64話 怒の響也
口封じ、それは口止めとは異なり容易に喋ることができない状況に追い込むことである……用途としては殺害する意味合いで使われる言葉だ。
「口封じ完了」
「――――! ……――――? ――――!!」
俺の横で口をパクパク動かし騒いでいる大倉を放置して俺は口封じの際に咄嗟に気絶させた服部を大倉から引き剥がし、お姫様抱っこで持ち上げ、地面に元の世界に通じる穴を開き、向こう側の位置を服部の部屋と念じながら繋げてみた……住所は知らんし起こして聞き出すのも面倒なので、若干適当であるが、穴を覗き込んで見える部屋の内装は質素でとても女の子の部屋とは思えない飾りっけのなさであり貧相なデザインの椅子や机、ベッドなどが置かれているところを見る限り疑いようもないのでそのままベッドに落ちるように服部を穴の中へ放り込んだ。
「痛っ!?」
貧相なベッドは硬かったようでガツンと頭部を打った服部が頭を抱えて悶えている……悪いことをしたな。
「いったーい……あれ? ここ私の部屋じゃん」
どうやらここで正解だったらしいので俺は服部から見て天井に空いている穴に気がつかれないうちにそっと閉じ、大倉の口封じを解除した。
「あ――――! あ? てすてす」
「マイクじゃねぇからテストすんなよ……後うるさい、俺には聞こえていたんだから叫ぶなよ」
今使っていた口封じは、対象の声を自分の耳に直接に届けるという魔法で、秘密の会話とかをするのにいいんじゃないかなーとアイディアをずっと温めてきたものだったがまさかこんな使い方をするとは思わなかった。
「え、聞こえてたの?」
聞こえていたという事実に驚いたのか急に顔を手で覆い隠す大倉……結構放送禁止用語的なものを沢山言ってたからな、変態であれども聞こえていないだろうという確信めいた物があっての行動であれば、それだけ大胆にもなるだろう。
「大丈夫だ、俺にしか聞こえてなかったから……いや大丈夫じゃないか」
「……変態マスターだけだったんならいいや、でもそれならそうと言って欲しかったな」
俺ならいいのか……際どい内容だったと思うんだけど――――痴女的な何かだった。
「そ、そうか……とりあえず次は吉岡だな、あいつは今どうなってるんだ?」
俺の投げた剣を追いかけ森に消えた吉岡、多分奴の金属センサーに響也のベルトの金具が引っかかって一悶着起こっているはずである。
「銀香ちゃん? んーと……今霧島くんと一緒にこっちに向かっているね、腕を組んで仲良さげではないけど……というか多分だけど変態マスターのジャージを狙ってるね、それと霧島くんは物凄く怒ってるよ」
こっちに来てるのか、なら都合はいいな、合流早々に送り返してやろう、響也に関しても今日のところは家に帰してやればいいだろう、あいつは妹の前では平穏を気取る妹マスターだからな。
「それで距離はどのぐらいだ?」
「今、君の後ろに――――」
またそれかと振り向いた瞬間、目の前には拳がっ――――気づくのが遅れ、防御も転移も間に合わず響也の全力の拳を右頬にもらい盛大に吹っ飛んだ。
あまりの勢いでこのままでは周りの建物に激突して建物が崩壊しそうだったので、急いで響也の背後に転移するとそのままの勢いで響也に突撃をしてみたが、どうやら読まれてたらしく響也の回し蹴りをもろに食らって、勢いを相殺されたが俺には大ダメージという状態になった……地面にだらしなく転がっている俺とそれを睨みつける響也にそれを見ておろおろと慌てふためく女子二名……さてどうしたもんかと俺はしばらく死んだ振りに徹するのであった。




