44話 終わりは唐突にそして呆気無く
ある男は願った自分こそ主人公で正義の味方であるべきだと、名前に恥じない人間になろうと。
主人公にはヒロインが必要だ、彼は日頃からそう思ってきて、ある日彼女に出会った。
けれど彼女は彼のことを見てはくれなかった――――彼女の隣には既に男がいた。
男が憎い、憎い憎い憎い……その日から彼の戦いは始まったのである。
――――なにそれ怖い、正義が亜理子と出会ったのって小学生の頃だろうに……歪んでるなぁどこに正義があるのやら、傲慢すぎて反吐が出る、つかなんて夢見てんだろうな俺は。
そう思って俺は目覚めた、あれからどのぐらいたったのかとりあえず今は戦闘中のようだ、近くに前魔王の配下たちだったものがゴミクズのように転がっていた。
俺のそばには姉妹神様が控えていてみんなの戦いを見守っていた。神は直接手を出せないそんな感じだった。
そんで何と戦っているかといえば、妙な雰囲気を纏った正義だった、目は完全に白目を剥き狂った笑みを浮かべている。手足もだらりと力が入っていないように見えるもののくっついてしまったようにその手には黒ずんだ聖剣を持っていた、哀れ正義……その姿はゾンビか何かだった。
「これどういう状態か、三行で述べろ」
姉妹神は悩んだように考え、やがてこう答えた。
「……マスター倒れて、巫女復帰」
まずは姉神か……それで一行か? 短くないか、それに俺が倒れてすぐにやつが戻ってきた訳か、どこかに隠れて見てたってことか。
「あのクソ女がエセイケメンを隷属魔法の上位にあたる操縦魔法を用いてエセイケメンが暴走」
妹神、姉に比べて長くないか? いや、長すぎるだろうというかエセイケメンって正義のことか、エセとか偽とかもはや正義じゃなくて正偽だな。
「全員、聖剣が弱点で大ピンチ……以上だよ、あ、僕ら聖剣はヘーキだけど戦闘はしちゃダメな規則だからね」
規則なんてあるのか……全員聖剣が苦手っていうのは――――そうだなみんな生傷が所々に、唯一無事なのは亜理子だけか。
「おい、正吾! 起きたんなら手伝え、あいつの剣なんか変だ俺の拳じゃ折れない!」
いや拳で折ろうとする方が変だし間違っている……あんなんでも一応聖剣だぞ。
「そりゃ無理だろう、なんで本体を狙わない?」
「やったよ、あばら二三本へし折ったり剣を持ってる腕もよく見てみろ……折れてるだろう?」
本当だ、曲がっちゃいけない方向に上がぐにゃんぐにゃん、本人に意識がないようだし痛みに関しては別にどうでもいいだろうが、あとで治すとなるとそれこそ骨が折れそうだ。
「あ、ご心配なく、顔以外の負傷なら我々が直しますから」
妹神様はそう言ってくれた、なら安心だな。
「よし、響也、顔だ! 顔を狙え!」
「嫌だよめんどくせぇそういうのは自分でやれよ……お前起きたんだから俺は休ませてもらうぞ」
響也はそう言って正義から距離をとって床に座り込んでしまった、仕方ないといっても俺ができることなんて限られているが。
「くらえ! 《RJパンチ》」
俺は《ゼロスペース》を使い正義との間を無くし思いっきり正義の顔面に向かって拳を放った、操られているだけあって緩慢な動きの正義は避けることもせずそれを受け、装備類や下着を残してこの世界から消え去った。
「呆気なかったな」
「あ……あちらに送り返してしまえば治せませんよ?」
妹神様、そんなこと早く言ってくれよ……しかし奴は金持ちだ致命傷は見た感じなかったから多分大丈夫だろう、入院費・治療費的な意味で。
「あとは元凶を倒すだけだな……で、巫女さんはどこにいるんだ?」
俺は周囲を見渡したが見当たらない。
「それがわからんのじゃ、私らもさっきから辺りを探しているのじゃがな」
なるほど――――《サーチ》……確かにこの付近には居ないな、どこに行ったんだろう?
「神様はその辺分からないのか?」
「あまり便利に使われるのは些か問題があるのですが――――答えましょう、あの女ならば先ほど貴方の《RJパンチ》ですかね、あれで彼と一緒に世界を渡りましたよ?」
「それって大丈夫なのか?」
「不味いといえばそうですが、あの魔法はこちらの世界の記憶を消してあちらの世界に送り出すものですよね、彼女にとってこの世界の記憶を失えば何も残りませんから魔法も使えないでしょうし、そもそも世界を超えてしまえば人として形も保てないでしょうし、彼の近くには落ちているとは思いますが物によっては保健所で殺処分でしょう」
まー犬猫なんかならそうだろうけど人の形していない謎の生き物がいたらどっかの研究所で解剖とかされんじゃね?
「それにしてもなんていうか呆気なかったな……さっきまでみんな苦戦してたはずなのにさ俺がやるとほとんど戦いにもならないとか」
といっても他の世界に飛ばして問題を丸投げしてんだけどさ。
「それは仕方ないですよ、召喚術師とは本来、理不尽の塊にして理不尽を操る者ですもの、召喚獣を召喚すれば召喚術師だなんて他の世界の基準が温いんですよ」
他の世界がヌルいとか、この世界はハードなのか? ……ダメだ移動とか殆ど空間魔法でやってきたからこの世界がどうとかわからないや。
「そんなことはどうでもいいんですよ……とにかくおめでとう御座います、これにてようやく世界は救われ? ました」
何故そこで疑問形するのか、それと世界が救われておめでたいのはむしろそちらの方では? ――――終わったって言うんなら俺達もう元の世界に帰るけど、いいんだろうか……こんなので……ふと富士さんを見れば何か悲しげな表情をしていた、まーそうだよな……これから俺達お別れなんだもんな。
この日、俺達の冒険は終了した――――長いようでよく考えると短い旅立ったけどつまらない修学旅行よりはマシだったと俺はその時は思っていた。
次回終了(多分)




