに教えて?」
「何? まあ良いだろう」
そこから闇乃 影司は今日に至るまでの経緯を話した。
退魔師を怒り狂って惨殺した事については暈かした。
「成る程・・・・・・あの事件の真相はそうだったのか。それでお前は黒いセイントフェアリーを追ってこの学園に来たと?」
「ああ――」
どうやら納得してくれたようだ。
影司はホッとした。
「セイントフェアリーの事は私も知っている。正体も含めて有名人だからな――共闘した事もある。だが黒いセイントフェアリーについては知らん」
「ならセイントフェアリーの事を教えてくれないか? 一応ネットで色々と調べたんだけど・・・・・・」
一応ある程度の情報を知る事は出来た。
最近はヒーロー部と言う部活で活動している事も知っている。
だがそれ以上の事は知らなかった。
「そうだな・・・・・・害を成すのは辞めておけ。学園と天村財閥を敵に回す事になるぞ?」
「天村財閥?」
「セイントフェアリー、揚羽 舞は天村財閥の御曹司と恋仲なのだ」
「そうなのか・・・・・・」
確かにそれは不味い。
下手に手を出せばあの天村財閥が敵に回る。
もう自分の人生は絶望の淵にいるがあまり他者――倉崎 稜を巻き込むような事は避けたかった。
「それで退魔師について教えてくれないか?」
「お前、闇乃家の跡取り息子なのだろう? 知らないのか?」
「・・・・・・記憶が無くなってるんだよ。それに小春も霞も何も教えてくれなかった」
その事について正直に話した。
「小春と霞――情報にあった退魔師だな。此方でも足取りは掴めてないが二人は?」
「殺された。同じ退魔師だったんだろうが俺なんかを庇って・・・・・・」
真実は暈かしながらも正直に話した。
「そうか。すまなかったな・・・・・・」
「いや、いいんだ・・・・・・」
そこから村雲 炎華は退魔師の事について語った。
そして現在、退魔師が人手不足である実情や、影司が関わったあの事件(*ヒーローロード外伝・闇乃 影司サーガ後編参照)で政府から冷遇されている事。
更には闇乃家の実態まで教えて貰った。
「いわゆる汚れ仕事とかを請けおって勢力拡大したのが俺の家系なのか?」
「そうだ。そしてお前はある意味有名人だった。退魔師としての能力が全くない無能者として・・・・・・それがまさかアレ程の力を身に付けているとは驚いた」
「・・・・・・得たくて得た力じゃないけどね」
「だが、お前やお前の家に恨みを持つ退魔師や闇の女王を名乗る存在とその黒いセイントフェアリーの一派の事もある。その力が必要となる事はあるだろう」
そう言って刀をようやく鞘に収めてくれた。
「どうでもいいけど、よく自分の言葉を信じてくれたね」
「嘘と言うには話に矛盾点が無いからな。それに君は嘘を付くのが下手だ。根は正直者なのだろう」
「そ、そう」
馬鹿にされてるのか褒めてるのかどうか微妙な評価にどう反応すればいいのか影司は戸惑う。
「それにセイントフェアリーの力についても謎が多い。元々天村財閥が開発したと言うがそれ以外は謎のままだ」
「はあ・・・・・・まあ多少なりとも収穫があったからヨシとするか」
「ふん、何時でも監視しているぞ」
「心に止めとく」
この少女の言葉に嘘偽りは無いのだろう。
言葉通りに「心の中に止めておく」ことにした。
「それと・・・・・・お前か稜にかは分からないが周辺にやたら胸がデカくて戦乙女の様なヒーロー? なのかが彷徨いているがアレは何なのだ?」
ふと、そのことを言及する。
影司は「ああ、あの人か」と合点が行った。
「ああ・・・・・・視線が気になるんで一度尋ねて見たんだが、倉崎 稜の事が心配だとか言って――一応アウティエルと名乗って学園で活動しているらしいのだが」
「分かった。それとなく稜にも尋ねてみるよ」
そうして影司は村雲 炎華から解放された。
ふと夕飯を食べている最中の稜にこう尋ねて見た。
「そう言えば稜も探している人がいるんだったな」
「ええ、恵理さんの事ですか?」
「どんな人?」
「長い黒髪で、青い瞳で、男勝りな事があって活発で剣道を嗜んでいて――ともかく素敵な人です」
「そうか・・・・・・」
笑みを浮かべて頬を染めながら饒舌に語ってくれた。
どうやらとても大好きな人なんだろうなと影司は思った。
「それと最近何かこう付き纏われたりしてない? 何か胸が大きくて戦乙女の様なヒーローか何かに?」
「どうしてソレを?」
「ちょっと小耳に挟んで――」
「そうですか。恵理さんなんですけど、あまりにも容姿が変化していて・・・・・・長い金髪で爆乳で、だけど声は同じで恵理さんですかと尋ねても最初は必死に否定してたんですけど最近は開き直ってやたら接触して来て――その時は髪の色とかも元通りになるんですけど、やはり誘拐された時に何か人体改造されたんでしょうか」
「そっちも何か重い事情を抱えてるんだな・・・・・・そう言う時はアレだ。気になるけど相手が打ち明けてくるまで辛抱強く我慢するんだ」
再会したら変身ヒロインになってて爆乳化してましたなんてきっと碌な理由ではないだろう。
倉崎 稜は気付いているかどうかは分からないが念の為釘を刺しておいた。
(それにしても天村財閥とセイントフェアリー・・・・・・闇の女王と黒いセイントフェアリー、どう言う関係があるんだ?)
ふと退魔師の少女から聞いた事を思い出す。
色々と可能性はあるが、所詮は可能性である。
もっと調べる必要があると感じた。
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