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怖恐 シーズン2(仮名)  作者: くきくん
第一章 神崎病院
8/36

1-3

――― コンコンコン・・・コンコンコン・・・


あかん・・・沙織の言葉のせいで顔を見る事さえ恐怖に感じてしもて、振り向く事が出来へん。実際にはミラー越しに顔を見ようと試みたんやけど、辺りが暗くなり始めたせいもあって、確認出来へんかったんや。


せやけど、中に人がおるんは外から見えてるんや・・・。それを無視し続けるんは耐えられへんで・・・。と、不意に後部のドアが開閉する音が聞こえた。


慌てて振り返ると、順がドアを開けて外に出ると二人組と向き合ってるのが見えた。おいおい・・・何やっとんねん!


二人組の男の方が順に話し掛けてるんがまず耳に飛び込んできた。


「こんな所で何をされてるんですか?」


余計なお世話や!と、言いたいトコやけど、さすがにこの段階でそれを言うのは早計やと思って、とりあえず順の応対を見守る事にした。


順の掴み所の無い性格と意味不明な言動を持ってすれば、もしかしたらこのピンチを打開出来るかもしれへん。そんな淡い期待も込めつつ・・・。


「実はそれがし達の車が故障しまして、それで携帯も繋がらず立ち往生してましたんや。」


あれ?順よ・・・いつもの意味不明な言動はいずこへ?思いっきりありのままを話しとるがな!


「そうでしたか・・・。実は先日この場所で車に乗ったまま自殺を図ろうとしたカップルがおりまして、そのカップルは我々の発見が早かった為に、未遂に終わったんですが、それ以前にも何度かこの場所で自殺してカップルがおりまして、警察も同じ場所で立て続けに起きた為、不審に思い調べた所、どうやらインターネットの掲示板で、この場所で愛する人と命を断てば、あの世で永遠の愛を手にする事が出来るという噂が流れていたらしく、そんな事もあり我々神崎病院の者や近くの集落の者達が交代で見回りをしている所なんです。」


なんや、話だけ聞いてるとむしろええ人達に思えるんやけど、これでも沙織はまだ危険と感じてるんやろか?順がドアを開け放ったままにしてるせいで、車内で会話すると、二人組の耳にも入るやろし、確認出来へん・・・。


「そう言えばそれがしもその噂はネットで見た事がありますわ!たしかどっかのチャンネルのニュースでは一部報道されたはずやけど、その日は他にデカいニュースがあったせいで、他の局では全く触れられる事もなかったんや。だから、ニュースでは自殺未遂とだけ報道され、その理由などは報道されへんかったんちゃいますか?」


「その通りです。ただ、週刊誌の記者は何社か取材に来ましたが、政治に大きな動きがあったり、芸能界でも大物俳優の自殺未遂騒ぎで一面を賑わしてるんで、ほとんどこの事件には触れられてません・・・。」


俺もそんな事件の事は知らへんかったわ。それにしても、そんな話を信じて命を断とうやなんて、どないなっとんねん・・・。生きてたら辛い事もあるけど、ええ事もいっぱいあるんや。皆、その為に辛い事を乗り越え歯を食いしばって頑張ってるんや!


人生決して平等やない事はわかる。子供の頃はどっかで平らになると思ってたけど、それは無理や。それでも精一杯生きて、生きてるからこそ味わえる幸せを・・・って、ちょっと浸ってもうたわ。俺の人生観は取り敢えず置いといて、この展開をどうするんや?心・・・。


そんな俺の気持ちを察してか心が口を開いた。


「さっき言うた通り車が故障してしまいましたんや。JEFを呼ぼうにも電波が通じへんので困ってるんですけど、この近くに車を見てもらえる所ありませんか?ガソリンスタンドでも、もしかしたら見て貰えるかもしれませんし、それでも構いません。」


すると、二人組の男の方が、


「残念ながらこの辺り一体には強力な磁場が存在してるらしく、携帯電話は通じません。それどころか我々の院内のパソコンさえ、回線が不安定で新しく有線を引き込む案を検討している所なんです。あと、ガソリンスタンドは歩いて行ける距離にはありません。」


「それやったら、このまま車を乗り捨てて下山するしか無いって事ですか?」


心の声が次第に大きくなる。たしかにこの時代に車が故障したくらいで乗り捨てて下山とか信じられへん・・・。男は申し訳無さそうに、


「すぐ近くに我々の勤める病院がありますんで、そこまで来て頂ければ修理業者に連絡してみます。ただ、この辺り一体は残念ながら午後六時を回るとほとんどの工場や店は閉まるので、今日中に修理というのは、難しいと思ってもらった方が・・・。」


と、語尾を濁した。


「ちょ、ちょっと!伊勢海老は?但馬牛は?まさか、車内で一夜を過ごせって言うん?ありえへんし!また、この展開?」


麻紀が助手席でキレ出した・・・。せやけど、この二人は関係ないんや。そない聞こえるくらいデカい声で言わんでもええがな。案の定、麻紀の愚痴が聞こえたらしく、更に申し訳無さそうに男は口を開いた。


「病院で申し訳無いですけど、一緒に来てもらえれば食事くらいは提供出来ますよ。伊勢海老とかそない豪勢なもんはありませんけど・・・。病院はこの先すぐですし、雲行きも怪しくなってきましたから、取り敢えずそちらへ移動しませんか?」


なんや、この展開・・・。

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