30話 フランス
手首が痛いとか言ってたけどその程度で書く頻度が下がることもなかったという。
「知るかっ、さっさと追い出せ!」
野太いオッサンの怒鳴り声が響く、周囲に居た歩行者全ての視線が一気に俺達に集まった。
二人の騎士に連れられてきたのは街の中心を横断する様にある一本道の丁度真ん中にある建物、その入口だった……丁度そこから出てきたこのオッサンに侵入してなかった侵入者を連れてきたとかわけのわからん事を言ったフランシスカが怒鳴られたところだ、ざまあみろ。
「し、しかしですね、この者たちは……」
必死に弁解しようとするフランシスカ、だが――――。
「ええいっ、この無能な半血がッ俺の命令も聞けんのならとっとと辞めてこの街から出てゆけッ化物が!」
……きたねぇな、唾飛ばすな――――そんな罵声を浴びせられた彼女は肩を震わせながらも気丈に振舞って? と言うのだろうか。無能はわからなくもないが半血ってのがよくわからない、貧血の親戚だろうか?
「そうですか……お世話になりました――――こちらの者たちを連れ、街から出ていきます」
なんか俺達巻き添えで街から追い出されるっぽいな、どっちでも構わないが俺の腕を掴み、思いっきり引っ張って行くのは辞めて欲しい、それも今来た道を戻って街の入口があった方に。どうせ行くなら出口にしろよ、もう少し行けば街を抜けられるだろうが。
「痛い、ちょっ、自分で歩くから引っ張んな!」
という俺の願いはスルーされました、そんで仕方なしに亜理子達も俺の後を追う……何げにこの女足が早いな、みんなが置いていかれそうなんだけど。
「それで、貴方達の目的って何なの?」
街を出てしばらくしたところでようやく歩くのを辞めたフランシスカ、目的って言われてもな。
「んー魔王に会いにいく? そんな感じだな、とりあえずデカイ魔力を探知して探してた途中なんだがあの街にもその反応があったから立ち寄っただけだ」
「魔王にか……ならばお前達は魔王の手先か?」
魔王と聞いて少し高圧的になったな、貴方からお前になるぐらいなんて――――キャラが定まってないのかと言いたくもなるが。
「別にそういう訳じゃないけどな……こいつが魔王の娘らしくてなちょっと送ってやるってだけだよ」
責任転嫁というかルナに丸投げしてやった、見た目幼女でも中身は俺より年上だからな問題はないだろう――――フランシスカが思いっきり睨んでいるが。
「あう……ルナ悪くないもん」
そんなこと言って俺の背後に素早く隠れやがった。
「まあいいさ、私も魔族の血が混ざっているらしくてな街の者たちには嫌われていたし人のことをとやかく言うつもりはない――――が、ここは一つ恥を忍んで頼みがある」
おっと今までの行いに自覚でもあったのか恥とか言っちゃうのは……なんてことは言わないが頼みを聞くか聞かないかすら決めていないのにフランシスカは語りだした。
「私は今まであの街で暮らしてきた、あの街では魔族とは悪い存在で倒さねばならないということになっているが――――私が知る限り一度たりとも魔族が街に来たことはないんだ、それなのに何故魔族が悪いと言えるの
か、ずっと疑問に思ってきた……しかしそれは私自身が魔族の血を引いているから、それを辛いと感じていたからだと思う、だが今日……ルナと言ったか? その子を見て確信した魔族が悪いなんていうのは幻想なんじゃないかと、だから私は私の目で魔族とは何かを見極めたい、だから頼む、私を連れて行ってくれないか?」
長っ……要するに『連れて行け』ってだけだろ、そんなの頭下げればそれだけで済むだろ、別に大層な理由とか聞かされてもこちらとしては思うところもないんだし。
「別にいいけど三つ条件がある」
俺は人差し指、中指、薬指を立てながら……多分下衆な笑顔で言ってやった。
「今日からお前俺の下僕な、それとこの中で序列最下位で、最後に絶対服従な」
三つと言いながらほぼ内容が被るように言った、最後の一つで事足りるだろうことだが履き違えられても困るしな。
それを聞いたフラン……名前なげぇ、了承したらフランスって名前をつけてやろう――――は、顔を顰めながら何かを悩むように唸る。
別に俺は連れて行きたくなくてこんな条件にしているわけではない、ただ未だ信用できない状態で連れて行くリスクは背負いたくないだけだ……そんな事言ったら連れて行かなきゃいいだけってなるから多分俺は甘いんだと思う。
「まあ、仕方ない小間使いの経験はないが見聞を広めるためだ剣を握らずとも良いのならそれでもいいだろう――――」
下僕=小間使いなのか割と辛い目に遭ってきたという割に発想が貧困だな、それになんで剣を握らなくていいのか? 小間使いに戦わせないとか思ってるの?
「いや、何を勘違いしてるか知らないが俺は小間使いよりも戦力として欲しいから戦わなくてもいいなんていう発想をするのはやめろよ?」
「む、ならば具体的に何をして欲しいのか言ってくれ」
なんでそんな偉そうに言うんだろうか、こいつ実はいい育ちなんじゃなかろうかフランスってなんかそんなイメージがある。
「何っていうか敵が出たら戦って、夜は一緒に寝て、朝は日が昇ったら起こしてくれればいいけど」
咄嗟に浮かんだのがこれ、戦うまでは良かったがその後は亜理子達がやってくれる事だったりするな……別にこいつ要らないんじゃね?
「よ、夜一緒にだと!?」
そこか、そこに食いつくのか。
「ふっ、まさかその年で生娘でもなかろうに……ぐへへへ」
極力下衆を演じてみたが、効果はてきめんだった。
「悪かったな! 二十二にもなって生娘で!」
墓穴を掘らせれば右に出るものはいなさそうだ、本当に残念な奴だ……あの剣というか弓の腕前だけなら結構強そうなのに。
「あのケインとかいうのは違うのか?」
「ん? ケインか……やつとはまだ一年の付き合いしかないぞ、そんなこ、恋仲のようになるわけもない」
恋仲って――――そんな事よりなんだか全く話が進んでいない、見かねた富士さんが「それで結局どうするのかのぅ?」と言い出してくれるまで俺はフランスをイジリ続けていた。




