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召喚術師の喧嘩殺法  作者: 噛み付き熊さん
第一章 異世界導入編
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43話 満たされし欲望は無に

妙なテンションで書いた、正直自分でも何を言っているのか分からないけどそういうのを哲学というのだろうか?

 欲、一言で言っても食欲とか性欲とか睡眠欲とか様々あるこの欲望を全て満たすだけの空間か……漠然としてるけど結局「うわぁぁ気持ちいいよぉおお」とか絶叫させればいいんだろう?

 しかし満たされる、満たされると人はどうなるんだ? 落ち着く? 黙る? 弛緩する? 全く予想が付かないな。

 とりあえず食欲は……満腹中枢をどうこうして舌に味覚情報を流し込み、胃袋を膨らますとか。


 睡眠欲は不眠にしちまえば早いか、アドレナリンとかなんとか、要するに五感や体全てに何かしらの刺激が加えられればいいってことだろう?

 体全体に入ってくる感じか――――そんな風に言うと俺には一つ心当たりがあった。

 世界と世界を隔てる壁……虹色の魔力だっけか、俺とかはほんの一瞬、それも通り過ぎるだけだったので大して体感はなかったけど実際あの中に浸かっていたらどんな風に感じるんだろうか?


 想像したくもないが、多分二度と戻ってこれなくなりそうだ……ならそれで行くか、戻ってこれないのならそれはそれでいいんだし、臭いものには蓋って言うし封印じゃないけどそんな感じで行こうか。

 そうと決まれば響也を引き剥がして世界王をさっさと飛ばしてしまう、そう思い顔を上げたら――――クロスカウンター、響也の右拳が世界王の左頬を、世界王の左拳が響也の右頬を的確に捉えていた。

 響也は拳に、炎だとか光だとか氷なんて言った属性付与して殴るそんな感じに対して世界王は生身でそれに勝る威力を出している、正直響也のやつは押され気味だが俺に負けないとか言った手前倒れる訳にはいかないらしい。


「どけっ響也、後は俺がやる!」


 いや、殴り合いをするつもりはないんだけどな、こう言わないとあいつは引いてくれない。


「おう、あとは任せたぜ!」


 それが言いたいだけなのである、「あとは任せた」やつはこれが最高にかっこいいと思い込んでいる、ちなみに何故かといえば大抵ラスボス前の雑魚を仲間に任せるときに主人公が言うセリフだからである。

 ――――目の前にいるのがラスボスのはずなんだけどなぁ……単純すぎるだろう、そそくさと世界王から距離をとった響也はミケネからお茶を受け取り、みんなの輪に収まった……ちくしょう、俺も早くあそこに行きたい。


「準備は出来たのか?」

「ある程度は、心当たりがあるって程度だが」


 俺は地面に世界の壁へと繋がる穴を開けてやった、世界王が入る程度の穴だ、微かに虹色の光が漏れている……それはあくまでも光であり魔力ではないが。


「それがか?」

「多分な、確証はないが……ここでダメならどこに行こうとダメだ」

「そうか、では早速入らさせてもらおう」


 そう言って半裸は全裸になった……それこそ銭湯に入りに来た客かのようである。

 後ろの連中には俺が居るので大事なところは見えていないが、みんな揃って後ろを向いた、余程見たくないんだろう。

 俺だって見たくはないが目をそらすな的な視線がそうさせてくれない……脱いだならさっさと入ればいいものを。


「小僧……頼みがある」

「手短に言え」

「この世界を頼む……私は恐らく戻らないだろう、あの巫女には気をつけろよ、まだ何かある」


 そこでのびている奴が? そう思い巫女が倒れていた辺りを見たがそこには誰もいなかった。


「では、さらばだ」

「あ、おいっどういう意味だ!」


 世界王は世界の壁に沈んでいった――――《サーチ》で行方を追ってみたが奴は満たされていた、いや満たされ続けている。

 この世界の人間では肉体が持たないだとか言っていたがそういう訳じゃないようだ、俺達もあくまであそこを通り過ぎるのは一瞬の刹那、あのようにそこに浸かり続けたらこのようなことになるのだろう。

 まず全てに満足した人間は動く必要がなくなる、人は、いや生物とは何かを得るために移動する手段を得るために進化してきた、しかしそれが必要となくなったら――――世界王の手足は退化してどんどん短くなりやがて彼は達磨のようになった。


 続いて視覚、聴覚、嗅覚を不要と思ったのか眼・耳・鼻がなくなるのっぺらぼうになる、口は相変わらずあるがそれも時間の問題だった。


 満たされた彼の体は個として完成してしまったためか子孫を残すのに必要な繁殖機能を退化させた、更に排泄の必要がなくなたのかそれらもなくなり彼は球体になった。


 色でこそ肌色をしているが口のある丸い球体、正直これは化物だと思った。桃色とか黄色の球体が主役のゲームとかあったなそういえば。


 そしてついに口までもなくなった、穴などなくとも全身から吸収できるようになったらしい。


 それから彼は考えることを必要としなくなった、全てが満たされた人間は無になる、脳が退化したのだ。


 満たされているのに、何もなくなるのだもはや生物としてそれが生きていると言えるのか疑わしいぐらいなのだが。それから彼は肥大化を始めた。


 まるで満たされる欲を更に満たすように一度により多くを吸収しようとして肥大化という選択を選んだらしい。



 これ以上は危険だと思った俺は穴を塞いぎ《サーチ》による探知も辞めた、これ以上は知ってはいけない――――いや考えてはダメだと思えたんだ。


 気がつけば俺は冷や汗でびっしょりだった、傍らにはいつの間にか亜理子が立っていて、俺を抱きしめる。


「しょーご君……それ以上はダメ、人間じゃなくなっちゃう」




 俺の意識はここで途絶えた――――情けない話だがもう限界だったらしい……まだ巫女が、ついでに言えば正義の姿も見えなかった気がするが、まだ何かあるんじゃないのか……という不安に囚われながら俺は眠りについた。

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