プロローグ
文字追加してちょこっと修正しただけなので誤字脱字等ございましたらご一報ください。
俺達は全力で走っていた――――
何故かって?そりゃ自由のためさ、何から逃げているかといえば、クラスの余り物班、石田、石山、石川、通称ストーンブラザーズこいつらは三人でくっつく為五人で班を作ると大体残った俺らといっしょになる、そして俺は連中があまり好ましくないので一緒に行動することを拒否して逃げ出したのだった……今俺達は京都に来ている修学旅行ってやつだ。
正直仮病で休もうかとも思ったがウチの隣の家にはクラス一美しくもおっかない幼馴染な委員長様とか居るしそれは不可能、ならばと俺は自由時間になりなるべく怪しまれないように途中まで素直に、でも口ではいやいや言いながら行動していた、そしてチャンスは訪れた、運良く信号が点滅している場面に出くわし他の連中が慌てて横断歩道を渡るところを二人で見送った後、全力で逆方向へと走って来たのだ。
「なぁ正吾もうここまで来れば追って来やしないんじゃねぇか?」
俺の親友にして相棒であり宿敵でもある腐れ縁な幼馴染二号霧島響也だ。
クラス一、いや学校一の体力馬鹿で喧嘩好き、付いたあだ名が『喧嘩番長』俺の唯一背中を預けられるパートナーだ。
そして、そんな俺についたあだ名が『召喚術師』これは響也が呼べばどこにいても駆けつけてくれる事に由来するのだが、俺はこのあだ名が嫌いだ、これじゃまるで俺と響也が主従みたいじゃないか。
俺と響也はあくまで対等、友でありライバル、周りはそれを理解していない。
その理由はといえば俺達がクラスでは不良というレッテルを貼られている、まあ学校全体で見ても不良生徒と思われている節もあるが、なんでまたこんなのが退学になってないんだよってぐらいの悪……っていう噂になっていて響也を抑えて管理しているのが俺でありそのお陰で響也は退学にならずに済んでいるとかなんとか。別に好き好んで悪ぶってはいないのだが、噂というのは直ぐに広まる、それも定期的に流れているらしいので、一向に改善はされていない。まあ響也が週一で喧嘩して顔とかを怪我しているからなんだろうけど、学校とか警察のお世話になるようなレベルの喧嘩じゃなく川原で殴り合って共倒れしてお互いを認め合う的な感じだ。
日頃の行いというものがあるのだろうか? 全力ダッシュしてここまで来たんだが、運もさっきの交差点で使い果たしたようだ。
クラスにおけるカリスマ男子の班と委員長様の班が目の前に居た、俺を探していた訳ではないようだが、一人走っている俺を見つけて、一気に囲みやがった、なんだこの包囲網は俺らは犯罪者かなんかか!つか手際が良すぎるだろう!
「ちょっと、しょーご君? 班の他の人達はどうしたの?」
我らが委員長様、嘉成亜理子、通称『金糸雀栗鼠』が仁王立ちしてらっしゃる。
豊満な胸に毅然としたその振る舞い、男女共に人気がある美少女と言っても過言ではないね、こんな子が家の隣に住んでいるというのもラッキーな話なのだが、不幸なことに今はただの幼馴染でクラスメイトだ。
「まさか、逃げてきたんじゃないだろうな?」
クラスの人気者、カリスマイケメンの清田正義が図星をついてくれる、まあこいつとも少し因縁があって、何かにつけて目の敵にしてくるわけだが、そのせいで俺らが悪目立ちする、全く面倒な連中に出くわしたもんだぜ。ちなみにこのイケメンは幼き日の整形によるもので天然ものでは決してない。
その他には、委員長班の保健委員の吉田おっとりしていて癒し系女子、男子にモテる、風紀委員の坂本つり目だが、胸も大きく男子に人気……(胸だけな)、飼育委員の桜井はなんかうさぎっぽい女子、飼いたい女子ナンバーワンだと聞く、そしてカリスマ班のサッカー部員の長島はイケメンの親友らしくさわやかなスポーツ少年、ボクシング部員の上木は将来プロボクサーかと期待されてるらしい、生徒会書記の倉井は名前の通り暗いやつなんだが、何故かイケメン達とよくつるんでいる。イケメンとは親同士の付き合いがあるとかなんとか。
この八人による鉄壁……というほどでもないがあまり突き飛ばしたりしたくない(特に女子が)ので、破るに破れないディフェンスに俺は退路を見いだせずに居た。
「そういうお前らはどうしたんだ? なんか五人グループの割に二人足りないじゃないか!」
「しっ! ほっといてやれよ正吾、どうせあれだろいつもの駆け落ちデートだろ緒方と船橋は」
緒方っていうのはイケメン野球部員、船橋っていうのが天才ピアニストな美少女、要するに美男美女って連中だ、こういった課外授業ではよく二人で抜け出してラブラブしてくるのが日常茶飯事だ。
「そうなの、今探してるんだけどね……とりあえず私はしょーご君達にについていくね、ちゃんと他の三人に会うまで安心できないから」
さり気なく俺と響也間に入り無理やり腕を組む、亜理子のお気に入りの位置だ。こいつは全く……、そろそろ俺らともこういうの辞めた方がいいと思うんだがな、胸が当たってるし。
「待って亜理子、君まで抜けたらややこしいことになる、そんな汚らしい連中と行くなんて許さないぞ!」
だが亜理子は聞く耳を持たない……いやそもそも亜理子が正義の話をまともに聞いたことがない。
大体聞き流して、うんうん頷いているだけだ、それによって起きた数々の悲劇を俺は忘れない。
亜理子はどこから探す? といいながら自分の行きたいところを印してあるマップを取り出し俺らに見せる。
響也は慣れたような顔をして仕方ない、と言った上で一緒にマップを見入っている……少しは空気を読もうよ。
一切話を聞かない亜理子か未だに亜理子から離れない俺たちにかは、わからないがイライラしだし興奮状態になった正義が俺の胸ぐらを掴み殴りかかろうとして来た。しかしその時、それは起こった。
「え? 何?」
最初に異変に気づいたのは亜理子だ、俺らはその声に辺りを見渡す。正義も握った拳を下ろしている。
別に周囲に変化はない――――いや変化しない。
できないかのように全てが止まっていた、時が止まったかのように、いや止まってんなこれ、鳥とかが羽ばたかずに空中に静止してんだもんな。
足元が光っていた、突然輝き出す俺の体、そして地面には何やら魔法陣のような文様が浮かび上がる。
足元の魔法陣に気づいた他の連中も動揺し出す、そりゃそうだよな、こんだけ光ってんだ、なんかちょうど他の連中も魔法陣の上に円に沿うように立っている、だから周りと違って止まっていないのか。
俺は今なら正義達の隙をつくチャンスだとその場を離れようとするも身動きがとれない。俺に伝わってくる感覚といえば亜理子の体温と胸の柔らかさだけだ。
「何がどうなってんだ――――」
その問に誰も答える間もなく、俺たちは光に呑まれ、どこかへ飛ばされるような感覚を味わった。
冷たい床の感触……大理石ってやつか?
気がついた俺は身を起こし辺りを見回してみる。
――――RPGとかに出てくる神殿のような場所に俺たちは居た。
俺と響也、カリスマ班、そして委員長班の連中、総勢十人。
そして誰かがやってくる気配がするぜ!って訳ではないが複数の足音を聞いた俺は気絶しているみんなを揺さぶって起こす。
「ここは……一体?」
目を覚ました連中の最初の言葉は全員一言一句間違えずに同じ反応を見せる。
そして俺達の背後にはさっきの足音の主が立っている――――ような気がする訳だが。
そしてそこにはよくありがちな巫女さん(神社とかの日本風のやつ)風の少女がいて、アニメや漫画でありがちな台詞を言ってくるのであった。
「ようこそいらっしゃいました、勇者様方!どうか、この世界を救って下さい!」