65話 スルーして帰還
苦し紛れの更新!
そして明日は無理っぽいです、ごめんなさい。
俺たちが今居るこの超未来都市は実は吉岡の金属生成能力によるハリボテに過ぎず、住人などは一切居ないと大倉が言っていた。
現にこの場に存在する生命反応は俺と響也に吉岡と大倉だけだった……この土地の地下に神様っぽい反応はあるが今は無視してもいいとして、急を要する案件としてはブチ切れた響也をどう黙らせるかだ。
まず障害となるのは大倉と吉岡か、こいつらは特殊能力的なものは会得しているとは言え身体的には普通の人間と同じだったようだし、無茶は出来ないので避難させる必要があるだろう。
次に響也だ、あいつは恐らく俺が立ち上がるのを待っているはずだ、ブチ切れてるとは言え死体蹴りのような真似はしないからな、でも少しでも起き上がる素振りを見せたら殴りに来るはずだ、それは親友として断言できる。
故に俺が一先ず取るべき行動は逃げることだ――――響也の勘の鋭さは異常とも言えるのでこの体制から転移してあの二人を別の場所に移動させている間に一撃入れられているだろう。
女には手を出さないが俺には手を出す状況であるが故にその余波で大倉達が怪我をする可能性なんてのは全く考えていないはずだしな。
「え、ちょっと彼大丈夫なの?」
変態要素の欠けた口調の大倉が俺に駆け寄って来てそのまま俺を指差し、響也に確認しているようだ。
「大丈夫だ、どうせ狸寝入りだろ……さっさと起きろよ、女子が邪魔だってんなら待っといてやるから」
待っといてやるか……嘘だな、二人を逃がすのは本当だろうけど居なくなったら直ぐに殴りかかってくるはずだ。
「分かったよ、その代わり少し待て、俺はお前と接近戦をするつもりはない」
立ち上がりながら響也を確認すると腕を組んで仁王立ちして般若のような顔をしていた。
「……とりあえず二人ともこっちに来い、今から送り返すから」
そう言うと吉岡と大倉は素直に応じてこちらに近づいてきたので軽く肩にタッチする感じで送り返した、特に場所の指定もしなかったが恐らく学校かその周辺には送ることは出来たはずだ。
二人を送った後直ぐに俺は両腕で顔を覆いガードした、そこへ強烈な響也の一撃が決まり俺はその勢いを活かし後ろへと大きく後退した。
「浅かったか……」
チッっと舌打ちする響也、俺は痺れる腕を振り痺れを取りつつ相手の出方を見る、キレた時の響也は勘がいいので下手に手を出すよりもカウンターを決めたほうが勝率は上がる。
「何が『浅かったか』だよ、お前本当に加減ってもんを知らないな……念の為に聞くけどそこまでキレてんのは吉岡絡みか?」
「ああ、そうだよ……お前があいつを差し向けたんだろ、おかげでまたバックルを取られたよ」
そういう響也をよく見るとベルトを帯のように巻き、きつめに縛っている、結ばれているベルトの先端は何にか鋭利なもので切り取られたようになっていた。
「あの剣はお前が投げたんだろ? あの剣を手にした吉岡に切りかかられて避けたと思ったら見事にベルトだけ切られててな、あまりにも執着するもんだからくれてやったけどよ」
付き合っていたころのトラウマが再発したというのか、それはなんとも災難だったな――――俺は少しやり過ぎだったようだ、一人であてもない捜索活動をしていたからといって響也に八つ当たりをするのは間違っていたな……。
それでもキレてしまった響也と和解するには謝罪なんて要らない……拳と拳で語り合うという方法でしかあいつは納得してくれない。
「いくぞこの喧嘩馬鹿、折れたら治療費請求すっからな!」
右拳を振り上げて走り出した俺に身構える響也、俺がいつ転移してどこに転移してくるのかを見切るためにじっと俺を見据えている。
走り出した俺は転移せずにそのまま響也に接近して裏を掻きそのまま殴りかかると見せかけつつ転移して見せて、ほんの数秒過去の同じ位置に現れ、思いっきり拳を振りかぶった。
俺の拳は響也の左頬を捉える、そして接触した時にありったけの魔力を込めて響也を吹き飛ばす、響也は俺の放った魔力を帯びているので世界の壁に思いっきり叩きつけられ、それをぶち破り――――元の世界へと帰っていった。
今回は座標指定なんて全くしていないので元の世界の地球上のどこかに飛んだはずだ。
「響也なら地球の裏側からだって帰れるだろう、きっと」
言い訳がましい事を言いつつ俺はそのまま振り返るとそこには先程まで存在しなかった女性の姿があったので俺は、見なかった事にして、一言。
「さて、俺も帰ってあいつらに会いに行かなくちゃな……」
俺は颯爽と元の世界に帰還した、俺の知り合いに仏様なんて存在しないからな。
異世界から転移する際に「馬鹿……」と聞こえたのは気のせいだろう……俺にとって彼女はかけがえのない空気さんなのだから。




