55話 カッパの正体
あけましておめでとうございます。
帰省したら逆に忙しくなるって事もあるんですね、今日からまた頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします。
存在がギャグ……それはギャグ漫画のように前のコマで大怪我を負ったにも関わらず次のコマには何ともなかったかのように存在する、そう言う奴のことだ。
このカッパはどうもその類の生物らしくあれだけ何か含みを持たせた変化をしていたはずなのに最初に見た時と同じ姿に戻って俺の隣に椅子に出来そうな石を持ってきてそこに座り器のようなものに小石を山盛りにしたものをつまみながら、俺が発言させたスクリーンを鑑賞している。
その姿はさながら映画館でポップコーンを食べている客のようであった、ちなみに俺はスクリーンの維持もあるので立ち見である。
カッパから攻撃はしてこないようなので一応俺もスクリーンに集中する、三ヶ所同時に映しているがどこも戦闘中だった。
巨大ゴリラの拳と全身で激突して相殺する石田、白骨キツネの放つ燃える髑髏の弾丸と石の弾丸をぶつけ合う石山、目からレーザーを放つ女体とその頭部から生えた無数の蛇に追われながらも流星の如き速さでそれを躱しながら蛇を一匹ずつ踏み潰し仕留めていく石川、まさに激闘と言っていい状態……俺だと多分真っ二つにするとか空間ごと押しつぶすとかで終わりそうな気がするがこういう戦いもいいもんだな、と他人事のように言ってみる。
無論、隣にいるカッパに対して彼らと同じぐらいの激闘を行っても良いんだがどうにも勝ち目が見えてこない、というかこいつが倒れる姿が想像できない、絶対無敵といった感じだ手の施しようがないのでやはり様子見し続ける。
「ぐっぱぁ! ぱっぱっぱっぱ!」
カッパが突然馬鹿笑いしだしたのでスクリーンに視線を戻すと、石田が力負けしたようで壁に叩き付けられている様子が映っていた。
コイツ……。
「ぐぱぁ? もう見るのやめるッパ? こっちもやり合うッパか?」
その言葉にハッとした俺はいつの間にか握り締めていた拳を解き、再びスクリーンを見る……特に石田に怪我はなさそうだ。
今は抑えよう、この怒り後で何倍にして返してやる事にして俺は石田達を見守ることにした、未だカッパに対して勝算はないが時間稼ぎぐらいにはなるだろう。
『フッフッフッ……』
突然スクリーンの向こう側で石田達三人が同時に笑いだした、なんか気色悪い……全く違う場所にいる三人組がまるで三つ子のようにシンクロし笑い出し――――。
『ふはははは、見切ったお前の攻撃は既に見切ったぞ! 覚悟しろ怪物め!』
などと……一言一句違えず言い切った。
そしてシンクロしたような動きで走り出す三人、十メートルほどして別々の方向に飛び出した……それこそ三人一緒に行動して三方に別れたかのように……たまたまだよな?
『もらった!』
何を……それぞれの必殺技みたいな――――見た目が派手で魔力が周囲にダダ漏れな大雑把な突撃を仕掛ける石田達はそれに応戦するかのように捨て身の攻撃を仕掛けた怪物達と激突した。
――――納得いかないが石田達はあのお粗末な必殺技で怪物達の胸を貫き見事に倒していた、俺は相手の倒し方すら見当も付かないというのに。
「ぐぱぱぱ! あーあ、オラしらねぇッパ、殺しちゃった殺しちゃった! ぱぱぱぱぱぱぱ……」
配下の怪物がやられたというのに楽しそうに笑い出すカッパ……床を転げ回り笑いすぎて呼吸困難になってやがるのでその顔面を思いっきり踏みつけると、黙ったので放置しておく。……あれ? 倒せた?
そんな奴の事はほっといてスクリーンを見直してみると、三人の様子が妙だった。
何かに怯えたというか絶望したような、それこそ世界が終わったような顔をしていた、そしてその近くにはいつの間にか粉々になった怪物の破片と……バラバラに壊れた血染めの女神像的なものが転がっていた。
「あれが攫ってきた姫達ッパ、お前らはまんまとオラの策略に嵌ったッパ、これでオラが乗っ取ったこの世界の神の体は復活出来な――――ッパ!?」
とりあえず得意げに語るカッパがムカついたので顔面に右拳で一発入れてやる、短い悲鳴を上げるカッパをよそに反撃の隙を与えずにその顔面を左手で掴み指を付きたて固定し、そのまま脇腹に抱えてさらに固定した上で俺は空いた拳を振り上げ、カッパの皿に打ち付けた、一回、二回、三回……何度も何度も拳を振り下ろす、古来河童の弱点は皿だと言うので最早これしかないと思ったんだが。
何度目かの時に急に俺の拳が空を切った、一心不乱に打ち続けていたので何が起こったのかわからず辺りを見回してみると、俺の足元に皿と嘴、それから甲羅がただの石ころかのように転がっている。
「パパパ、全くとんでもないガキッパね?」
そして奴本体は俺から少し離れたところに居た、ぷるるんとしたその見た目は……どう見てもただのスライムだった。




