41話 恐怖・世界王の力
ギリギリの戦いだった、周りから見れば俺の圧勝のように映っていただろうよ、しかしギリギリだった……お互い精神面まではチートな成長を遂げた訳じゃないからな。
あんな長身白髪イケメンになって大人びた響也だが所詮元は馬鹿で子供っぽい奴だ、俺が本気を出したら指一本すら触れられないのだと改めて実感できたことだろう、口では卑怯だとか色々言いはするが何だかんだで認めてはくれている、それが親友同士の絆みたいなもんだ。
それで何がギリギリだったかといえば、別次元に逃げ込んでからの響也の猛ラッシュだ、最初は心のどこかで自制してくれていたんだろう避けられない程のスピードでもなかったんだが。
俺に拳が一発も当たらないと分かった瞬間からあいつは巫女が気絶したからかそれとも俺に集中しすぎて他のこと、巫女の名前とかすっぱり忘れた状態になったからか正気に戻ってたんだよなあの時には。
にやぁっと笑いを浮かべてそれこそ一般人なら一発で殺せる勢いのラッシュ、正直いくら当たらないからと言ってあれが顔面に打ち込まれようとしていたんだ、恐怖を覚えないはずがないだろう。
あのレベルの拳は恐らく寸止めであっても人の意識を刈り取るぐらいやってのけるだろうそれを俺が響也を倒すまで見せ続けられて俺もよく気を失わなかったものだ。
そんな訳で俺と響也はお互いの実力を認め合って仲直りしたわけである。
「残るは王様、アンタだけだな」
ラスボス――――姉妹女神曰くラスボスは巫女らしいが戦闘面で言えば恐らく王様の方がラスボスだろう。
「ふむ、いよいよか……覚悟は出来ているのか? 小僧」
さっきまで石像かと思うほどに微動だにしなかった世界王が動き出した。
「出来てるよ世界王――――それにしてもよく見ると面影結構あるよなアンタ」
「面影? なんのことだ?」
「いや昔あったことがあるんだよな、横綱・張留戸丸九とは」
と言っても幕下時代になんか公園のブランコで……いや壊れるから乗るなよと思ったけど、「もう相撲やめようかな」なんて言ってたもんだから後ろから蹴り上げようとしたけどビクともしなくて。
なんやかんやあって励ましたら、いつの間にか横綱になってたっていう、エピソードがあるんだけど語ってる暇はなさそうだな。
横綱になって少ししてから突如行方不明になったけど、まさか異世界に来て勇者になって王様になってるとか思わないよなー横綱が。
それこそ相撲取りならではの脂肪が筋肉となっているので似ているかといえば全然違うんだけど、面影ってものはどんなに血が薄くなろうとも現れるもんなんだな。
「ふむ、それもありうるのか……この世界とあちらの世界では時間の流れが違うらしいのでな、大体こちらの一日があちらの一ヶ月に相当するとかなんとか……正確なところは知らんが、これから倒れる貴様には関係のない話だったな」
なぜこう言う奴はペラペラとそのへんの事情を話したがるんだろう? 関係ないなら言わなくてもよくね?
それに時間のズレ自体は時間と空間を操る完璧な召喚魔法を使える俺にとっては全く無意味と言っていい、現に俺が向こうの世界に繋ぐ時は日付は俺達が召喚されたあの日に固定してあるから、今頃上木達はそれぞれの家の中に全裸で投げ出されている事だろう。
後の始末は知らん、気づいたら修学旅行先から自宅に全裸で帰ってきていた状態誰がどう説明するのやら制服や手荷物なんかはあとで俺が送り届けるしかないが宿泊用の荷物類は止まってたホテルに放置されてるはずだからそれは学校側がどうにかしてくれるだろう。
そんなことは今はどうでもいいけど――――人が考えてる最中に突っ込んできた世界王の拳……いやつっぱりが届く寸前に俺は正面に《ワープホール》を開くと勢いを殺しきれなかった世界王は《ワープホール》の向こう側、魔王城外にある湖面に体を叩きつけた。
《ワープホール》から大量の水が溢れ床を濡らす、こちらからすれば横向きではあるが出口側からすればちょうど水面になっているので世界王が落ちた時にできた水柱が穴を抜けこちら側に登ると横向きになっているので水面に落ずに床にぶちまけられるという状態になる、世界王が上がってくる前に俺は《ワープホール》を閉じた。
パシャ――――《ワープホール》は閉じたはずなのに床を打つ水の音が聞こえる……恐る恐るそちらへ視線を向けると――――ニヤァっと笑うずぶ濡れの世界王が居た。
「やってくれおるな小僧、危うく風邪をひくところだったぞ」
そんな格好してるのが悪い、そもそも半裸王冠マッチョが風邪などひくはずがない。
「ならこれはどうだ! 《ウォールインサイド》」
ずぶ濡れマッチョはその場から消えた……やっぱ俺と縁のないやつは飛ばしにくいなぁ……いくら横綱と顔見知りとは言えどその子孫では大して効力はない。
さて、それでどこに行ったかといえば――――ああ、もう出てきやがった、唯一無傷だった壁を崩しながら世界王が現れる、壁の中に飛ばして閉じ込めるっていう魔法だったんだけどな、あいつどんな体してんのかな。
「この程度なのか? ならばこちらから行かせてもらうぞ」
勝てない、響也以上に強敵というか相性が悪い明らかに接近したらダメっぽいのに遠距離攻撃が効きそうにもない――――俺は怖くなって別次元へと逃げ出した。とりあえず今は作戦を考え――――ようとしたその時、次元を移動したはずの俺の体は奴に捕まってしまった。




