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それにしても、皆よっぽどお腹が空いてたんか、ほとんど会話なく黙々と食べ続けとる・・・。
まあ、個人的には食事中は集中したい派やからええねんけど・・・。ん?ふと、視線を感じて窓の方を見た。すると、そこには顔だけが陰になってるせいなのか、はっきりと見えへん女性がこっちの方を見て立ってた。
まあ、ここは一階やし、まだそんな遅い時間でもあらへんから外に人がおっても不思議ではない。
けど、顔がはっきりと見えへんのが気になる。かと言っていきなり近付いて顔を確認するのも失礼や。
気にはなったけど、直視するのもどうかと思い、一瞬視線を外した。もう一度視線を向けると、そこにはもう誰の姿も無かった。
「見えたのね?」
突然沙織が囁いた。
「見えたって、どう言う事や?普通に女の人がおっただけやろ?」
沙織の言葉の意味が理解出来へんかった。そもそも、他の連中は食事に集中しとったし、俺もなんとなく視線感じて窓の方を見ただけや。
「あの女の人、すでにこの世には存在しないわ。太一君は自分では気付いていないようだけど、あなたには強い霊感が備わっているのよ。ただ信じたくないという気持ちが邪魔をして強い念を持った霊しか感じ取れないの。」
いやいやいやいや・・・霊感とかあらへんし、今の女の人かて霊とは限らへんやろ。しかし、沙織は更に続ける。
「今の人が霊とは限らないと思ったんでしょ?よく考えてみて。街中で大勢の人達とすれ違ったとするわね?果たしてすれ違った人達全員が生きてる人だと思う?」
「え?どうゆう事?」
突然話が飛躍しすぎて一瞬面食らった。
「つまりこういう事よ。私達が日常的に見ている人達全てが生身の人間かどうかはわからないし、全てを確認する事なんて出来ないの。ドラマなんかのように怖いイメージの霊ばかりじゃないのよ。だからほとんどの場合生きている人間と霊の区別がつかないの。」
いや、たしかに言うてる事はもっともらしいけど、無理があり過ぎるやろ・・・。
「他人の意識の中に入り込む事は一生出来ないの。だから人生って言うのは皆、自分だけの世界なの。つまり・・・。」
と、話が違う方向に逸れ始めた時に詩音が、
「沙織!ストップや!あんたそれ言い出したら止まらへんやろ?朝になってまうで!いちいちそんな細かい事気にしてたら人生疲れてまうって!気楽に気楽にや!」
ええとこで突っ込んでくれた。ナイスや!詩音!
「そうね。また熱くなっちゃったわ・・・。でも、一つだけ言わせて。さっきの窓の外にいた女の人は間違いなく向こうの世界の存在よ。」
む、向こうの世界?向こうってどこやねん!むしろ忘れたい・・・。
そろそろ皆食べ終わろうかと言う所で、食堂にカップルと思しき二人組が姿を現した。二人はちょうど隣のテーブルに腰を下ろした。すると女の方が、
「陸、安藤さんは元気?」
「ああ、毎日研究室で青柳教授に怒られてばかりだけどね。」
ここは病院や。つまり少なくともこの二人の内どちらかは病人のはずや。せやけどどう見ても二人共元気そのものや。
何よりも気になるんは、陸と呼ばれた男のTシャツのプリント・・・。
『極秘プロジェクト FTS』
デカデカとプリントされてて全然極秘でも何でもあらへんやん!そもそもFTSってなんや?他の連中も気になったんか、皆視線はTシャツに釘付けやった。
「それがしのオヤジの職業柄、極秘プロジェクト関係の話はよく耳にするんや。せやから聞いた事あるで!」
順が勿体ぶってそこで一呼吸置くと、続けた。
「あれは、富士山多分世界遺産の略や!つまり富士山を世界遺産登録に導くスタッフなんやろ。」
すると皆納得した顔で頷く。
「さすが順、そっち関係だけは詳しいやん!」
心も素直に受け入れたようや。得意気になっとる順、それにそれを信じた他の連中には悪いねんけど、多分違うと思うで・・・。




