7話 猫
そうだ、猫を召喚ぼう。
そうだったんだよ、猫探しだったな……すっかり忘れてたぜ、何せ依頼書は亜理子が持ってたからな。俺たちじゃ無くすからってよ。
でも『空間把握』じゃ探しきれんな……どうしよう。
《召喚魔法》
『空間検索』
なんかいい感じのが出た。これは同一空間(壁や天井などの仕切りがない場所)において、固有名詞、または種類を選択し調べてそれがどこに存在するかを確認できる魔法らしい。
――――『猫』で検索っと……無理。なんだよここ猫いっぱい居るんだが……じゃあ名前で調べるか?
「なぁ、亜理子……猫の名前なんだっけ?」
「えっとね……ニルテテスだよ」
ニルテテスねぇ、変な名前だなさすが異世界。
――――『ニルテテス 猫』で検索……ヒット、ってアレ? なんかすぐ近くにいんぞ。
「えーと『空間歪曲』っと」
『空間歪曲』で猫を引っ張り寄せた、どうやら三毛猫のようだ。
「ここどこにゃ!? はっ……吾輩は猫であ――――」
「おっと手が滑った」
俺は猫を元の場所に飛ばした……なんだったんだあいつ。
「えーと、しょーご君ダメだよちゃんと向き合わないと」
それは現実と? それとも猫とか?
「全く失礼な新人だにゃ」
背後に二足歩行する猫が立っていた、そういや元の場所って言っても俺らからそんなに離れた場所じゃなかったな。
「新人って言い方をするって事はアンタも『真実の瞳』のメンバーか」
初対面でここまで馴れ馴れしい猫との接点など他に知らない。
「いかにも……吾輩はリーダーのリイヤの右腕……の小指の第二関節ぐらいのケットシーのミケだにゃ」
三毛猫でミケ! なんと安直なことだろうか。つかニルテテスは何処に行った。
「ニルテテスじゃないのか」
「それは潜入先によってのコードネームだにゃ、まあ今回がたまたまニルテテスだったというだけにゃ」
それだと検索の基準がよくわからないな、コードネームでも引っかかるもんなのか。
「それじゃこの依頼ってなんだよ?」
「そりゃ新人を試すやつに決まってるにゃ、まあ君らはそもそも合格だからする必要ないんだがにゃ……他に示しが付かないからって事で一応にゃ」
「それじゃ依頼はどうなるんだ?」
「そうだにゃーリイヤにこの密書を届けたら完了でいいにゃ」
猫が器用に四つ折りにした紙切れを差し出してくる。
「中身は途中で読んだら駄目にゃ、ちゃんとリイヤに渡すんにゃよ?」
「ああ、わかったよ……行くぞ響也、亜理子」
そう言って俺達は猫と別れて民家へと帰っていく……そういや亜理子って今日特に何もしてないな。