20話 人魚と嵐の予感
本日一度目の更新、多分あと数回は更新しようかと思っております。
コンコン――――。
「う、ううん……」
ヒラヒラ――――。
「や、ぁ……」
シュッシュッ――――。
「んんん……」
痛ッ――――こいつ尻尾で俺の手を振り払いやがった。
「しょーご君、小さい女の子をいじめて楽しい?」
ごめんなさい……俺は今、眠りっぱなしのルナの角を叩いたり、羽を開いたり、尻尾を擦ったりして遊んでいた。
やっぱ自分とは違う物が無防備に目の前にあったらついやってしまうよな? ――――はい、ないですよね……すみません。
それにしても暇だ、船旅と言えどこれは貨物船、しかもスクリューなど付いているわけでもなく帆を張って風を受けて進むのみ、結構時間がかかりそうだ。
「暇だな……そうだ、ちょっと甲板に出ても構わないか?」
一箇所でじっとしていられない男の代表格、響也がミケネに聞いているが――――ミケネが響也の頼みを断る訳もなく。
「いいよ、でもあんまり船員達の邪魔にはならないでね?」
「ああ、分かった……正吾、お前も来るだろう?」
当然の様に言い放つ響也は何故かドヤ顔だったが……俺はルナを見てないと――――。
「行ってくるが良い、主殿……この子は私が見ていよう」
富士さんが寝ているルナの横に座りなおしてルナの頭を撫で始めた……先程からどうにも気になっては居たらしいので別に構わないが、俺は響也の保護者かよ。
「わかったよ、行ってやるよ」
俺が立ち上がると響也は甲板に向かって歩きだした、その顔を見る限り……海にでも飛び込みに行くような顔をしていた――――というか飛び込むんだろうな、きっと。
ドボン――――そんな音を立てながら響也は広大な海原に飛び込んでいった、全裸で……最近風呂に一緒に入るなどしてもいないので久々に見るやつの肉体は、あの反復横跳びで鍛え上がられたのかとても良い筋肉をしていた……気がする、別に俺にそういう趣味はないのでよくわからないが少なくとも俺より筋肉はあった。
つか服脱ぎ散らかして行くなよ……と文句を垂れつつその服を畳む俺は完全にやつの保護者状態で、もし奴が船に戻れないような遠くに流された時のために召喚の準備までしているという徹底ぶりに自分で自分に少し引いた……いや、アレでも一応親友なんだしこのぐらいするよな?
五分……十分……十五分……あいつが飛び込んでから経過した時間である。
遅い、遅すぎる……人間に可能な潜水時間じゃない気がするが、まさかあいつ溺れて沈んで行ったか? あの筋肉じゃ水に浮かないのだろうか?
いや、あの努力の成果で人並み外れたあいつの能力ならこんなの平気だとは思うが、それに今気づいたが……あいつとの契約の繋がりであいつがまだ生きてるのは分かるようになっているらしい……なら大丈夫か。
あ、上がってきた――――海の底から浮かび上がってくる影が――――バシャッ――――どうやってやったか知らないが勢いよく甲板に飛び上がって来た、もろち……勿論、マッパな響也だその腕には魚――――の下半身を持つ半裸の女の子が。
「どこで拾ってきたんだ?」
「海底に落ちてた」
「嘘だろ……戻してきな『やだ』――――反抗期かテメェ!」
「やんのか!コラ!」
なんか喧嘩になってしまったがどうしよう、しかも響也のやつ腕の中の女の子というか人魚を落としたぞ。
「きゃっ」
落ちた衝撃で人魚は目覚めたようで短い悲鳴を上げる。
「大丈夫か?」
響也が紳士的に膝をついて、これまた紳士的な爽やかな笑みを浮かべつつ紳士的に手を差し出す。
大人になったな響也――――さっきまで無駄に怒ってた俺が馬鹿みたいじゃないか……そうだよな海底に女の子が、響也は落ちていたと言ったが倒れてたんだろう……そりゃほっとけないよな。
「え、ええ大丈夫で……す?」
響也に気づいた人魚はその手を取ろうとして固まった、何故ならこいつが全裸だったからだろう。
「……とりあえず服を着ろよお前」
俺は武士の情けとばかりに異空間から取り出していたバスタオルを響也の頭に被せた。
ところ変わって貨物室・休憩所――――俺と人魚を背負った響也がみんなの元に戻ってきたわけだが、ルナは既に目覚めたのか俺が買っておいた食料を食い漁っていた……比喩でも何でもない、俺の手荷物(異空間から取り出していた)を勝手に漁ってその中にあったパンとかスナック菓子を食ってやがった、多分亜理子が「いいよ」とか言ったんだろう――――別に俺もそんな言うほど気にしてはいないが。
「おかえり、ルナちゃん起きたからしょーご君のとこから食べるもの取ったけど良かったよね?」
「ああ、別にそのぐらいだったらいいぜ」
後の楽しみとして取っておいたコーラを飲まれた事を除けば別に大したことじゃないさ……懐のでかさを見せつけつつ心の中で泣こう。
「キョーヤ……その子誰ですか?」
ミケネが耳と尻尾をピンっと立たせて、少し迫力増しながら響也に詰め寄る。
「いやちょっと海底に落ちてたから拾ってきた」
猫に魚をやるように、ほらよっと言う感じで人魚をミケネに差し出す響也――――それは無理があるだろう。
「拾ってきた……そうですか……キョーヤ、少し……お話があります」
これは―――――相当荒れそうだな、海上の方は雲ひとつない晴天で荒れるような気配は微塵もなかったのにな……俺はこの後に起こる響也の人生初の修羅場に思いを馳せながらルナをそっと抱え、亜理子と富士さんを連れてこの場を離れることに決めた。
修羅場とか自分、心臓にダメージ入るんで多分書けません。




