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「麻紀、何してんの?早く二階押しいや!」
「ちゃうねん!さっきから何回も押してんのに、点かへんねん!」
「麻紀の指が変なんちゃうか?変わって!」
ウチを押し退けるように詩音が前に来ると二階のボタンを連打し始めた。せやけど一向に点灯する気配は無い。すると詩音は、
「一人じゃパワー不足や!ここは三人で押すべきやろ!」
と、意味のわからん事を言い出した。それでも詩音の真顔に無理とわかってるけど付き合う事にした。沙織も同じ気持ちなんやろ。ウチに合わせて指を出した。
「せーの!で、行くで!せーの!」
詩音の掛け声に合わせてボタンを押した・・・が、やっぱり点かへん。
「今のはタイミングが悪かったんや!もう一回や・・・」
と、言いかけるのを遮って沙織が、
「どうやら、いくら押しても無駄のようよ。」
と、小さな声で呟いた。
「なんでや?」
「だって、すでに動き出してるもの・・・それも下に向かって。」
ウチは上の階数を示すランプを見た。たしかに矢印の下が点灯してる。やがて地下一階を通り過ぎて地下二階へと向かう・・・おかしい。
ウチはたしかに乗る時に上の矢印のボタンを押してエレベーターを呼んだ。その場合普通は上の階のボタンを押すまで動かへんはずや。
まあ、優先ボタンを誰かが押したり長い間何も押さへんかったら動き出すかもしれへんけど、あまりにも動き出すんが早過ぎや。ウチは不気味な不安に襲われた。
「地下二階?何があるんや?まあええわ。とりあえず故障してるかもしれへんから、他のエレベーターに乗り換えよ!」
相変わらず楽観的な詩音は、別に気にする様子も無く、尚も二階のボタンを連打し続けた。やがて少しエレベーターが揺れると到着を知らせるベルと共にゆっくりと扉が開いた。
「何ここ?めっちゃ暗いやん!さっさとちゃうエレベーターに乗り換えるで!」
先に詩音は、エレベーターを飛び出すと再び声をあげた。
「ちょっと、ありえへんし!地下はこのエレベーターしか無いみたいや。」
ウチと沙織もエレベーターを降りると、たしかに詩音の言う通り、エレベーターは一基分のボタンしか無く、戻るには結局このエレベーターに乗るか、階段を探すしか無さそうや・・・。
それにしても、ホンマに暗くてエレベーター付近以外は何も見えず、どっちに道が続いてるのかさえわからへん。
「っていうか、この階はなんなん?めっちゃ暗いし、静か過ぎるし不気味過ぎるやろ!」
詩音が文句を言う。沙織は無言のまま周囲を見回して、
「多分だけど、このエレベーターじゃ上の階には行けないと思うわ。また詩音に怒られそうだけど、言わせて貰うと、ここへは導かれて来たの。だからそう簡単にはこの階から抜け出す事は出来ないと思うの。」
しかし、詩音は沙織の話の途中で再びエレベーターに乗り込んでて、
「沙織・・・熱弁してくれたのに申し訳ないねんけど、普通に二階点灯したで。」
「え?マジ!?ちょっとなんなのよ!このエレベーター・・・おちょくってんのか!ええ加減にせえよ!人の顔に泥塗りやがって!」
出た!沙織の豹変・・・!?普段標準語で冷静な沙織やけど、時々よくわからん所でキレるねん。その時だけは関西弁に戻る上に言葉が下品になるねん・・・。まあ、エレベーターにキレてもしゃあないねんけどな。
「あかんわ!今度は閉じるが反応せえへん・・・インターホン押しても誰からも応答も無いし、どないなってんの?」
「やろ?沙織の言うた通りやろ?・・・本当に人騒がせなエレベーターよね。ちょっと熱くなっちゃったじゃないの。」
再び冷静さを取り戻した沙織の言葉遣いがキモい事はこの際置いといて、この不気味なフロアをこれから探索せなあかんのかと思うと、気が滅入ってきた・・・。
このままやと男子をますます待たせる羽目になるし、気乗りはせえへんけど、やっぱり階段を探すしか無さそうや。
他の二人も同じ結論に達したのか、エレベーターを諦めてフロアの方に降りてきた。




