4-2
結局なんやかんやで、ロビーに来てから30分が過ぎた・・・。さすがに麻紀達も遅過ぎる。仕方無く心をその場に残して二階に様子を見に行く事にした。
「順が見つかってもここにおってな!上で看護士捕まえて聞いてみるわ!」
「オッケー!俺もいっぺん電話してみるわ。さすがに遅過ぎるし、なんかあったんかもしれへん。」
話しながらエレベーターのボタンを押す。すぐに開いて乗り込むと二階を押した。鏡に囲まれたエレベーター内は一人やと不気味や。出来るだけ鏡を見んようにして、背を向けた。
そんな心配を他所に、呆気なく二階に到着した。扉が開くとすぐ近くにいた看護士に問い掛けた。
「女子三人組はまだシャワー室におりますか?」
麻紀達がシャワーの事聞いてた看護士やから覚えてるやろ。
「ああ、あの三人でしたら、10分程前にシャワー室からで出てきて、エレベーターに乗り込むのは見ましたよ。」
エレベーターに乗り込んだ?ほな、どこに行ったんや?思わず俺は、
「その後どこに行ったか知りませんか?」
と、聞いてみた。すると、看護士は困惑した表情を浮かべ、
「あなた方と合流したんじゃないんですか?」
と、逆に聞き返された。
「それが、俺達はシャワーを終えた後一階のロビーでずっと待ってたんですけど、誰一人エレベーターで一階に下りて来てません。エレベーターに乗り込むのは見たんですよね?」
「ええ、間違いなく会話しながら乗り込んで行く姿はお見掛けしましたよ。一階で下りたとばかり思ってましたが、私もエレベーターのランプをずっと見てた訳じゃないので・・・。」
う〜ん・・・。この病院に知り合いでも入院してるんならまだしも、好意でたまたま一泊させて貰う事になっただけで初めて来た病院や。どっか他のフロアに行く理由が無い。
それに俺らが待ってるのも知ってるやろし、そもそも病院をウロウロしてもしゃあない。
「もし、見掛けたらロビーで待つように伝えてもらえますか?後、山方さんにも伝えて頂けると助かります。」
「山方さんは今食事休憩のはずなので、後で伝えておきます。他の看護士にも見掛けたら声をかけるように言っておきますね。」
「よろしくお願いします。」
それだけ言うと、急いでエレベーターに乗り込みロビーへ戻った。心はスマホを耳に当ててたけど、無言やから相手が出えへんねんやろ。
「あかんわ。10分前にはシャワー室を出てエレベーターに乗ったそうや。」
「乗ったって・・・俺らずっとここにおったやん。下りて来たら気付くやろ。せやけど、誰一人・・・っちゅうか、エレベーターが開いたんすら見てへんで。」
!?そう言えば、一回エレベーターランプが二階で止まって、その後一階には止まらず地下二階まで下りていったん見たわ。
「実は・・・」
俺はその事を心に話した。
「地下二階・・・それが麻紀ちゃん達かどうかはわからへん。それに地下二階って何があるんや?」
そう言いながら心は周囲を見回した。そして、何かを発見すると足早に、そこへと向かう。俺も後ろからついていくと、そこには院内の地図が書かれた案内板があった。
「地下二階は・・・霊安室って書いてあるわ。そんな所にわざわざ行くとは思われへんな。面白半分とか死者に対して失礼やし、そのくらいのモラルはあの三人も持ってるやろ。ますます意味がわからへん。」
「霊安室以外になんか無いんやろか・・・。」
独り言のように俺は呟きながら地図を見た。地下もここと同じように縦長の構造や。イマイチ方角がわからへんけど、多分南北に縦長のはずや。で、南側は霊安室、北側は上からテープが貼ってあり、立入禁止とだけ書かれてる。
「たしか、ここの新館ってまだ出来てから日も浅いって言うてたよな?それで立入禁止っておかしくないか?仮に倉庫とかやったら建てる時に仕切りかなんかで初めから区切って関係者以外立入禁止とかにするんちゃうの?」
「まあ、事情は色々考えられるやろけど・・・。山方さんがおったら聞けるんやろけど、休憩中やしなぁ。順は何度電話しても呼び出し音はなるけど、出ぇへんし、静まり返ってるから耳も澄まして見たけど、何も聞こえへん。多分病院やからサイレントかマナーにしてるんやろ。」
それは、困った。麻紀達もおらへん、順もおらへん。ん?そう言えば麻紀に電話すればええんちゃうか?俺は急いで、スマホを取り出し、麻紀に電話をかけた。
・・・。あかん、何回か呼出音鳴るけど、切れる。電波の悪い所におるんやろか?やっぱり地下か!
「麻紀ちゃん繋がらへんのか?」
「いや、呼出音鳴ってるんやけど、雑音入って切れるんや。もしかしたら、繋がったけど、切れてるんかも知れへん。メールしてみるわ。」
長文打ってもしゃあないし、シンプルに『どこにおる?』とだけ打って送信した。取り敢えずこのまま待つしか無いやろ。
「気付いて返信してくれたらええんやけど・・・。」
「順にはメールもしたんやけど、連絡あらへんねん。ホンマ、どこ行ったんやろ。」
と、スマホがブルった。心も覗き込むように身を乗り出してきた。
『地下二階から出られへん。なんとかして。』
・・・やっぱり地下なんか!って、なんで地下に下りたんや?
「出られへんって、どういう事やろ。太一、取り敢えずエレベーターで急ぐで!」
言い終える前に心がエレベーターのボタンを押し、素早く飛び乗った。俺も、スマホのメール画面を開いたまま慌てて心に続く。
「なんでや!地下二階も地下一階もなんぼ押しても光らへん!どういうこっちゃ!
」
パチパチパチパチと、心が行き先階数のボタンを連打する。が、虚しく音だけがエレベーター内に響き渡る・・・。
「もうええ!心、階段で行くで!」
「よっしゃ!わかった!」
二人で急いで、エレベーターから出ると階段の場所もわからず、売店の方の廊下へと駆け出した。病院やし、走ったらあかんと思いながらも、足早になってまう・・・。
「こっちに階段あるんやろか?」
「どっちでもあると思うで!構造的に両端やろ!」
売店を過ぎ、更に廊下を奥へ進む。ふと左のソファーに人の気配を感じ、視線を移すけど、誰の姿も見当たらへん。なんやろ、この感じ・・・。
「今、誰かおったか?」
「いや、誰も見てへんで。なんでや?」
「ソファーに人の気配を感じたんやけど、気のせいか・・・。」
俺は一瞬振り返りそうになった。けど、振り返るとうまく説明出来へんけど、あかん気がした。突き刺さるような視線を背中に感じる。それは熱いくらいに感じた。
振り返りたい衝動をなんとか抑え、進むと、廊下は突き当り、左右に分かれてた。
左右を確認する・・・。どっちも奥には扉が見えた。いちいちどっちに行くかを心に聞いた所で分かるはずも無いやろし、取り敢えず右に進んだ。
「非常階段って書いてるわ!」
俺は扉に近寄ると、両手で扉のノブを回した。すると、ノブはカラカラと空回りするだけで、感触が無い。仕方無くそのまま押すと、問題無く開いた。
「ドアノブ壊れてるやん!?まあ、細かい事は置いといて、地下二階に急ぐで!」
先に俺が階段を駆け下り、心があとに続く。20段くらい下りると、踊り場があって、180度向きを変え更に下る・・・!?
「お、おいっ!順!どないしたんや!」
ちょうど地下一階の床にうつ伏せで倒れてる順の姿が見えた。急いで階段を下りて駆け寄ると、思わず揺さぶりながら問い掛けた。すると心が、
「頭打ってたら、揺するとマズい!落ち着け!太一!」
と、俺の肩を掴んで揺するのを制止した。
「ん・・・う、ううぅ・・・むっ!?・・・みぉ!!た、太一君に、心!?あれ?それがしは・・・っ痛!なんかどっかが痛い・・・。」
「大丈夫か?何があったんや!」
「ううぅ・・・たしか、白衣の女性を追いかけて、階段で足を踏み外し転げ落ちた所までは覚えてるんやけど・・・その、その先が思い出されへんねん!!!」
いや、それは多分全部覚えてるんやと思うで・・・。そのまま気を失って現在に至るっちゅうことやろ。
「そんな事より、なんで太一君と心がここにおるんや?」
お前がおらへんようになるからやろ!と、言いたいのを必死に堪え、
「それは置いといて、頭打ったんちゃうか?痛いんか?」
「それがしは鉄人のような鉄人や!痛みなんかある訳無いやん!」
さっき、痛い言うてたがな・・・。
「見たところ大丈夫そうやし、気分悪くなったら言えよ!幸いにもここは病院やし、診てもろたらええ。実は麻紀ちゃん達が地下二階から出られへんらしいんや。それで向かう途中でおまえが倒れてたんや。」
心はそう言いながら順の腕を掴んで、引っ張り上げた。
「地下二階?なんで、そんなとこにおるんや?シャワー浴びてたんちゃうの?」
「理由はわからへんねん。取り敢えず痛いとこ無いんやったら、このまま下りるで!」
どの辺りから落ちたのかわからへんから、なんとも言えへんし、心配やったけど、焦点もあってるし、言動もいつも通りや。麻紀達と合流したら、山方さん探して順の事は診てもらうとして、今は地下二階まで付き合うてもらう事にした。




