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trip change  作者: tamap
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戦士の一族

 彼の故郷での彼の年齢はまだ15。

故国から一歩も出た事の無かった戦士が初陣で初めて外国へ旅立った時、最初の一年ばかりは抜身の刃と形容されるほど気配も表情も態度も尖って刺々しくなるそうだが、今の所彼には他人に気取られる程のそういった変化は無いようだった。

それはレイコのお蔭かも知れないし、また彼が10歳の頃から見込まれてずっと師事して来た師匠の教育の賜物かも知れない。

 彼の師匠は変わった方で少々風変わりな戦士を生み出す事で有名だった。

彼に育てられた戦士の初期生存率は今まで100%と言うめざましい成果を出しているがすべての一族に合うやり方では無いようだ。


 国から初めて出る時、見習いとしてベテラン戦士に付き添われているとは言う物の、戦死や不帰になる者の一番多いのが見習い期間なのだ。

戦士を一人生み出すのに掛かる手間と費用を考えれば国としてもすぐに死なれてしまうのは困る。


 一族の80%が戦士の一族だが女性戦士はいない。

何しろ生まれて来る子供の10%足らずしか女性は生まれて来ないのだ。

だから、一族に女性として生まれて来た子供は、それは大切にされる。

国を出ること以外すべての自由を持ち、生まれた時から男の子供より一段も二段も上の身分だ。

そうやって大きくなった一族の女性は配偶者から選ばれるのではなく選ぶ。

リンの母もそうやって父を選んだのだそうだ。

一族の女性に政略結婚などと言う言葉は無い。


 そんな女性の希少な一族だから、あぶれる一般の戦士は外で妻を見つける。

一族の男には(一目惚れ)と言う厄介な病がある。

出会った瞬間と言う訳では無いが本能的に相手を見つけ、恋に落ちるのだ。

そうなったらもう、手におえないのは先輩戦士たちも己の歩んできた道で判っているので止める事も無く協力すらする。

不思議な事に本能的に選んだ相手に間違いが全く無いのだ。

生涯愛し合い添い遂げる。

もっとも、(一目惚れ)が一度で済まない事がままあるのが厄介な病とされている部分の一部ではある。


 彼の師匠もそうやって妻を外国から連れ戻って来た一人だった。

ただ、その妻が遠い昔に滅びたとはいえ大国の女王様であったと言うのが師匠に数奇な運命を辿らせたのだ。


 クリスタルの姫と呼ばれた元女王陛下には敵があった。

古代に高度な文明を築いていた彼女の国と敵対しているその国は彼女と婚姻する事でその国を手に入れようと謀った。

けれど、その魂胆を見透かした彼女の叔父が彼女を長い不思議な眠りに就かせた。

彼女が目覚めた時、あれほど大きく美しかったクリスタルの都は消滅し、敵の姿も無かった。

そして、彼女は師匠と出会った。

お互いに一目惚れだったらしい。


 彼女を連れて帰国した師匠は王の肝いりで彼女と結婚し、一人の男の子を儲けた。

第一子を得るまでの休暇を終えて次の任務に出た師匠は不帰となり、クリスタルの姫は悲しんで国から姿を消した。

それが千年前の事だった。


 今、師匠は愛する妻のクリスタルの姫と幸せに暮らしている。

別に千年生きた訳では無いけれど。

師匠は任務の帰り、クリスタルの姫と同じように時を越えた敵対勢力と遭遇して捕えられ強制的に長い眠りに就かされていたそうだ。

そして、クリスタルの姫も悲しみに時間の制限無しの眠りに就いていたとか。

千年後の一族に救い出された師匠は本能的に愛する妻が出会った場所に帰っているに違いないと感じて迎えに行き目出度く二人は出会う事が出来た。

そして、クリスタルの姫の血筋が彼らの一族のご先祖に当たると言う事実も判った。

姫が永い眠りに就いた後、長期に渡る戦争で疲弊した姫の一族が長い流浪の果てに辿り着いたのが今の彼らの都だった。

そういう訳で、今はクリスタルの姫は王族として遇されている。


 そういう不思議な話が山とある一族なのだ。

伝説や伝承等と言う不確かな物では無く、現実に目の前でおきている不思議も数えきれないほど。

何しろ、一族のご先祖様は戦神と祀られるアースル神なのだから。


 自分が別世界に飛ばされたのももしかしたら神の力だったのかもしれないとふと思った。

以前、たしか似たようなことがあったと聞いた記憶が・・・。

クリスタルの姫の今世の御子息で、黒髪茶色の目の一族の中でたった一人色違いの王子が拘る事件。

その時も目も眩む閃光で王子が飛ばされたのでは無かったか?

今の体で目覚める直前そんな閃光を見た気がした。

まだ彼が産まれていない昔の事だが師匠に聞いたのだった。

あれは、神の血が銀の髪と目と言う形で色濃く出た王子の血筋ゆえの事件だったと思ったが、考えればアースル神の血が最も濃く伝わっていると言う王族の血を自分も引いていたのだったと思う。

この作品は本体となる未発表作品の枝゛の一本です。

できるだけ周辺の説明はするつもりですが判りにくいかな~?

そんな物だと思って気にしないで読んでくださると嬉しいな~。


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