予言
無事に日本に到着した。
あれから軍隊がやって来て、そのせいか次なる襲撃は無かった。
軍隊に捕虜にしていた男達を引渡しリンとレイコは軍の保護を受ける事になったが、その後も一悶着あった。
軍隊に同行して来たのは藤村家の私兵とも言える桑原達だった。
レイコの父はその国の軍隊をあまり信用して無くて大金を使って桑原達をねじ込んだらしい。
レイコの父の心配は的中していた様で、下っ端の兵隊の何人かがレイコを再び攫おうとしてリンに撃退された。
部隊の隊長はレイコの父に高額の賄賂を貰った上に成功報酬としてさらに高額の金を提示されていたので裏切る気づかいは無く、かえって部下の不始末に激怒したほどだ。
誘拐組織も部隊丸々の買収は無理だった様だ。
マロとは【名無しの村】で別れた。
軍隊到着前にささっと荷物をまとめて去って行ったのだ。
【名無しの村】の住人達も軍隊到着時には姿を消していた。
そうやって、外部から人が来るたびに彼らは住まいを移しているようで、幻の民族たる由縁だ。
残ったのは驚くほどあっさりと建物さえ分解して持ち去られた空地だけだった。
「大シャーマンに何言われたの?」
大冒険のヒロインである筈のレイコは思いがけず元気いっぱいで実家の屋敷へ向かう車の中で思い出したように尋ねた。
あちらのホテルでも、帰りの飛行機でも緊張を隠せなかったレイコだったがやっと日本に着いて緊張が解けたようだ。
「うん、軍隊の中にあちらの手先になっている者が居る事。
だけど、後手に回ってトップを買収できなかった事で失敗する事。
隊長は欲の皮が突っ張っているけれど、それ故に信用できる事」
「まあっ、全部判ってたのね!」
「誘拐組織は間もなく壊滅する事。
幾つかの国が政変でトップが変わる事。
藤村の作った発電装置が今後の世界の主流になる事。
レイコが藤村を継いで会社が世界のトップに躍り出る事。
いつか、レイコが支援するNGOが世界の為にとても大きな事を成し遂げる事」
「え、えええーーー??
何でそんな未来の事まで?」
「大シャーマンは未来を見通す存在らしいよ。
その力で大昔から一族を導いていたらしい。
予知と言うより確定した未来が見えると言っていた。
ココパはその大シャーマンより先の未来が見え、さらに色々な能力があるらしい。
大シャーマンが言うには今まで生まれた中で一番のシャーマンだそうだ。
まだ15歳だそうだが」
「ええっ!うそ、30過ぎとばかり思ってたわ」
「20歳くらいで、大都会をスーツを着て歩く自分を幻視したそうだから、都会に出て来るのかもしれない。
レイコともう一度会うと言っていたぞ」
「まあ、あの顔は忘れっこないわよね」
レイコは顔全部を覆い尽くす入れ墨を思った。
「思いがけない人物と、思いがけない形で再会するそうだ。
全て、味方だから安心して良いのだとか。
これより先レイコを陰謀が襲う事は無く、何かあった時は純粋に事故だと言っていた。
何人ものガーディアンがレイコを守るのだそうだよ」
「その一人はきっとリンちゃんね」レイコは微笑む。
そして・・・。
リンは大シャーマンが弟子のココパと共に成した予言を思う。
レイコがココパと逢うその時、リンの姿は無いそうだ。
その少し前、彼は死ぬ。
どのようにして死ぬのかは告げられないし、今回に限っては見通せないそうだ。
「あなたの魂が余りに眩くて」大シャーマンは言う。
「その魂は死の後消滅します。
いえ、手の届かぬ所へ飛び去るのかもしれません。
魂が、ましてあなたの様な強い魂が消え去るなどとはあり得ぬ事ですから」
それが、レイコには告げられない大シャーマンの最後の言葉だった。




