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そして、沙織は更に続けた。
「いくら霊安室の需要が少ないとは言え、新館建設前に、どの位の需要があるかなどを踏まえた上で設計して建築したはずよ。これだけ大きな建物なんだし、病院と言っても経営なんだし、出来る限り無駄を無くすのが当然よ。それなのに、向こう側のスペースを立入禁止にまでしているのは、余程の理由が無い限り、普通は有り得ないわ。」
すると、小柄ちゃんが頷きながら、
「それは一理あるわね。医院長は腕は確かだけれど、お金にはうるさいのよ!とにかく、細かい事までガミガミガミガミと嫌味も多いのよ。そんな医院長が突然あっちのフロアを当面は閉鎖すると言い出した時には皆驚いたわ。最初に変な出来事が起こった時は、その事を言い出した看護士に対して怒鳴りつけていたのに、ある日を境に逆に恐怖体験をした看護士を呼び出しては詳しく聞き始めたそうだし、やっぱり何かあるのかもしれないわね。」
二人の話を聞いてると、たしかにわざわざ立入禁止にしてまでフロアを閉鎖するなんて、おかしな話や。それに患者が入院する部屋がある訳やないし、病室程の需要は無いんやから、そこまでする必要あらへん。
という事は、少なくともなんかあったんやろなぁ・・・しかし、そんな話は関係ないとばかりに詩音は、
「皆おかしいで?忙しくなったら立入禁止解除してでも、あっちも使うやろ?そもそも霊安室が忙しくなるっちゅうことは、病院にとってはマイナスや。霊安室がいっぱいで埋まってるような病院に行きたいと思わへんし、立入禁止にする事で、この病院では死ぬ事無いから霊安室はそんなにいらん!っていうアピールかもしれへんやん。それに、妙な出来事があったってゆうても、それで誰かが、怪我したり死んだりした訳ちゃうやろ?幽霊に呪い殺されるんやったら、毎日ニュースで報道されてるって!けど、そんなニュース見た事無いわ。そんな事より、ここへ運ばれる人には悪いけど、やっぱり霊安室のあるフロアに長居するのは勘弁や。さっさと皆と合流してゆっくりしたいねん。せやから、三人が怖いんやったらあたしが一人で確認して来たるわ。」
いや、それはあかん!いくらなんでも詩音一人で行かせる訳には・・・
「しょうがないわね。アタいだって心霊現象なんて信じてないわよ。だけどあまりにも周囲が騒ぐから、怖くなっただけよ!本当なら多数決でここに留まるつもりだったけど、アンタの意地は固そうだし、一人で行かせる訳には行かないわ。アタいがついてってあげるから、二人はエレベーターホールで待ってて頂戴!」
おネエ言葉はともかく、やっぱり男や!頼もしいセリフやん。ウチもそこまで言うんやったら付き合うで!問題は沙織や。
「沙織はどうすんの?ウチも怖いけど、離れて行動する方が危険やと思うねんけど。」
「仕方ないわ。なんとか私の力で霊から守ってみせるわ。何かあったら私のそばに来て!結界くらい張れるから!」
結界くらいとか意味わからへんけど、それはそれで頼もしい。また、あの変な呪文唱えるかと思うと、不安もあるけど・・・。そういう訳でウチらは閉鎖された向こう側のフロアを目指す事にした。




