17話 資金調達
前回書いてたのと同じサブタイトルに……しかし内容がかなり違うような…
「おめでとうございます、ええと、フジさん?」
レクスが拍手で富士さんを祝福している。
「ありがとう、私もようやく主人が見つかって嬉しく思う」
「そうですよね、私としましても店を畳む前に一人でも良いめぐり合わせをと日々努力しているのですが中々このような事は……」
富士さんは微笑みレクスを労うように頷く。
「良い、お主の働きは皆が一番よく知っている、私は先に行くが、皆も良い所へ貰われるように願っているぞ」
「おめでたいですねー」「そうだな……」「よかったね、しょーご君」
ちなみに今のが仲間の反応、ミケネ、響也、亜理子だ……何がよかったのかさっぱり分からないぞ亜理子。
「いや……俺、奴隷を買うお金なんて持ち合わせがないんだが」
「いえ、お代は結構ですよ先程も言いましたが奴隷商人を辞めて真っ当な商人としてやっていくつもりなので……もし、どうしてもとおっしゃいますならどうでしょう? 皆様がお持ちの品等を私にお売り頂いて、そこから代金を頂戴すると言う形にしましょう」
そういえば《異空間収納》とかに宝物庫にあった物を大量に突っ込んできてたっけな、丁度いいからここで全部出してやろうか。
俺は、みんなに少し離れるように言ってスペースを空けさせてから《異空間収納》の入口を《ホール》で開き、《サーチ》を使い中にある物を把握し《カット》で自分達で使う必要なものと売ってもいい物を分断、必要な物だけに《ストップ》を使い、売るものを傷つかないように放出した……また工程っぽくなったかがこの流れに名前をつけようにもいい名前が思いつかなかったのと、今後の必要性などを考慮してあえて考えなかった。
「こんなにたくさん……召喚術って凄いんですねー、では一先ず整理致しまして計算いたしますので少々お待ちください」
そう言ってレクスは山積み、いや山盛りとなった金銀財宝に手を伸ばした、量が量なので手伝おうかとも思ったが「大丈夫です、お客様に手間は取らせません」と断られてしまった。
自分の仕事に誇りを持つタイプのようで同じく未だに商品である奴隷たちの手も借りず一人で黙々と並べ替えている……と言っても《サーチ》と《カット》した時にある程度分類分けはしていたので倒れたり重なっている物を分けるだけの簡単な作業だった為か整理自体はすぐに終り、続いて計算に入った。
俺はそもそもこういった物の価値を知らないし相場ってのもわからないからどのぐらいになるかは分からないが富士さん曰くレクスは色を付けるだろうから安心しろだそうだ。
「計算終わりました、フジさんのお代を差し引いて合計で金貨四百五十枚となります」
金貨……この世界での通貨はどこの国でも同じヨコヅナエンというもので初代世界王が自分の故郷の通貨に合わせて作らせたという金貨、銀貨、銅貨ということらしい、昔は紙幣もあったらしいがそれは流行らなかったのだという。
ちなみに金貨銀貨銅貨の見た目は五百円玉、百円玉、十円玉にそっくりだった。
価値としては金貨が一万円、銀貨が百円、銅貨が一円ぐらいの価値で低等級の貨幣百枚で一個上の等級の貨幣一枚になるとかなんとか……俺は計算は出来ないわけじゃないがそれでも金勘定とか苦手なのでその辺のうんちくは軽く聞き流し、金貨は《小型異空間収納》に仕舞いこんだ。
「それじゃ、俺達は先を急いでるからこの辺でお暇させてもらうか」
金銭のやり取りを終えやや疲労した俺はさっさと宿でもとって休みたかったのでレクスに別れを告げた。
「そうですか、もっとゆっくりして頂いて結構でしたがそれでしたらお気をつけて、またいらしてください……次までには立派な店にしていますから」
「ああ、用事が済んだらまたこさせてもらう、それじゃまたな」
そう言って俺達――――五人はレクスの店を後にした。ま、こんなやり取りすると大抵二度と訪れないのがお約束というかフラグというかそういうのがあったりするんだけどな。
それからしばらくしてミケネの行きつけの宿についた俺たちだったが、そこでまた問題が発生した。
「すみません……お部屋は二部屋しか空きがないんですよ」
部屋が空いていない、なんでも近々式典があるとかでその見物客などが宿泊に来ており部屋が後二つしかないと言う。
しかも空いている部屋は予約済みでその客は明後日までには来るので泊まれるとしても今日一泊のみらしい。
「問題は部屋割りだな……ベッドがダブルベッド一つか、最悪男と女で分かれるしかないな」
女同士はあまり気にしないだろうが男同士で、それもこの年になって同じ布団で寝るのはやや抵抗が……。
「とりあえずその二部屋でお願いできますか?」
「かしこまりました、二部屋で銀貨十枚となります――――はい、金貨一枚ですね……お釣りの銀貨九十枚と、どうぞこちらが鍵になります」
宿の女将に鍵をミケネが貰いそれぞれの部屋に分かれることにした俺達……しかしこの後俺は予想もしていなかった事態に直面することになった。