8話 猫の娘
大分原型がなくなっていますが、そもそも原型などあってなかった!
あえてそう言っておきます。
あ、感想などありましたらどうかよろしくお願いします。
俺達は猫に渡された密書を手にギルドハウスに帰ってきた。
なんかみんなクスクス笑ってる気がするが……まあ茶番だった訳だしなこの任務。
「お疲れ様ー大丈夫だったみたいね、ご苦労様密書を渡してもらえるかしら?」
リイヤさんが俺達のとこまでやってきて右手を差し出す。俺はそのまま無言で渡した。
「はい、確かに、それじゃ読むわよみんな集まって」
密書なのにみんなの前で読むのかよ……新人試しじゃもしかして大した内容じゃないのか?
俺たちを取り囲むようにみんなが集まってくる。
「それじゃ、言うわよ、どーせあの王様の情報だから大した量じゃないと思うから気楽にね。『異世界から勇者を召喚して魔王を倒させる』ですって……え!勇者ぁ!?」
リイヤさんが素っ頓狂な声を上げる他の奴らもざわざわしてきた、ただその中で無反応というか反応が薄い俺達、その勇者当人としては今更な情報である。
この世界の情報網って大して凄くないんだな、期待して損した。
「と、とにかくこの情報を魔王様に直ぐ報告しなきゃ、ショーゴ君達……悪いけど魔王国に行ってくれないかな? 今、手が空いている人が居ないんだけど」
「えっと魔王ってアレですよね、魔族の王様?」
「そうそう、私達の大元の組織は既に魔王側と通じてるのよ、というか世界王以外の勢力は魔王と少なからず通じてるわ」
衝撃の事実、というかそこまで言ってるなら世界王引きずり下ろしてとっとと和平結べばいいんじゃね?
「ということは世界王派閥って結構少ないのか?」
「ええ、少ないというより王とその側近と巫女ぐらいなものだったと思うわ」
「それってみんなで攻めれば直ぐにでも終わりそうな気がするけど?」
俺はリイヤさんに疑問をぶつけてみたが彼女は首を横に振った。
「ううん、無理ね……こちらは肝心の魔王様が城から動けない上に一枚岩って訳じゃないから連携が取れなくて、それに比べたら世界王は数は少ないけど統率は取れてるから少数精鋭ってとこかしらね」
「そうなのか、それで魔王国というのはどこにあるんだ? 行ってこいと言われても俺達場所は知らないぞ」
「あ、それはね……ミケネ、いらっしゃい」
リイヤさんに呼ばれたミケネ――――女の子が人をかき分けてやってきた、猫耳に尻尾付きそして白髪、黒髪、茶髪と三色混じりあった髪色をしている……どことなくあの猫を彷彿とさせる出で立ちだ。
「この子に案内させるわ、この子は貴方たちと会ったミケの娘なのよ」
「み、ミケネですよろしくお願いしま、す」
緊張してるのかガタガタを震えるミケネ、大丈夫か? こんなんで。
「娘っていうが……コイツはどう見ても人の姿をしてるが?」
あの猫はまんま猫だったか、コイツは獣人と言う感じでまるっきり種族が違う気がする。
「――――ああ、この子のお母さんが人間だからね、猫と人間の間に生まれる子が猫獣人になるなんて常識でしょう?」
そんな常識は知らない。しかもこんな都合よく耳と尻尾だけ遺伝するとかどうなってんだよ?
「ああ、そうなのか。俺は正吾、それでこっちが響也と亜理子だ」
名乗ってから俺の後ろに引っ込んでる二人を紹介する……こいつら見かけに寄らず恥ずかしがり屋だったり人見知りだったりするからな、前者は響也、後者が亜理子だ。
二人揃って軽く会釈する、少しはなんとか言えないもんか? 相手が似たようなもんだし今は大目に見るがこれから一緒に旅をすることになるってのに。
「それじゃあこれ、旅費と少ないけど食料ね、すぐに出立してくれる?」
そう言ってリイヤさんは俺にちょっと小さい革袋を四つ手渡した……どうやら空間魔法の類が仕込んであるらしく、革袋の中を覗くと金貨や果物が入っていた。こんなの俺がいれば必要ないんだけどな、貰っといて損はないだろう。
「あ、それ貸すだけだからね? 戻ってきたらちゃんと返してね」
「ケチだな……まあいいけど、いくらなんでも準備が良すぎるんじゃないか?」
「ここまで織り込み済みだからね、それじゃあ早速行ってらっしゃい!」
そして呆然とする俺たち四人はあっという間に街の外に放り出されましたとさ――――今、何されたんだ?
こうして俺たちの冒険は始まったのである。
「あのー……そっちじゃなくてこっちですよ?」
ミケネが可哀想なものを見る目で俺を見てくる……や、やめろ! そんな目で俺を見るな。
「あーいやすまん、そっちか……ほら響也、亜理子行くぞ! っていうかお前らいつまでそうしてんだよいい加減慣れろよ猫一匹ぐらい」
俺の影から出てこようとしない二人の肩を掴みミケネの前に引きずり出す。
「ね、猫……」
猫と言われたことがショックだったのかミケネは涙目に……。
「お、おい泣くなって……お前らも『あー泣ーかした、泣ーかした』みたいな目で見てんじゃねぇよ!」
「ふっ、悪かったなウチの正吾がこいつも悪気があった訳じゃないんだ許してやってくれねぇか?」
「ごめんね、しょーご君も普段は優しいから」
俺そっちのけでミケネを慰め始めた響也と亜理子、俺を出しに使いやがったな。
「だ、大丈夫です……ただ、私達ハーフキャットは人間達から迫害されていまして、ふ、普段から乱暴とかされるんです……それで、その、あの……」
ミケネはミケネでトラウマのスイッチが入ってしまったらしい――――この先こんなんで大丈夫なのか? 俺達……。