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「おい、順、危険や!」
俺は順に向かって大声で叫ぶ。
「あれ?」
近づいてみるとそこには、順が暗闇に一人立ち尽くしているだけだった。ただ、相変わらず順には何かが見えているのか暗闇の方に向かって話しかけていた。
「すんません。道に迷ったんですけど、神崎病院までの行き方教えてもらえますか?」
人影が見えたのは俺だけやったんやろか・・・いや、確実に沙織には見えてたはずや。問題はその他の奴らに見えてたんかっちゅうこっちゃ。
「順ちゃん、一人で何してんの?」
麻紀が順に突っ込む。
「麻紀ちゃん、見えへんのか?老夫婦がそこに立って・・・あれ?さっきまでおったのに、どこへ消えてしもたんや?」
順は周囲を見ましては目を擦った。順の視界からも消えてしまったようや。一体何やったんや・・・たしかに人影は見えたんや・・・すると沙織が、
「なんとか除霊出来たわ。かなり強い念を持った霊だったから、ダメかと思ったけど・・・」
また、訳の分からん事を言い出した。除霊???いつの間にそんな事してたんや。そもそもあの奇妙な掛け声っちゅうかなんかわからん呪文みたいなもん聞こえんかったけど・・・
「除霊ってなんやのん!ウチには何も見えへんかったけど・・・」
麻紀が不思議そうに順と沙織を見る。
「ウチにも見えへんかったで。二人して何を言うてるん?」
詩音にも見えへんかったようで、こちらも不思議そうに二人を見ていた。ただ、俺には人影は見えた。それも確実にこっちを睨んでた。一人やったら男のくせに悲鳴あげてたかもしれへん。その位強烈な何かを感じたんは確かや。そやけど、今は暗闇が広がってるだけで、何も見えへん・・・
「あんた達、訳の分からない事ばかり言ってないで、さっさと病院に戻るわよ!明日は早いって言ったじゃないの。除霊だかなんだか知らないけど見えない人たちからすると迷惑なのよ!とにかくついて来て頂戴。」
コガッチが強い口調で言い放った。順はまだ信じられないように辺りをキョロキョロと見回している。
「まあ、何事も無かったんやから良しとしよ。気を取り直して病院へカムバックや!」
心が少しギクシャクした空気を変えようと思ったのか、場を和ませようと元気な声でそう言い放った。
「それがしには見えてたんや・・・忍者やったんやろか・・・早すぎて立ち去ったのを気付かへんなんて一生の四角や・・・」
不覚や!!と、突っ込むのは我慢した。コガッチは既に歩き始めていた。それに気付いたのか皆も歩き始めた。しばらくは無言のまま皆歩く・・・暗い道はどこまでも続いているように思えた。病院に近づいたんなら病院の明かりが見えてもええはずやけど、まだ見えへん。
「コガッチ、後どの位で病院に着くんや?」
俺はたまらずコガッチに尋ねた。
「そうね、後10分も歩けば着くはずよ。集落からはそれ程距離はないわ。もうすぐ分かれ道に差し掛かるはずだから、そこまで来ればもうすぐよ。」
「それにしても真っ暗やな~ホンマに蛇とか出てきても気付かんわ。」
麻紀がボソッと漏らす。ライトが無ければ確実に何も見えへんかったやろ。そこは素直に順に感謝や。こういう時には頼りになる男や。
「病院に戻ったらどうするんや?車で一夜を明かす方がええんやろか?」
心が歩きながら話しかけてきた。正直車がええのか、病院がええのかわからへん。ただ、新館でさえあの恐怖や旧館はもっと怖いはずや。まだ朝まではかなり時間もある・・・また寝れそうにないんやろなぁ・・・
「正直俺にもどっちがええかわからん。ただ、病院の方が人はおるんやから安心は安心やな。」
看護師さんや山方さん、それにコガッチもおる。田代館とは明らかに違ってちゃんと生きた人間がおるんは確かや。それに沙織の除霊、信じ難いけど、いざと言うときには頼りになるかもしれへん。心強いのは確かや。
「確かに病院には人がおるもんなぁ。田代館とは違って生身の人間が存在してるんは確かや。」
心も同じことを考えてたらしく、そこは同意見のようや。とりあえず病院に着いたら、一回皆で相談した方が良さそうや。麻紀と詩音は霊の存在信じてへんようやし、反対に沙織はめっちゃ信じてる。順は信じる信じない以前の問題や・・・心は霊の存在は信じてるけどあまり見えへんみたいや。
「とりあえず、病院着いたら皆で会議にかけた方がええやろ。」
「せやな。そうしよ。」
やがて、コガッチの言うてた分かれ道に着いた。
「ここまで来ればもうすぐよ。ほら向こう側に明かりが見えるでしょ。」
コガッチが指さす方を見ると確かに少し明るく見えた。無事に病院にはたどり着けそうや・・・




