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ヒーローロード  作者: MrR
ブラックスカル編
20/72

第十五話「アーカディア崩壊」

今回は悲しい回・・・・・・


 学園で起きている異常事態は猛や春歌達も学校の教室で知る事になった。


「どうしましょう?」

 

 春歌は猛に尋ねるが


「と言うよりどうにかするしか無いよね――」

 

 苦笑と交じりに返事をする。


 窓ガラス越しに運動場の方に目を向けると大量のデザイアメダルの怪人がゾンビの集団の様に押し寄せている。

 いわゆる大パニックだ。

 教室中もどうするかで右往、左往している。


「スマフォが・・・・・・舞先輩からです」


 春歌が慌てて電話に出た。


「舞先輩!? そっちは大丈夫ですか!?」


『うーんと今アーカディアの施設前に来てるんだけど来ない方が良いわよ』


「え?」


『こっちも怪人だらけ。どっから手を付ければいいのか分かったもんじゃないわ』


「でも以前聞いていた計画とは――」


『何かしらの計画の変更をしたんでしょうね。計算尽くか、その場の思い付きかは分からないけど。まあそっちはそっちで切り抜けて』


「あ、ちょっと」


 そこで通話が切れた。


「春歌ちゃん、学園の皆を守るために戦うしか無いよ」


「ええ――そうですね」


 舞達の事も気になるが、学園の人達を見殺しにするわけにも行かない。

 二人は戦う覚悟を決めた。


「二人とも行くんですか?」


 柊 友香が寄ってくる。

 後ろには葵もいた。


「うん。学園を守らなきゃね」


 そう言って猛は窓から飛び降りた。

 三階の窓からである。

 騒然となる。

 春歌も続いた。


「「変身」」


 それぞれ青き戦士、レヴァイザー。

 桜色のレヴァイザー、桜レヴァイザーへとなる。

 Wヒーローの登場に学園中が騒然となった。

 そして生徒に襲い来る怪人軍団に向かって行く。


「アクアフォーム!」


 三又の槍、トライデントを持った水色のレヴァイザーが誕生した。


「まだ変身形態あったんですか!?」


「後一つ切り札があるけどね!!」


 そう言ってトライデントで近場の怪人の一体を突き飛ばす。

 春歌も左腰のホルスターにあるハートブラスターで次々と撃ち抜いていく。

 怪人達も二人に注目し始めた。

 生徒達も皆二人のレヴァイザーへと注目している。


「絶対絶望の道を歩ませやしない!」 


「自分の意思は自分で決めます!」


 そう言って二人は敵の群れを薙ぎ倒していく。

 軽く運動場内には百体近くはいる。

 猛はもとより春歌も正直恐かった。

 

 だけど自分は一人で戦っているわけではない。 

 傍には猛がいる。

 皆もきっと何処かで戦っているのだから。


 だから春歌は戦えた。



 天照大橋。

 本州と天照学園を繋ぐ道。

 そこに自衛隊基地を襲撃していた大量の怪人が押し寄せていた。


 そこを守るのは学園島の軍事部門。

 天照学園の技術力と天村財閥とが共同開発したパワードスーツ・ブレイバーユニット軍団。


 自衛隊のCASユニットと同じく洗練されたスマートなフォルムをしている。

 手に持った銃火器で応戦し、ある物は生身で応戦していた。


 その傍らでは取り残された住民達の救助活動を行っている。


 警備部門も内部で避難誘導をしていたりと大忙しだ。


『ここから先に通すな!』


『こいつらを通したら大量の犠牲者が出る! 命に変えても阻止するぞ!』


 装甲車や戦闘ヘリまでもを引っ張り出しているが相手の数が多い。

 それに耐久力は普通の人間とは違い桁違いである。


「このままギャング風情の思い通りに事が進むのは流石に気にくわないね」


 駅からそれを眺めていた人間がいた。


 ジェネシスの裏切り者。黒崎カイトの仇。学園が怪人だらけになった原因の一つ。

 そして日本政府と繋がりを持つ科学者である海堂 怜治は飄々とした態度で変身体勢に入る。

 バックルベルトを巻き付け黄金のメダルを入れる。


「プロフェッサー、何をなさるつもりで?」


 あの長い水色髪の白いハイレグパワードスーツを身に纏っている、恥辱の精神をかなぐり捨ててるとしか思えないダイナマイトボディの女性が傍にいた。


「妨害がてら、ちょっとしたデーター収集さ」


 そう言って変身した。

 まるで赤い騎士の様な姿だ。

 黒いマントに白淵の赤いアーマー。

 額には金の、まるで髪を編み込んだかのような一対の飾り付け。

 手には装飾が施された剣を持っている。


『さて、暴れてくるとしますか』


 駅の窓を突き破り、怪人達の集団の前に躍り出る。

 そして再び飛び込み周囲を一閃。

 それだけで怪人達が爆散していった。


『ハハハハ、圧倒的じゃないか僕のスーツは!!』 


 凄まじい勢いで次々と怪人を叩き切っていく。

 パワー、スピードともにデザイアメダルの怪人よりも桁違いだった。

 こうして天照大橋から大量に怪人が突入するのは防がれる事となる。   


☆  


 その頃、揚羽 舞は――アーカディアの施設前で戦っていた。

 アーカディアのメンバーの中で揚羽 舞は最強クラスの戦闘力を持っている。

 しかし数の暴力は流石にどうにもならなかった。


(大技で一気に仕留める!? だけど長期戦になってるし――志郎達は何やってんのよ!?)


 と愚痴りながら戦い続ける。


『聞こえてますか舞さん』


「志郎、アンタ何処にいんの!? こっちは取り込み中よ!?」


 ソルジャーメダルの量産型メダル相手に回し蹴りをキメながら返事する。


『良かった無事だったんですね』


「そっちは大丈夫なの?」


『今目の前のアーカディアの施設の中にいます。此方にも大量にメダルの怪人が現れていて避難誘導している状況です』


「一体全体どうなってるの!? そもそもアイツらの計画は特殊な電波を浴びせて一気に起動させる物じゃ無かったの!?」


『ええ、その機械の輸送を多少強引な手を使って阻止する手筈でした。条件に一致する建物をリークし、見張りを置いて何時でも阻止出来る体勢は整っていました』 


「だけどこの大量発生はどう言う事なの!?」 


 八つ当たり気味に怪人を殴り飛ばしながら訴える。


『いえ、これはまだ計画の一部に過ぎないと思います。私の予測では既にムクロは装置と共にこの騒ぎに乗じて学園内に潜入し、計画を遂行しようと考えている筈です』


「その根拠は?」


『戦いながらの情報収集は疲れますね・・・・・・メダルの発生源は自衛隊基地、近くの町の出島、中央の学園地区、出島、天照大橋、そしてこのアーカディアです。もし計画通りに物事を進めているのならば学園の隅々まで怪人が出現している筈です』


「確かにそうだけど――」


『近くに大量のメダルを運び込み、怪人化させた奴が居る筈です! そいつはまだ学園内に存在します! そいつも倒さないとどうにもならない!』


「分かったわ。今すぐ此奴らを片付けて――」


『いえ、舞さんは探索に向かって下さい』


「え? けど?」


『いいから早く! 何時までも守勢に回っていたら手遅れになる! 私は大丈夫です! 他にも仲間が頑張ってくれてますから!』


 こんな必死に訴えかける声は久し振りに聞いた。

 何時も飄々としている志郎がこんな事を言うのは余程の事である。

 舞は――


「分かったわ。行ってくる」


『死なないでとかは言わないんですね?』


「死ぬようなタマじゃ無いでしょアンタ」


『酷いですね――』


 そして戦線離脱。

 空中に飛び上がりアーカディア周辺の周囲を探った。


(と言ってもメダルを大量に持ち運ぶ方法なんて幾らでもあるじゃない。)


 メダルは手の平サイズだ。

 重量とかどうやってそれだけの量を精製出来るかの問題を無視すれば幾らでも持ち込む方法はある。

 トラックなどを使わなくても、人力で持ち運ぶと言う手段もあるのだ。


(だけど、よく考えれば指令を受けて実行に移してるのならばどっかで観察している可能性も――)


 そう思いつつ周辺を探る。

 そしてやや離れた所に黒いワゴン車が置いてあった。


 傍には背中に戦闘機の翼を生やし、頭部は鉛筆の先みたいな形状をしている怪人なのかヒーローなのか判別し辛い形状の奴がいた。

 だが腕にはウォッチを嵌めている。

 つまり奴が襲撃者なのだ。


「いたわ!」


 そう言って飛び掛かる。


『待っていたぞ!』


 そして相手も此方に気付いたのか背中のブースターを噴かして飛び掛かる。


「待っていたですって!?」


 舞は殴り飛ばそうとする。

 しかし素早く上へ避けられ、勢いよく上昇して行った。

 舞も追い掛けるように上昇する。


『何れ強引に突破して来るのは分かったが・・・・・・まさか仲間を見捨ててこっちを狙って来るとはな!』


「テメェこっちが気にしていることを――誰のせいだと思ってるのよ!?」


 そう言って両手を向けてサイクロンを巻き起こす。


『おっと!?』


「これならどう!?」


 今度は雷を何度も連射した。

 勢いよく射出された雷の矢は光の速度よりかは劣るがそれでも銃弾より遥かに早いスピードだ。


『フェアリーにこんな機能が!?』


 セイントフェアリーの活動期間は長い。

 その為ある程度の戦闘能力の解説は纏めサイトに上げられている。

 知らない能力がある事に驚いた様子だった。 


「開発者は凝り性なの。それに中々使う機会に恵まれなかったからね!!」


 今度は炎の弾丸が雨あられの様に襲い来る。


『クッ!!』


 それを避けると今度は逃げた先に氷の氷柱が大量に襲い来る。

 交わしきれず何発か被弾した。 


『一体幾つ能力を持っているのだ!?』


「志郎は、アイツは、私に絶対無敵のヒロインである事を望んだ。だから私もそれに応える――」


 そして両手を合わせ、風と雷が融合する。


「サンダーストーム!!」


『う、うわああああああああああああああああああ!?』


 避けようとするも傷付いた体では避ける事も出来ず、雷の嵐に巻き込まれ、戦闘機の怪人は火花を巻き起こしながら吹き飛んでいく。

 見捨てるのも後味悪いので舞は救出に向かった。


「さて、一丁上がりっと――」


 アーカディア敷地内の道端に置いて施設を見る。

 彼方此方で火の手が上がり、爆発が起きている。

 今頃激しい戦闘を行っているのだろう。


(死なないでよね、志郎――)


 そして舞は意を決した様に飛び去って行った。



 アーカディアの施設内部では激しい戦闘が繰り広げられていた。

 残っているのは天村 志郎と若葉 佐恵だけで他のスタッフは避難させた。

 施設内、司令室でもそうだった。


『他の面々は別の出口から脱出させ、あるいはトレーラーに収容しました若葉さんも脱出して下さい』


「ええ。そうね――」


 そして若葉 佐恵は出血を負って倒れていた。

 血が肩からドクドク出ている。

 止血をしているがどうにもならない。 


 余りの乱戦の中で指揮を執り、身を守ると言うのは至難の技である。

 不意の一撃を食らい、大きな傷を負ったのだ。


『・・・・・・森口さんに合流するように言います。それまで持ち堪えて』


「いいのよ――これは報いよ」


『今はそれどころでは――』


「本当はね? 研究成果の平和理由なんてどうでも良かった。ただ誰かに認められたくて、評価されたくて研究に打ち込んでたのよ」


『その気持ちは分かります。私も科学者ですから』


「強いのね君は・・・・・・」


『そんな事は――』


「私は・・・・・・間接的にデザイアメダルと言う化け物を産み出して、多くの人間の人生を翻弄した。その事実に気付いて・・・・・・正直どうにかなりそうだった。本当はとても辛かった。辛かったの」


『・・・・・・ならまだ死んではなりません。見届ける義務がある筈です』


「貴方は――とっても――優しい――のね――」


 志郎のインペリアスが若葉 佐恵の状態を正確に捉えていた。

 心肺、脈拍停止。

 涙を流しながら彼女は息絶えた。


(何時か・・・・・・こうなる予感はしていました・・・・・・)


 彼女はもともと長くは生きられなかった。

 志郎はそんな予感はしていた。


 何かの病を持っているとかじゃなくて精神的にである。

 彼女は純粋で、そしてなまじ心が強いせいで弱味を出せず、どんどん精神的に消耗していった。

 それでも酒などに溺れる事無く生きられたのは大した物である。


(だけど・・・・・・若葉さんには例え望まぬ形で産まれた研究成果の行く末を見届けて欲しかった・・・・・・)  


 志郎は若葉 佐恵と共にアーカディアの施設を後にした。

 施設内に生体反応は無し

 ゾンビの様に怪人が蠢いているだけである。



 そしてアーカディアの施設は爆破された。 

 中に居た怪人も残っていた研究データーも何もかも全て。





 まだジェネシスが存在していた頃。



 若葉 佐恵と天村 志郎は交友関係が深かった。


 歳は離れていたが科学者同士と言う事もあってか息が合った。


 何だかんだで趣味も合った。


 ――ねえ、志郎はどんな研究をしてるのかしら?


 ――そうですね。愛する人を守るのと、愛する人を輝かせたい。そんな研究をしています。


 ――あら、素敵ね。愛されてる子はきっと幸せ者だわ。


 ――さてはてそれはどうでしょうか?


 胸の内を明かす事もあった。



 しかしジェネシスの襲撃事件が起きた後、彼女は明るく振る舞いながらも何処かずっと贖罪を求め続けていた。


 ずっとずっと。


 ――私この戦いが終わったら、何処か遠い所に行きたいわね。そこでノンビリと羽目を外して暮らすの。


 天村 志郎は天才ではあるが全能ではない。


 ――え、それ死亡フラグだって? まっさか~死ぬつもりは無いわよ。こう見えても私結構しぶといんだから♪


 彼女を、破滅への道から救う事は出来なかった。




 脱出したジェネシスの職員に遺体を引き渡し、天村 志郎はサイドカーが付いたヒロイックなデザインのバイクと共に駆ける。


(僕は戦います。博士の研究を見届ける為にも)


 辛い。


 とても辛い。


 だが戦いはまだ続いている。


 泣くのは終わってからでも遅くは無いだろう。 


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