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ヒーローロード  作者: MrR
ブラックスカル編
19/72

第十四話「決戦の始まり」

程よくキリが良いので投稿です。


 まだ日が昇りきっていない早朝の天照学園基地。

 そこで政府が産み出した戦闘様パワードスーツ、CASユニット部隊が増員されていた。


 榊 誠一郎は前回の戦いで醜態を晒してしまい、その報復で今直ぐにでも天照学園に乗り込みたかった。

 だが現在の政府のやり方に不信感があるのも事実だ。


 現在、榊 誠一郎はイヤイヤながら一ギャングと政府の為に汚れ仕事を請けおっている。 

 上手く行けば政府は天照学園を事実上支配下に置く事が出来る。

 その為のマシンを建造して渡し終え、そして次の段階としてメダルを学園中にばらまく作業をしていた。


 メダルは民間のトラックや人力による人海戦術で送り込む手筈だ。

 警備部は天照学園の内通者、であり、理事長でもある巳堂 誠司が抑えており、警察の介入も政府の手で封じ込めている。


 そしてメダルをばら蒔き終えた後、天照学園に強行して軍事介入を行い、ブラックスカルをスケープゴートにする手筈だ。

 巳堂 誠司は政府の犬として活動して貰う手筈だが、上の考え次第では消す事になるかもしれない。


(幾ら弱味を握っていようが所詮はギャング組織だ。手は幾らでもある) 


 ブラックスカルに対して後手に回っているが榊はそう自分に言い聞かせた。

 構成員も何処かの国の工作員とかではなく、不良崩れの連中であり内部工作で切り崩しは幾らでも可能だ。


「今週のヒーローTVのコーナーです! 今週のヒーローは此方!!」


 休憩室の部屋のテレビにはヒーローの紹介コーナーが流されていた。

 マスコミ連中は天照学園を批判するどころか、完全にヒーローと怪人との戦いを見世物としてお茶の間に提供している。

 これも誤算の一つだ。

 ヒーローの数が予想以上に多く、メダルをばらまいても対応されているのが現実だ。


 その現実に忌々しさを感じていた。


(この国の連中は分かっているのか? もうこの国は限界なんだぞ・・・・・・)


 榊 誠一郎は自分こそが国を救う救世主の資格を持った人間であり、そしてその為なら多少の犠牲は厭わないと思っていた。

 それ程までにこの国は腐敗していた。 


 選挙の公約をマトモに守れない政治家達。


 批判する事しか能が無い野党や市民団体。


 汚職が当たり前の様に存在する警察。


 放送の自由を盾に好き勝手にするマスコミとマスコミの言う事を真に受ける馬鹿な有権者達。


 そんな世の中をネットの世界でしか批判できない若者。いたとしても偏差値が低くて騒ぎたいだけの馬鹿だけ。


 経済界も殿様商売やブラック企業の横行、技術立国にも関わらず技術の冷遇ときている。その点を突かれて天照学園に大きくリードされ、政財界でも天照学園出身者の人間が着実に勢力を伸ばしている。


 さらに2011年に起きた東日本大震災は大地震と津波が重なり、三万人近くの命がなくなった。

 しかしこの国は毎年三万人以上の人間が自殺する。しかもこれは確認出来ている範囲で実は十五万人以上の人間が自殺していると言われ、実に先進諸国の十倍であると言われている。


 これの何処が平和な先進国だと言うのだろうか。    

 いっそ一回革命でも起こして一から国を作り直した方が手っ取り早いとすら思える。


(それを変えるためにも天照学園には生け贄になってもらう)


 民主主義国家な以上、そう言う国にした政治家達を選んだ国民にも責任はあるが、国民は無責任だ。

 何時も被害者面して好き勝手文句だけ言い、行動を起こしても礼儀正しいデモか他国に雇われた市民団体だけだ。


 その意識を変えるためにもこの計画は必要不可欠だと考えていた。


(ブラックスカルの連中も、天照学園も国家に逆らう事の愚かさを教えてやる・・・・・・)


 そうしてガラス張りの壁から基地の敷地内を見下ろす。

 CASユニット達が慣熟訓練を行っていた。周囲では手が空いている自衛隊員が物珍しげに眺めている。

 全ての段取りは整えつつある。


「警報!?」


 警報が鳴り響いた。

 そして爆発が起きる。


 部下が走ってきた。


「何事だ!?」


「デザイアメダルの怪人です!! 突然襲撃されて――現在応戦中です!!」


 それだけ聞いて今起きている事件の全体像が読めた。


「まさかブラックスカルめ!?」


 裏切られると分かって、手始めにこの天照基地を叩き潰しに来たのだ。

 色々と疑問点があるがそうとしか考えられない。



 ブラックスカル――ムクロは怪人と一緒に襲撃していた。


 目指す先は機密ブロック。

 天照基地内にあるデザイアメダルの保管庫だった。

 傍には撮影機材を持った怪人が襲撃の様子を撮影している。


 自衛隊と怪人との戦いは激しさを増していたが怪人側が優勢だった。

 連日の怪人騒ぎで警戒はしていただろうが、実戦経験が皆無な上に銃弾が効かず、乗用車程度ならひっくり返せるパワーを持った相手との戦いだ。 

 それが現在基地内で無差別に百体以上襲撃している。


 ネットの力は偉大だ。

 今はテロリストがネットで入手出来る衛星写真を使って軍事基地の居場所を突き止める事が出来る。


 それである程度基地の全体像は入手できていた。


 そこから遠方から車両の出入りなどを確認したりしてさらに細部を詰め、真っ先に兵舎や格納庫、停泊している艦船、滑走路を破壊するように指示した。

 兵舎や格納庫は遠距離攻撃型の怪人が襲撃した。


 艦船の攻撃部隊は船底に穴を開けまくるだけでいいと伝えている。

 そっから海水が流れ込んで勝手に沈んでいくからだ。そうなれば幾らダメージコントロールが優秀でも限界がある。


 飛行機の滑走路は力任せに道をデコボコにしたりすればいいと伝えてあった。


 僅か数分で基地の機能は半分以上低下している。

 ムクロが考案した電撃作戦は型通りに嵌まった。


『クククク――遮断されていても感じるぞ・・・・・・メダルの位置が・・・・・・』 


 そうして殺風景な研究棟に辿り着く。

 そこにはメダルが大量に保管されている。

 恐らく軍事利用を視野にいれて研究素材として溜め込んでいたのだろう。


「か、怪人!?」


「う、動くな!?」


 ガードに付いていた自衛隊員が銃を向けるが手足が震えている。

 顔も蒼白な状態だった。


『こんな状況でも命よりも憲法が優先か? 優秀な自衛官だよ』


 そして相手が瞬きするよりも早く一瞬で距離を詰めて殴り飛ばした。

 両者の顔が体から吹き飛ぶ。


『おかげで殺しやすい』


 と皮肉を利かせて内部に進入した。


☆  


 榊 誠一郎は部下達と一緒にヘリで脱出する。

 眼下は地獄絵図と言う言葉がとても似合う状況だ。


 力任せに引き千切れられる自衛官。

 轟々と炎上する建物。

 爆発する格納庫。

 沈みゆく駆逐艦。


 まさかこんな大胆な行動に出るとは思わなかったが榊 誠一郎は次の手を考える。 


(奇襲で天照基地を陥落させてもそれまでだ! もう政府も日和見な対応は出来まい!)


 その事にとても嬉しく思った。

 こう言う前例さえ作ってしまえば今後自衛隊の活動も躊躇う事は無いだろう。

 もしかすると憲法改正も出来るかも知れない。

 必死に自衛官達が戦っている中でそんな妄想を膨らませていた。


「たたた、た、大変です!!」


「今度は何だ!?」


「アイツらネットに動画を流しています!!」


「動画で自分の悪行を流したところで何になる!? こちらとしても好都合だ!!」


「それが――」


『我々はブラックスカルはここに真実を明かそう――』   


 そしてスマフォを見せてきた。

 そこには怪人体のブラックスカルがアンティーク調の椅子に座り、そしてエンブレムが入ったカーテンをバックに演説していた。


『今、天照学園ではヒーローと怪人との戦いが繰り広げられている。ヒーローは定かでは無い。だが怪人はこのメダルとウォッチを使って変身した物だ。我々はこれをデザイアメダルと呼んでいる』


「こいつ正気か!?」


 堂々と国家機密をばらしている。

 正気とは思えなかった。


『我々は日本政府に半ば脅迫されて、これの売人をやっていたギャングでしかない――そう、このデザイアメダルはそもそも天照学園から奪った技術で日本政府が誕生させた物だ』


「誰かこの動画を削除しろ!?」


「無理です!! 今の時代、ネットに上がった動画はどんなに頑張っても削除は不可能です!! 既にテレビでも報じられています!!」


 そしてヘリに搭載されたテレビをつけてガムシャラにテレビのチャンネルを切り替える。


『現在天照基地では激しい戦闘が繰り広げられていて大変危険となっているため、遠方からの撮影となっております!!』


 ピッ


『ネットでこの様な動画が流れていますが本当に政府の陰謀でしょうか?』


『天照学園に工作員を送り込んで研究を強奪し、人を怪人化させる麻薬をブラックスカルと言うギャンググループを通して天照学園に蔓延させたわけですな?』


『これが本当だとすればとんでもない事ですよ』


 ピッ


『此方は国会議事堂です!! どんどん人が集まって来ています!! 何時ものデモと違い、若者や会社員の姿も見受けられます!! 既に機動隊も配備され――』


 ピッ


「クソ!!」


 そしてテレビを切った。

 最悪な状況だ。

 今頃国会は大騒ぎだろう。


「天照学園から奪った事や、デザイアメダルの事、政府と天照学園の事、そして最後の計画の内容まで全部ぶちまけてます!」


「分かっている!」


 更に調べてみればご丁寧に天照基地の極秘施設やブラックスカルと政府とのやり取りや交渉の内容の音声動画までネットにUPされている。

 これでは言い訳は出来ない。

 内閣総辞職は間逃れないだろう。国家機能も麻痺している。自衛隊も動かせない。警察では戦闘力が不足して大量に死人が出るのがオチだ。


 だがそれよりも心配な事があった。

 自分の今後の事である。


「とにかく永田町近くまで飛ばしてくれ!!」


 自分が描いたシナリオが完全に崩壊した。   

 出来る事は己の保身を守るのみだ。



 この事態は巳堂 誠司も察知して屋敷から逃げだそうとしていた。

 元々警備部の反発を強引に押さえ込んでいた。他の理事会のメンバーや理事長達を上手い事言いくるめてだ。


 しかしブラックスカルが何もかも暴露した。

 このままでは理事会の役員どころではない。

 一端何処かに雲隠れしようとした。


『何処に逃げるつもりだ親父――』


「お前は――白夜か!?」


 巳堂 白夜がいた。

 嘗て病院前の戦いでブラックスカルノメンバーを回収する時、レヴァイザーと立ち塞がった時に身に付けていた白蛇のパワードスーツだ。

 父親の書斎に、逃げ支度をしていた誠司の前に堂々と威圧しながら近寄ってくる。


『もう終わりだよ。俺もアンタも――』


「まて、何を考えている・・・・・・」


『母親が離婚した理由が良く分かったよ――俺はケジメを付ける。だがその前に――テメェだけは許さねえ』


「お前は俺の息子だろう!? 育ててやった恩を忘れたか!?」


『俺をここまで巻き込んでおいで父親面かよ? それに今は親が子を殺すのも珍しくない時代だ。逆に子が親をぶっ殺しても別に珍しくねえよな?』


 そう言ってゆっくりと歩み寄る。


「ま、待て!! 考え直せ!!」


『どの道もうアンタに逃げ場はねえよ。だからアンタの息子として、せめてもの引導を渡してやる』


「う、うわああああああああああああああああああ!?」


 その後、警備部が遅れて駆け付けたが彼達が見た物はメチャクチャにされた書斎と全身打撲の大怪我を負い、血みどろになって倒れ伏した巳堂 誠司だ。

 ピクピクと痙攣している。

 巳堂 白夜の姿はその場には無かった。





 天照基地近くにある繁華街、通称出島にも怪人は大量に出現していた。

 ヒーロー達も大量に出現していたが数では圧倒的に劣っている。

 雑魚のソルジャーメダルが特撮物の戦闘員の様に湧き出て、怪人が手当たり次第に攻撃していた。


 女児向け変身ヒロインアニメに出て来る様な女の子。


 メタルヒーロー。


 戦隊ヒーロー。


 ライダー風。


 個性豊かなヒーロー達が集結していた。


 今までアーカディアと共に学園の影で支え続けていた名も無きヒーロー達。


 見返りも何も無く、ただ自分達が出来ることを精一杯やり遂げるために戦う。


 それはこの繁華街だけでなく、天照学園でもそうだった。

 異常な数の怪人が大量発生している。

 東の繁華街エリアでは激戦が繰り広げられていた。


『こんな状況で何処に逃げればいいのやら・・・・・・』


「頑張って兄ちゃん」


『あいよ――』


 その中には谷川 亮太郎と川島 愛菜の姿も合った。

 既に戦闘状態に陥っており、谷川 亮太郎はクラディスを身に纏って戦っている。

 川島 愛菜は専ら避難誘導だ。時折光線銃で雑魚を倒している。 


『つか、俺はともかく学校はどうした?』


「心配だからサボった。それにこっちのが面白そうだし」


『一言余計だぞ』


 そう言って亮太郎は雑魚を殴り飛ばす。

 ヒーローが大勢居るので楽なもんである。


『とにかく人命救助を優先な』


「了解兄ちゃん」


 そして二人は激闘の真っ直中に飛び込んでいく。

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