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「ここってやっぱり霊安室とかなんかな?地下やし、暗いし、なんか線香の匂いが微妙に香ってるし・・・幽霊は信じへんけど、怖いもんは怖いねん。さっさと階段見つけて男子と合流せなあかん!」
詩音にしては珍しく弱気な発言や。肝試しとか肝座り過ぎやろ!と、ツッコミたくなるくらい怖がらへんのに・・・。でもたしかに線香のような香りが漂ってるし、それが一層不気味さを醸し出してるんはたしかや。
「詩音の言う通りみたいね。」
「なんでわかるん?」
ウチは自信たっぷりのその口調に思わず聞き返した。すると、沙織は薄暗いエレベーターホールの壁を指差して、
「だって、あそこに霊安室って書いてあるもの。反対側にはパネルだけあって何も書かれていないけど・・・。」
ホンマや!そんなとこ見てへんかったわ。向かって左側は矢印の横に霊安室と書かれてるけど、右側は矢印だけあって何も書かれてへん・・・いや、薄暗くて見えへんだけで、何か文字のようなものが見える。
ウチはパネルの近くまで行くと、背伸びして確認した。
「シール剥がしたような跡があるけど、そこだけ変色してるわ!」
「なんて書いてあんの?」
すかさず詩音が聞き返す。ウチは必死で目を凝らしてその文字を読んだ。
「れ、い、あ、ん、し、つ・・・って、こっちもかいっ!」
どうゆう事?ここのフロアはオール霊安室って事?でも、この新館は出来て間もないみたいやし、シールが自然に剥れ落ちるって事は無いやろ。それに、医院長は神経質なくらい綺麗好きや言うてたし、こんな状態のまま放置するとも思えへん。
「どっちも霊安室?まあ、大きい病院やしフロア丸ごと霊安室でも不思議ちゃうけど・・・」
「けれど、それにしては案内板の文字が剥がれているのが気になるわね。」
・・・さて、問題はどっちに進むかや。残念ながら階段を示す表示が見当たらへん。普通に考えたらどっちにも階段はあるはずや。避難する時片側にしか無いのは問題やし・・・。一応詩音と沙織に意見を求めた。すると、詩音が先に、
「シール剥がれてるのがめっちゃ気になるし、あたし的には右に行ってみたい。」
今度は沙織が、
「ダメよ!あっちはダメ!ダメなのよ!」
ダメだけじゃわからへんっちゅうねん・・・せやけど、よほど右には行きたく無いのか、否定する時の声のトーンがハンパ無い。
その勢いに負けたのか、詩音が、
「そこまで言うんやったら左にしよか。正直どっちでええし、聞かれたから右って言うてみただけやねん。」
と、詩音にしては珍しくあっさりと身を引いた。ウチも階段にさえ辿り着けるならどっちでかまへん。むしろ、さっさとこの不気味なフロアから抜け出したいねん。
「決まりや!詩音、沙織行くで!多分突き当りに階段あるやろ。」
正直な所右側が気になったんはウチも同じや。せやけど、さっさと男子共と合流せんかったら、マズい・・・。ホンマに気になるんやったら合流してからでもええし、多分その頃にはどうでもよくなってるはずや。
ウチは左に向き直ると一歩踏み出した。それに合わせるように詩音と沙織も体の向きを変えた。




