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「なんや、まだおったんか?てっきりシャワー浴びてる最中やと思ってたわ。」
降りてくるなり太一が話し掛けてきた。
「ちょっと、太一、ウチらシャワー浴びてる所覗こうとか思ってたんちゃうやろな?」
「あほかっ!そんなんするんは、心やっちゅうねん!」
「覗く?俺が?ありえへんわ!俺やったら堂々と一緒に入ろって誘ってるし・・・」
「ところで、シャワー室いっぱいなんか?なんでまだ入ってへんの?」
ここで、また話したら長くなるから、ウチは適当な理由を考えて、
「実は沙織が6階のボタン間違えて押してて6階まで行って戻ってきたから遅くなってしもたんや。」
と、沙織のせいにしといた。
「沙織ちゃんが?意外やな。一番そう言う所でしっかりしてそうやのに。」
心ちゃんが不思議そうに首を傾げた。男子の目には沙織はそう言う風に映るんやな。まあ、たしかに実際は沙織がそんなミスするん見た事無いねんけどな・・・。
と、沙織と詩音が看護師に場所聞いて戻って来たから、太一と心ちゃんに別れを告げてシャワー室に向かった。太一と心ちゃんも看護師に説明を受けてるみたいやった。順ちゃんは結局シャワー浴びへんみたいや。気持ち悪く無いんやろか?
「ここや、ここ!」
前を歩く詩音が立ち止まって左のドアを指さした。そこには『シャワー室女子用』の文字・・・思いっきりそのままや。
「向かいが男子用みたいや。さっさと入るで!」
詩音がドアを開けて中に入った。多分ここは、比較的元気な患者さんや、泊まり込みで付き添う人専用のシャワー室なんやと思う。なんか特別患者さんの為の設備がある訳でもなく、スポーツジムなんかにあるような個室が左右に三室ずつ、計六室あって、手前には三人座れる鏡台と、据え付けのドライヤー、その奥に脱衣スペースと、着替えなんかを入れるロッカーがあった。
ウチらは適当にロッカーを選ぶと、看護師の人に渡されたお風呂セットを持って個室へ向かう・・・示し合わせた訳でも無いのに三人共左側の個室に入った。手前に沙織、奥が詩音でウチは真ん中の個室や。
ウチらの他には誰もおらへん。個室は頭の上の方が開いてるから声は聞こえる。一人になると、どうしてもエレベーターでの出来事を思い出して、ちょっと怖くなったから、ウチは大きめの声で、沙織と詩音に話し掛けた。
「なあなあ、聞こえる?」
・・・返事があらへん。シャワーの音が両方から聞こえるし、ウチの声が聞こえてへんのかもしれへん。とりあえずウチも温度を確認してシャワーを出す事にした。ちょうどええお湯が思った以上の勢いで吹き出した。
高い方の引っ掛ける所にシャワー本体を引っ掛けて頭から浴びる。顔を洗いで、使い切りのシャンプーを手に出して頭にまんべんなく擦り込むながら泡立てる。
目は瞑ったままやったけど、ふと気配を感じたウチは少しだけ目を開けた。詩音の個室側に黒い塊がぼんやりと視界に飛び込む。
しかし、泡だらけでちゃんと目を開ける事も出来へんし、泡が目に入って痛い。急いでシャワーで泡を落としてもう一度詩音の方を見上げて思わずウチは悲鳴を上げた。
「きゃあああああぁぁぁっ!!!」
そこには長い髪の毛が垂れ下がってたからや。思わず個室から飛び出しそうになるのを必死で堪えていると、突然大きな笑い声が聞こえてきた。と、同時に反対側にいる沙織が、
「どうかしたの?大丈夫?」
と、心配そうに話してるのが聞こえた。ウチは何がなんやわからんようになってしもた。見間違いかと振り返るとやっぱり髪の毛が垂れ下がったままや・・・むしろ生首に見える。あまりの恐怖で沙織に返事も出来へん・・・。
すると、詩音がシャワーの音より大きい声で笑ってんのが聞こえてきた。
「ごめんごめん!ウィッグや!置くとこなかったからそこに乗せてんけど、まさかそんなに驚くとは思えへんかってん・・・」
え?ウィッグ?そう言えばそんな会話車の中でしてたわ・・・
「勘弁してや・・・詩音!心臓止まるかと思ったやんか!そんなもん脱衣所に置いてくるやろ?普通・・・」
「うっかりしてたんや。あかん、こっちは笑い過ぎて心臓止まりそうや・・・」
まだ爆笑してるし・・・ありえへん。
「会話の内容から理解出来たわ。詩音らしいわね。」
沙織も声が笑ってるし・・・普段やったらウチもそこまで驚けへんねん。タイミング悪過ぎるわ。まだ心臓バクバク言うてるし。
そこからは三人会話しながら、シャワーを済ませ、服を着ると三人並んで鏡台に腰を下ろした。




