3話 茶番劇
『従者契約』と言っても何か特別なことがあるわけでもない、俺が二人の頭に手を翳すと、バチバチッと音を立てながら俺の手から電気が走り、二人の体を駆け巡る。
「うぉっ!?」
「きゃっ!?」
反応にしたってこんなもんだ、二人共電気に驚きその場に尻餅をついただけで感電したわけじゃなさそうだしな。
「これで終わりか? なんか呆気ないな……もっとこう、なんていうかな、汝とか我とかさー」
今ので終わったことに納得がいかない響也は、まあ所謂中学二年ぐらいからのアレを若干引きずっているのでそういう長ったらしい口上が欲しかったらしい、不貞腐れている。
「だよねー、そしてなんかパワーアップとかしてもいいと思うんだよね」
これ以上パワーアップされても俺はお前を御する事ができない気がするんだけどな、亜理子も不満そうだな。
「それじゃ、俺達は部屋に戻るから、なんか用があったら召喚してくれ、じゃあな」
響也はそう言って部屋を飛び出していった、多分早く召喚して欲しいんだろう。
「じゃあ私も戻るね、何かあればすぐに召喚してね」
亜理子も大人しく引き下がった、いつもなら響也がいなくなっても居座るんだがな。
それにしても召喚かートイレ中とか風呂中とかに召喚したらやばいだろうに。でも亜理子はなんか平気なんだよな、俺らに裸見られてもまるで気にする様子もなくいつも俺らが気を使うっていうか。
そういうとこ、ちゃんと男として見られていないって思うんだよな俺も、響也も。
幼馴染ってそんなもんか? 他の幼馴染な連中を知らない俺には想像もできないが……。
《召喚魔法》
『空間転移』で俺は屋敷の外に出た、別に堂々と玄関から外出してもいいのだが、折角魔法を使えるようになったんだからちゃんと魔法らしい魔法も使ってみたかった。
一応は城下町という扱いになるのか、結構色々な建物が並んでいるが民家と公共の施設の落差が酷かった。
なんていうか民家は一見するとあばら家のようなものばかりだ、それに比べて公共施設らしきものはヨーロッパの民家のような佇まいなのだ。
建築技術が足りないとかじゃないよな、これ。
少し歩いてみるとすぐにヨーロッパの民家がズラリと並んだところに出た、見た感じ身なりがいいからきっと貴族かなんかだろう。
当ても無くフラフラしていると何やら騒ぎが起こっているところに出くわした。
見るからに悪漢な三人組がちょっとインテリそうなメガネの女性を囲んで白昼堂々襲っていた。
周りの通行人は助ける気配がない、確かに分からなくもないがこれはちょっと頂けない。
俺は『空間転移』で女性と悪漢のリーダー格の男の間に割って入り、女性に伸ばしていた腕を掴み睨みつけてやった。
「こんな真昼間から寄ってたかって一人の女性に手を上げるなんて……通行人が見逃しても俺は見逃せないんだ、さっさと失せな」
突然現れた俺に女性と悪漢達は驚いて声も出ないらしい、後通行人が気まずそうにこちらから視線を外した。
「な、なんだ小僧、俺様に楯突こうってぇのかい?」
リーダーっぽいやつは声が震えている、というか足も震えてないか? いやリーダーだけじゃないな、他の二人も震えてるぞ……何がどうしたって言うんだ?
「まあ、楯突くっていうかなんならぶっ倒してもいいかなって思ったんだけど」
呆れ気味にそう言ってやった、確かに体格差があるがこの程度ならどうということはない、相撲部の連中とかプロレス同好会の連中に絡まれた時の方がめんどくさいしな。
「ふむ……見た感じ良さそうじゃないか? どうだリイヤ、この少年は?」
は? なんか悪漢が女性に親しげに話しているんだが……。
「ええ、合格ねこういう子を待ってたんだから!」
全く訳がわからないがこの茶番は仕組まれていたものだったらしい、ホント、通行人ですらエキストラだったとか、騙されたな。