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怖恐 シーズン2(仮名)  作者: くきくん
第二章 神崎病院 麻紀編
25/36

2-8

小柄の後ろを三人並ぶように歩いていると、小声で詩音が呟いた。


「なんか話が無茶苦茶過ぎるわ。そもそも病院で働く職員が、幽霊見たくらいで辞めるとか言い出す?それに、処刑場跡って言うけど、過去を遡れば色んな場所で人って亡くなってるんちゃうの?いちいちそれを言い出したらキリあらへんで・・・。」


すると、今度は沙織が、


「血を浴びた大木が問題なのよ。木にも命は宿っているの。詩音だって大切な人が酷い目に遭わされたら怒るでしょ?大木にもそんな想いが蓄積され、やがてそれが怨念となって宿ったのよ。ただ、周囲の人達もそんな想いを酌み取って鎮魂の意を持って接していた。所がそれを忘れるどころか、大木ごと伐り倒そうとした・・・。だけど、地中深くにまで根付いた想いまでは断ち切れなかった。そう言う事なのよ。」


そう言って、詩音とウチを見た。その目はどこか悲しげで一瞬沙織には見えへんかった。思わず目を擦ってもう一度沙織を見た。やっぱりちょっと違う気がしたけど、沙織には間違いない。上手く説明出来へんけど、なんか微妙に雰囲気が違ったんや・・・。詩音も同じように感じたんか、食って掛かる事もなく、


「まあ、なんとなく言いたい事はわかったわ。つまりここにはめっちゃ怖い幽霊が出るっちゅうことなんや・・・。」


詩音の言うてる事も大概無茶苦茶や。怖い幽霊と怖くない幽霊がおるんか?まあ、あんな話聞かされた後やし、仕方ないか・・・。少し離れて前を行く小柄が前方で立ち止まって首を傾げてるんが、微かに見えた。多少目が慣れてきたものの、やっぱり暗い・・・。


「おかしいわ!エレベーターと言い、この扉と言い、一体なんなのよ!こんな事初めてだわ!ほんと頭にくるわ!」


ようやく追い付いたウチらは、小柄に近付くと、


「どしたん?なんで怒ってんの?」


と、怒ってる理由を尋ねた。


「開かないのよ!階段への扉が!そもそも扉が閉まってる事自体変なのよ。いつもは開けたままなのよ。仕方無いわ。反対側に非常階段があるから、そっちなら開いてるはずよ!」


小柄は、そう言うとウチらを押し退けてズカズカと歩き出した。仕方無くウチらも後ろから追い掛ける。小柄は一本目の角を左に曲った。そこは少し狭い通路で、先の方に非常口を示す緑色のランプだけが不気味に光ってた。


「めっちゃ暗いやん!あの人ようあんな早足で歩けるなぁ。」


詩音が感心したように呟く。たしかに非常口のランプ以外何も見えへん。もし、足元に障害物があったら確実に躓いてコケるやろ・・・。幸いにも足元には何も無いみたいで、無事小柄に追い付いた。


「ちょっと!ここは非常階段よ!なんでここもかぎがかかっているの!」


また、小柄がドアノブをガチャガチャとやりながら大声で叫びだした。


「どうやら、反対側にも私達を導きたいみたいね。通常の階段やエレベーターだけでなく、非常階段まで使えないとなると、後は反対側の階段で上がるしか無いもの・・・もっともあっちの階段を使えるかどうかはわかんないけどね。」


非常口の緑のランプで薄っすら照らし出された沙織は、真顔でそう呟いた。


「沙織!緑色の真顔で怖いわ!って言うか、小柄ちゃん鍵持ってるんやろ?」


詩音が小柄に近づいて話すと、


「それが、何度やっても開かないのよ!エレベーターと言い、さっきの階段と言い、どうなってるのよ!」


「ほな、電話で誰かに来てもらったらええんちゃうの?警備員とかいてるんやろ?」


「あらやだ・・・。たしかにそうね。アタイとした事がすっかり取り乱して忘れてたわ。ちょっと待ってよ。今から詰め所に連絡してみるわ!」


そう言ってポケットからスマホを取り出すと手慣れた手つきで画面をタップする。そのまま耳に当てしばしの沈黙の後、


「駄目よ・・・誰も出ないわ。見回りかしら?でも、おかしいわね。必ず見回りでも詰め所には一人は警備員が常駐しているはずなのよ。それはたとえ深夜でも同じだし、まだ深夜って程の時間でも無いから、余程の事でも無い限りは誰かいるはずなのに・・・何かあったのかしら?」


小柄の表情にも微かな不安の色が伺えた。さすがに動揺してるみたいや。


「ほな、どないすんの?連絡つくまでこのフロアにおるん?それとも、ちゃう階段行ってみる?」


少し沈黙が続いて、小柄が口を開いた。


「さっきも言ったようにあっち側は危険なのよ。アタイは経験した事はまだ無いけど、今夜は何かありそうな気がするわ・・・。そもそも鍵が開かないなんて、意味がわからない。」


「間違って違う鍵持って来たんちゃうの?」


「それは無いわ。出勤後IDカードを詰め所に提出して、警備員としっかり鍵の番号をチェックして、双方書類にサインして初めて鍵を貰えるのよ。当然退社する時も同じで厳しいチェックがあるの。だから、鍵を間違うなんてまず有り得ないわ。」


「せやけど、反対側の階段も開けへんかったらどうすんの?ここから出られへんやん。マジシャレならへんで。」


「病室があるフロアと違ってこのフロアには、滅多に人が来ないけど、三時間に一度は警備員が見回りに来るから、長くても三時間で出られるはずよ!次の見回りは0時のはずだから、後一時間ちょっとよ。」


小柄はスマホの画面で時間を確認してそう言った。

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