35話 魔王城到着
魔王城、魔王の城……そのまんまである。
大きな湖の真ん中にポツンと佇むその様ははるか海の向こうにあると言われる鬼ヶ島などを彷彿させる、黒い岩肌と切り立った崖その上に何処に入口があるのかと言った城壁が立ち並び、そこから聳えて見えるのは鋭い槍のような細い塔が四方に一つずつ。
「どうやってあそこまでいくんだよ」
俺達はついに当たりを引いたらしい、あれが魔王城で間違いないのだろう、ルナや富士さんは懐かしむような表情がその証拠だ。
「ふむ、少し待って居れ」
富士さんはそう言って一度森の奥へと引き返していった……待っていろと言われたからには追いかけるわけには行かないんだが――――気になる。
俺が《サーチ》を使い富士さんの様子を捉えようとしたその時だ。
爆風――――そう、それはフランスと契約した時のような爆風が起こったのだ、その爆風はフランスの時と同じように俺達には特に影響はなく周囲に生えていた木々を根こそぎ吹き飛ばした。
そして俺達の目の前には一体のドラゴンが居た、赤い鱗に二本の白い角、そして黄金に輝く瞳。
「赤鱗白角金眼のニーベルリユウム……」
ルナはそんな事を呟く訳だが……なげぇよそれはちょっと長い名は体を表すとか言うけど一々見た目の説明を名前に付ける必要はあるのかね?
「そこは白角金眼の赤竜、みたいな感じでよくね?」
そう俺は思うわけだ、しかし薄々気づいては居たけど富士さんってドラゴンだったんだな。
「主殿は驚かないのですな」
「ま、契約で繋がってるしな? 富士さんが行った方向から現れたドラゴンならそれは富士さんでしかないだろう?」
よく変身者のヒーローとかにいるけどそっちに行ってそっから出てきたら普通に正体バレるだろうと思うんだけどな。
「とりあえず私に乗るといい、そうすればあそこまで行けるし、恐らくは攻撃などもされぬだろう」
「そんなっニーベルリユウム様に乗るなんて、ダメです!」
ルナは恐れ多いと言った感じなんだが何かあるのか? お前一応魔王の娘なんだよな?
「ご主人は知らないからいいんですよ、彼女はルナのお父さん、魔王様の育ての親なんです!」
つまり……富士さんはルナのばー……ごめんなさいなんでもないです。
ドラゴン化した富士さんの睨みは一段と怖かった、それは人と竜の圧倒的な差を意味するのだろうか?
「ま、主殿ともし戦ったとしたら私では勝てぬがな、魔力量だけで言えば主殿は神殺しが可能だからな」
なにそれこわい……俺ってそんなこと出来んの?
「ま、主殿だからな、もう一人の少年も近しいことはできるだろうよ」
響也もか……願わくばあいつが敵になりませんように。
「ともかくだ、早う乗れ、この姿で後どのぐらい居られるかわからんのでな」
そう言われたら仕方ないので嫌がるルナを抱えて俺は富士さんに飛び乗った、他のみんなも同様に富士さんの背中に乗ると。
「しっかり掴まって居れよ」
轟ッと翼を羽ばたかせ空へ飛び上がった――――ある程度飛び上がったら後は滑空するだけだったがこれが中々の絶叫マシンで、後で聞いた話によるとルナは昔一度これをやってそれ以降トラウマになっていたとかなんとか。
富士さんが滑空して魔王城の中庭に降りると、そこにはたくさんの……恐らく魔族、と言ってもほとんど人と変わらぬ姿をしている――――が集まってきていた。
「これはこれは……ニーベルリユウム様でございませんか、お久しゅうございます」
偉そうな、とは違うななんか偉い感じはするが見下さないっていうか、悪い気がする相手ではないな。
「フロギンスか、久しいな……っと主殿竜化が解けるでな、皆の者も早う降りろ」
そう言われて降りたら、富士さんを中心に竜巻が発生したかと思えば直ぐ様消え、いつもの富士さんの姿に戻った。
「中々私も歳か……主殿に文句を言ったがこれでは言われても仕方のないことだ」
疲労困憊といった様子の富士さんを見て、抱えていたルナを亜理子に預け、肩をそっと貸してやる。
「ふふっ、いつになく優しいではないか主殿、こんな事ならたまに竜になるのも悪くはないな」
「いや、俺だってそんないつも貸せる訳じゃないからな」
俺の肩にだらしなく絡む富士さん……足元も覚束ない様子に俺は仕方ないと溜息をつき。――――よっと。
「お、おお!?」
抱き抱えてやった、要するにお姫様抱っこだ。
「全く主殿……こういう物は突然やるのは反則だぞ、心臓に悪い」
「突然やるからいいんだろうが」
なんて――――人目を気にせずいちゃついていたら。
「しょーご君、それに富士さんも、時と場所を考えようね?」
我らが最後の良心、亜理子さんに怒られました……アリサやくましろですらジトっとした目つきで俺を見てたし、フランスなんてそれは大層羨ましそうに眺めていた……今度やってやるか。
なお、魔族の皆さんはその場の空気に耐えかねて少し距離をとっていた――――それから魔王に謁見するまでにおよそ半日を要することになってしまったが俺達はついに魔王と対面することになった。




