16話 富士さん
前に書いてた奴の登場人物が二人ほど出てきます。
※感想を受けて修正しました。
この物語は主に作者の行き当たりばったりなひらめきによって作られています。
追加文:
ちなみにミケネはミケの娘というのは嘘で毛並みが似ていたということでミケが引き取ったのだとか……猫と人間で猫獣人など生まれないらしい、俺が無知だったのとリイヤさんの迫力に納得してしまったのが主な原因である。
いやーミケネがミケの娘だとか忘れていたっていうか、ミケの存在すら忘れて……作者は猫か犬かと言われれば熊派なので。
「!? ここはっ」
転移直後のミケネの言葉である、突然転移したのだから動揺しても不思議はないだろが、むしろ驚いているのはそっちではなさそうだ。
「どうして!どうしてここに……」
俺達は今、薄暗い部屋の中にいる……薄暗いと言っても明かりらしきものは全くなく奥の方にある入口らしきところから外の光が射し込んでいるだけのようだ。
ジメジメしてて少しかび臭く何かの倉庫といった感じだが一つ特徴をあげるならば、そこには無数の檻が存在しその檻の中には何かが居たということだろうか。
「出して! ここから出してよっ……なんで、なんでまたここに……うぅっ」
半狂乱になりながら泣き叫ぶミケネ……どうやら何かしらのトラウマがあるらしい。
「うるさいのぅ……いきなりなんじゃ、騒々しい……ん? お主達一体どこから入って来たのじゃ?」
俺たちのいる檻の奥から出てきたのは色素という色素が完全に抜け切った感じの白髪の女性だった、正直響也のなんちゃって白髪なんて目じゃないほどの驚きの白さを醸し出しているのはきっとそれに近いほどの白く美しい肌と輝く太陽の如き黄金の瞳だ……しかしそんなものより目に付くのがその巨大な双丘だった、亜理子も中々の物を持ってはいるがそれ以上で第一印象は富士山というか、なんというか……敬意を評してこの人は『富士さん』と呼ぼう。
富士さんが頭をガシガシ掻き欠伸をしているところを見ると寝起きだったようでミケネの泣き叫ぶ声で起こされたらしい。
「ん? お主……ミケネか? はは、なんとも懐かしいが何故このようなところにおるのじゃ? お主はレクスの小僧が解放したはずじゃろ?」
「え、あっ……そうでした、レクスさんはお元気ですか?」
どうやら正気に戻った様子のミケネは何事もなかったかのように、世間話を始めた。
「ああ、あの酷い父親が先月ようやくくたばってのでな、今はここの店主じゃからそろそろ昼飯時じゃしもうすぐ来るじゃろう」
噂をすれば、というやつか先程まで暗かった部屋――――というか店内に明かりが付き入口から青年が現れた。
「白竜様、お昼の時間です……よ? 貴方達は誰ですか? どこから入ってきて――――ミケネなのか?」
青年は笑顔から驚愕、困惑ところころ表情を変えているところに俺は――――。
「どうでもいいけどここから出してくれないか?」
自分で出れないこともないが見つかってしまった以上黙っていくこともないだろう、ミケネとも知り合いのようだし少しぐらいは話を聞いていこうか。
レクスと名乗る青年に檻の外へと出してもらった俺達と……檻の中にいるべきはずの富士さんも一緒に出てきたがレクスは特に問題とは思っていないらしい、というかレクスは他の檻の鍵も開けて他の……やっぱり奴隷なんだろうか、薄着というかほとんどただの布を纏った少女と呼べる者から熟女という感じの年齢の女性たちが檻から出てきた。
「すみませんね、お昼ご飯は奴隷の人の分しか用意してないので……」
「ああ、別に俺達は既に済ませたからな……それよりこちらこそ済まない、手違いとはいえ急に現れたりしてしまって」
「いえいえ……他者記憶転移、でしたか? ミケネの記憶を頼りに来たということは彼女にとってここが一番強く記憶に残っているということでしょうから少なくとも私達に責任がありますし、それに店を閉める前にまたミケネに会えて良かったです、ちょうどミケネを頼ろうかと思っていましたから」
他者記憶転移については喋るしかなかったとは言え誰も特に凄いとか騒ぐこともなくスルーされた、というのも召喚術自体そんなに珍しいものじゃない事や、召喚術に詳しい知識があるものが居なかったこともあってのようだ……ただ一人『富士さん』だけは少し驚いたような表情を浮かべ目の色が変わったように見えたが。
こっから少し長たらしい話があったが要点だけまとめると、昔ミケネが孤児奴隷という生まれてまもなく捨てられそのまま奴隷として育てられたという事、ミケネとレクスが幼馴染……といっても店主の息子と商品という関係だったという事、数年前にレクスが奴隷達の扱いに対して憤りを爆発させて父親に反発した結果ミケネだけが解放された事などなど、ミケネの口から聞いた……レクスはその間顔を真っ赤にして「いやぁ~」とか「そんなっ」とか「言わないで」とか愉快な反応をしていたが、ミケネが響也と惚気始めた辺りから真っ白に燃え尽きたぜ……みたいな感じになったり――――俺は全部聞き流していて詳しくは分からないが周囲の反応からは早く終わらないかという表情が伺えた。
ちなみにミケネはミケの娘というのは嘘で毛並みが似ていたということでミケが引き取ったのだとか……猫と人間で猫獣人など生まれないらしい、俺が無知だったのとリイヤさんの迫力に納得してしまったのが主な原因である。
《シンキングストップ》――――考えるのを止める魔法、思考停止とも言うがこの魔法の大きな特徴としては時間の流れの体感を遅くし周囲と差を作る事にある。
要するに周囲は一、二時間経っているが自分の実感では数分程度になる魔法ということだ。
弊害としては音が聞き取れない、視界が目まぐるしく変化する、記憶することが出来なくなるぐらいで魔法の効果の終了は任意な為、解除するタイミングを間違わなければ特に問題はない……と思ったけど思考停止状態だから魔法を解除する事自体を忘却していた。
「おい、大丈夫か?」
突如肩を揺すられ我に返る、どうやら外部から振動を加えると魔法は解除されるらしいな、声のする方を振り返ると富士さんが居た。
「なんだ富士さんか……」
「フジサン?」
「ああ、すまん、俺が勝手にそう呼んで――――」
と、告げようとしたその時……俺の肩からそこに触れる富士さんの手を伝って俺の魔力が流れ、パリンッと破壊音を響かせ富士さんの体から魔法陣が一瞬浮かび上がり壊れた。
「え、あ?」
訳も分からず口をパクパクさせている富士さん……やっちまったな――――これは《命名契約》その名のとおり相手にあだ名でもなんでもいいので名を付けて契約する魔法だが、今さっき名も知らぬ――――というか奴隷に基本的に名前はないらしいが――――彼女に『富士』さんと言う名前を付けてしまった上に思考停止明けだったもんで魔力をコントロールしきれておらず契約を行ってしまったらしい。
ちなみに先ほど砕けたのは隷属魔法の魔法陣とのこと。
「ふむ、どうやら契約がなされたようじゃな……仕方ないのう、これからよろしく頼むぞ主殿」
不可抗力で奴隷を手に入れた――――けど、俺奴隷を買えるほどお金持ってないんだけどな……。
富士さんはちょっと名前変わってしまったますが、原型は止めているというかむしろ原型になった感じなので個人的には大丈夫だと思っています。