60話 鋼の吉岡
短くは思い浮かぶ!
という事で本日二回目の更新。
しばらくは短めが連続して続くかも知れない。
俺はこっそり人目につかないように超未来都市に潜入した、勿論こんな科学的な都市だ監視カメラなんかもありそうなので極めて慎重に行動していたはずだったが。
「おやおやぁー? そこに見えるは黒田くんじゃぁないかーどうしてこんな世界に?」
早速見つかってしまった……鋼の吉岡――――町の鉄工所の一人娘として生まれ将来の夢はエンジニア、時たま金属のゴミで作った謎オブジェを校内に設置して問題児扱いされる変態様だ……恐らくこの都市の至るところにある謎オブジェも彼女の仕業だろう、それに監視カメラでも仕込んでいたか……?
「いやーこの街で嗅いだことのないチャックの匂いがしたんだけど、黒田くんのジャージの上着のチャックだったんだぁーそれちょっと嗅いだことのない金属臭がするからちょっと私に貸してくれないかな?」
既に目をつけられた……俺は上着を犠牲にせねばならないのか!?
俺は右手を背後に回し異空間に右手を突っ込むとなんでもいいから金属製品をと思い急いで取り出した。
「剣……? くんくん……わぁ、それも嗅いだことないやぁ――――頂戴?」
咄嗟に取り出せだのはどこで手に入れたかわからない片手剣だった……特に目立った飾りもない、原材料不明の普通の剣だ、無くしても惜しくはない……よし。
「ほらよ! とってこーい!」
俺はその右手に持った剣を町の外へ目掛けて放り投げた、それも丁度響也がいる方に。
「わーい」
両手を上げ万歳のようなポーズのまま走り出す吉岡の表情は常人からしたら狂気しか感じさせない恐ろしい物だった。
「危機は去った、そして響也……お前の犠牲は無駄にしない」
響也にとって変態四天王で一番苦手とするのは吉岡だ、響也は以前吉岡と付き合っていた時期がある……その話を振ると響也は狂い怯えながら殴りかかってくるほどなのでいい灸になるだろう。
ちなみにどうして二人が付き合ったかといえば、吉岡が響也のベルトの金具に一目惚れしたから……らしい、響也もその頃は色恋に疎かったからそのまま付き合ったが、デート場所が決まって工場見学とかで響也も結構がっちりした身体だったもんで工場の人から一緒に働いてみないかなどという誘いがあったりして、毎回そんな状態が続いて響也もうんざりしたらしく、その吉岡が一目惚れしたベルトの金具を譲って別れたそうだ。
吉岡はそのベルトの金具を家に持ち帰り額に入れて今でも飾っていると言っていたが……金具コレクションを元の世界に置き去りにしてて帰りたいとは思わないんだろうか?
その辺りを揺さぶってみれば簡単に帰ってくれるかも知れないな――――よし、後で確認してみるか……響也の死に様と共に。
さて気を取り直して次だ、と言っても残る子と貧は基本俺に縁がないので見つかる心配はないが……やっぱり来たか。
変態の中の変態、変態のための変態……変な大倉!
「貴方もこの世界に来ていたのね、変態マスター……」
変態マスターとは俺のことだ……いや俺が変態をマスターしているという意味ではない、ただ変態達を抑え扱いに長けているという意味合いだそうだが、俺がそんな事するのは響也か石トリオぐらいなものだ。
「銀香ちゃんを上手く退けた手際の良さなんてまさに変態マスターと呼ぶにふさわしい」
銀香……吉岡の名前ってそんなのなのか――――そして大倉の中の俺がまた一段と変態マスターの階段を登ったらしい……はっきり言って迷惑だ、こいつにも早々に立ち去ってもらいたいんだがこいつの場合はどうしたらいいんだ?
この時俺は大倉の思惑通りに変態を御する変態マスターの道を着々と進み始めていたと気づいたのはほんの少し後のことだった。
迷走し始める物語……変態の力は偉大だ……。




